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【完結】聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~  作者: 稲山 裕


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二十二、一方的な攻撃(一)


 私は早速、第一王子の寝室に侵入することにした。

 真正面から。


 こういう要所を護る騎士達は、それなりに信頼を得ている人たちばかりで……つまりはそれなりのお年だったりもする。

 だから、「誰かひとり、傷でも病気でも治してあげるから通してください」と言うと、皆快く通してくれた。大体の人は、自身の父母を癒してほしいと。

 それと、私の信用度もそれなりに高いから、お話したいだけと言えば――侍女も連れてのことだから間違いも無かろうということで――ほぼフリーパス状態だった。

 だから、きちんとノックをして、正々堂々と。



「何だ貴様……聖女とはいえ、誰が通して良いと。しかも帯剣を許しているとは……全員クビにしてやる」

 部屋は暗かったけれど、うっすらと見える。

 第一王子はベッドに入った所のようで、まだ、枕に頭を乗せてしまう前だった。

 少しだけ開いた重いカーテンの隙間。月明かりが差しているのは、ちょうど枕のところだけなので顔がよく見えない。


「まぁまぁ、第一王子殿下。私が来た理由なんて、一つしか無いじゃないですかぁ」

 少しだけ語尾を伸ばして、あざけるように言った。

「ちっ。しくじったくせに何の報告も無かったな。あいつら……」

「隠すつもりもないんですねぇ」

 ゆっくりと近付きながら、私は腰の剣に手を掛けた。


「貴様、その時点で打ち首だぞ。俺の前で剣に手を掛けるなど、図に乗り過ぎたな」

「そんなことよりも。ねぇ殿下。私、何も悪いことしてないのに、酷いじゃないですかぁ」

 彼は何も言わない。冷たく私を睨んでいるのだろうか。

「殺されるようなこと、してませんよね」

 もう少し――ベッドの脇まで近付けば、暗さになれた目でも顔が見えそうだ。


「でもぉ、第一王子殿下。あなたは……私を謀にかけて命を狙ったんですから、しょうがないですよねぇ?」

 その言葉で、ようやく第一王子は何か反応をしたらしかった。

 毛布が少し動き――剣が突き抜けてきた。

 でも、私の体には後数ミリ、というところで刺さらない。

 隠し持っていた王子の剣は、竜王の加護を突き抜けることはなかった。


「この……化け物が」

「ひどい言い草ですね。聖女と呼んだり化け物と呼んだり。それよりも答えてください。なぜ私を狙ったのか」

「……俺にとって邪魔なものは排除する。それだけのこと。人であれ物であれ、な。俺が第一王子なのだ、次期国王は俺であるべきだろう! だというのに、継承権一位は弟になった。その上あいつは、聖女まで見つけてきやがった……邪魔でしかないだろうが」

 人の命というものを、何とも思っていないような冷たい目。

 月のやわらかな光を横から受けてなお、冷徹に他者を見下した昏い目をしている。


「そんな最低なやり方で、人の上に立とうだなんて」

「貴様ごとき下民に国政の何が分かる。綺麗事で他国と渡り合えるものか。それが分からん愚者どもに、国を任せるなど片腹痛い。俺が王になるべきなのだ。そのための障害は、全て排除する。貴様も、弟も、誰であろうとだ!」


「難しいことは、確かに私には分からないわ。でも……仲間であるはずの家族や国民を、邪魔だと言って殺して回るような人に、民がついてくるのかしら」

「何を甘いことを。民草などは支配してこそ糧となるのだ。逆らうものは殺す。殺されるのだという恐怖を根底に植え付けておかねば、何十万というゴミに等しい愚者どもと、心中することになるぞ? 下民ごときが次期国王に口をきくな。潔く貴様も死んでおけ」



 彼はそう言って、私に向けたまま――竜王の加護に阻まれたままの剣を引き、そして。

 おそらく、銃のようなものを撃った。毛布の下から。

 音もなく、小さくも強い衝撃が、私の眉間を貫くところだった。


「なん……だと?」

 その弾丸は、竜王の加護と、念のために張っておいた竜魔法の保護膜を、突き抜けることはなかった。

「あまりそういうことをすると、この街が、王都が滅ぶことになると思う」

「戯言を……」

 王子はそう言いながら、まだ何かをするつもりのように感じた。


「話し合っても、聞く耳を持ってもらえそうにないわね。でも、私の言いたいことは聞いてもらうし、あなたがそういう意固地なことを続けると言うなら、私も同じことをさせてもらう。かまわないわよね?」

 彼の流儀で話を通すなら、そういうことになる。


「はぁ? 貴様ごときと俺とは身分が違うのだ! 下賤な女風情が聖女だとかおだてられて、調子にのるなよ!」

「シェナ、この人抑えて」

 暴れないように。

 私の後ろに居たシェナは、あっという間に王子から武器を取り上げ、体の自由も奪った。

 もちろん、口には布を当ててもらっている。

 シェナは足も使って器用に、王子の両手を後ろに捻り上げた上で口も押さえてくれている。



 私は自分の剣を抜いて、王子のおでこに切っ先を当てた。

 この人と同じことをするのは嫌だったけど、何も抵抗しないのはもっと嫌だったから。

 今だけだからと割り切って、深く考えないことにした。


「ほら、ここ。このおでこをこうしてぇ、刺されちゃったんですよ私。痛かったな~。勇者に弱いフリしろって入れ知恵したの、殿下なんですってね」

 何か呻いているけど、大声を出せないように当てた布が効いている。

 シェナもそれはよく理解していて、ぐっと力を込め直すことで、大きな声を出すな、という合図にした。


「あなたのせいで私、地面に倒されて。みぞおちも踏みつけられたんです。こんな女の子に酷いですよね?」

 ちくちくと、剣先をおでこに数回刺した。といっても、本当に針先で刺したみたいにほんの僅かだけ。

 本当に傷を負わせたいわけじゃないから。

 ただ、私が味わった悔しさや恐怖を……そう、この人に仕返しがしたかった。


「第一王子殿下。あなたって、さっき仰ったみたいに悪い事してるんですよね? あの勇者たちも脅したりして」

 はしたないとは思いつつ、私はベッドに上って、王子のすぐ前に立った。

 ブーツが汚れていないか、確認しておくんだったと思って、だけど今は、仕返しだから構わないのよと自分を言い聞かせた。


「あとは、第二王子のこともほんとに邪魔に思ってるなんて、ちょっと引いちゃいました。色々としているみたいですねぇ?」

 勇者に倒された時のように、私は王子のみぞおちに、つま先を当てて体重を少しかけた。

 人の肉を踏んでいる感触が伝わって、少しの罪悪感が後ろ髪を引く。

 今も不意打ちをされたのに、甘いのかな。

 戦闘ではなくて、一方的に脅しに来たからそう感じているのかもしれない。


 だけど、それと同時に……少しの快感。

 それに似たものが、肌の表面を駆け抜けた気がした。



「あなたは……どうして人の足をひっぱることするんです? 実力がないから? 無能だからすぐに殺すとか言ってしまうんですか? それが精一杯なんですかぁ?」

 いじわるを言った。

 こんな風に、あえて人を貶すなんて、初めてのこと。

 それは……少し嫌な気分だった。

 でも、これはこの人が悪いことをしたから――私を殺そうとしたのだから。

 私にも言う権利はある。


 そういう正当性が、今の私にはあるんだと思うと気が楽になった。

 そう思ったら……魔王さまと致している時のような快感が、なぜか心をくすぐった。

 いじわるを言っても、今は許される時間なのだと。

 少し痛めつけることも、治癒が使える私なら治せるから、それも問題ないことなのだと。


 それは……私の中に、何かを目覚めさせたような気がした。

 ――イケナイことをしても、いいんだ。


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 何卒よろしくお願い致します。  作者: 稲山 裕



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