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【完結】聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~  作者: 稲山 裕


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十八、勇者たち


 騎士団長が大人しくなったことを、部屋に訪ねてきた殿下から聞いた。

 何でも、部下達に偉そうにしていたのがパタリと止んだので、皆驚いているのだとか。


 それに、いつもこれ見よがしにしていた剣を帯剣しなくなったという。

 代わりに、訓練に使うような刃引きの、しかも肉厚の重いものを使って訓練をしているのだそうだ。


「そんな偉そうにする人が、団長だったのですか?」

 人格も考慮されそうなのにと思って聞くと、以前の団長は副団長と共に一年前に殉職し、かなりの繰り上げで彼が任命されたという。

 第一王子の息が掛かっていて好戦的で粗野な面が目立つ、容姿だけは良いという、らしからぬ男が。

 私はあまり詳しく聞きたくなかったのに、必要以上に、丁寧に教えてくれた。

 第二王子である殿下は継承権が一位で、兄である第一王子が二位にあるという、ややこしい位置関係についても。


(あ~、聞きたくない聞きたくない。巻き込まれたくな~い)

 そんな風に思っているのが実は顔に出ているのか、それともすまし顔をしている――少なくとも私はそのつもり――のが気に入られたのか、どちらかは分からないけれど……頼みがあると、そう言って殿下は勝手に話し出した。



「実は、一年前に騎士団長率いる第一部隊が壊滅状態にされたのも、我が父である国王が大怪我をなさったのも、魔物のせいなんだ」

「そ、そうなんですね」

「第一騎士団は、我が国が誇る技術で開発した最高のパワードアーマーと魔力剣を与えられているんだが、それでも敵わなくてね。撃退するだけで精一杯だった」

「はぁ……」

 何度聞いても不思議に思ってしまうけど、この世界は、魔法と科学の二つの文明が共存しているらしい。


「それに続いて、国王自ら率いた部隊も、この数カ月前にやられてしまってね」

「それは……大変でしたね」

「基本的に、国の有事には騎士団で対応したいのだが、そうも言っていられなくなってきた」

 嫌な流れだけど、この部屋から逃げるという選択肢が見つからない……。

 シェナは……なぜか今になって、ご機嫌で国王からの贈り物たちを片付けている。


「そこでだ。そなたには我が国の聖女として、魔物討伐隊を率いてほしい。いや、そなたが戦うようなことはなく、それは転生者達に任せる。彼らが負傷したら治癒をして、サポートをしてくれれば討ち取れるはずだ」

 つまり――私が居れば国の直属であるというメンツを保ちつつ……国にとって部外者である転生者を使うことも可能だから、お願いされたと、そういうことらしい。

 でも、それなら騎士団で討伐する時にも、転生者を連れて行けばよかったのに。

 と、思っても口には出さない。



「……私の言うこと、聞いてくれそうな人達ですか? それに、強いかどうかも心配です」

 下手をすれば、シェナ一人の方が余計な手間が省けるかもしれないし。

 ……でも、か弱そうな二人でも余裕でしたと、そういう形になるのもよろしくないし、殿下としても小娘二人で騎士団でも無理だった討伐をこなした……なんて、メンツが立たないかもしれない。


「その辺は大丈夫だ。国に一人しか選ばれない猛者である勇者と、その仲間が共をしてくれる。彼らの戦闘力とそなたの治癒があれば、きっと討伐出来るだろう」

 ……まず一番は、断りたい。

 けど、殿下は何というか、断り難い雰囲気にするのが上手い。

 何がどうなってかは分からないのだけど、もうすでに、最初から決められていて変えようがないもの――決定事項を告げられていて、私は「はい」と返事をするだけにされてしまう。


「……分かりました。でも、失敗しても怒らないでくださいね?」

 ――失敗もありえないことだと、殿下は分かっていて話しているように見えた。



  **



 王都の、最後の城壁を出てから五時間。

 荒野をひたすら西へと走っている。

 特製の車……というよりは、大きな装甲車に揺られて。

 窓は小さく、格子に囲われていて外はあまり見えない。


 その代わりに、タイヤのお陰で乗り心地は悪くはない。

 目的地までの道も、ある程度が舗装されているから。

 ただ、完全な舗装ではないから時折ガツンと跳ねるので、うっかり口を開いていると舌を噛みそうになる。


「聖女ちゃんよぉ。ぜんぜん口きいてくんねーよな」

 軽薄そうで頭も軽そうな勇者と呼ばれる男が、車に乗ってからずっとしつこい。

 茶色に染めたようなパサついた髪に、わりとどこにでも居そうな顔。鍛えましたと自慢したいのか、ピチピチの赤いシャツがダサい。茶色いズボンとブーツも薄汚いし。


 かなりの軽装で、騎士団長のような鎧の類はほとんどなく、肘と膝にサポーター的に着けている金属板と、左腕に丸くて小さな盾。あとは剣と、ナイフが腕や胸、腰や足なんかにあちこち仕込んでいる。

 それも自信の現れなのか、調子に乗っているのが顔に出ていて、見ると少しイラッとする。


 もう一人の全身黒ずくめ男は物静かなのに。黒い長髪の、細身のお兄さん……。

 黒いブーツにゆったりズボンの裾を入れていて、上は黒いパーカーとマント。

 それがどうにも、絶妙にダサい。

 誰かこの二人に、お洒落を教えてあげればいいのに。



「……勇者。さっきからずっと、お姉様に気安く話しかけるなと言っている」

 シェナは我慢の限界にきたのか、その小さな白い手で勇者の首を握り潰しそうな、極限の怒りを滲ませている。


「メイドちゃんは血管浮かしちゃってこえ~なぁ。いいじゃねぇか、大人気の聖女ちゃんと話せる機会なんて、俺ら底辺の人間にはもうないかもしんねーし」

 彼ら勇者と呼ばれる転生者は、この王国ではいわば、傭兵と同じ扱いだった。



 転生者はかなりの数がすでに居るようで、科学者や技術者、医師などの医療従事者は大層なほど重用されているらしいけれど。

 転生者一人の武力に頼る形になるのは避けたかったらしく、転生者の科学技術を大いに取り入れて、早くから自分達で賄える武力を求めたという歴史がある。

 といっても、それもたった三十年足らずのことだけど。

 これも殿下が自慢気に教えてくれた。


 今では、人間の十倍ほどの速度と力を出せるパワードアーマーであったり、振動ブレードという切断能力に長けた剣に、さらに魔法による頑強さを付与したり……などなど、男子が喜んで食い付きそうな話を沢山してくれたのだ。


 私にも何か装備させたそうにしていたのは、華麗に聞き流しておいたけど。

 そんな高そうなもの、もしも壊してしまったら……弁償の代わりだとばかりに、何かをふっかけられるかもしれないから。

 ……そんなことがなくても、竜王の加護を持つ私には、きっといらない。



「あ~あ。一匹でかい魔物の気配がしてきたなあ。もっと喋りたかったのによ。ま、聖女ちゃんの出番はないから、こん中で大人しく待ってろよ。戻ったら話の続きをしようぜ」

「え、話はいやですけど……ここでお待ちしております」

 その返事に、似合わないウインクをして彼はドアを開いた。


「おう! 行ってくる!」

 まだ走っている車から、格好をつけて飛び降りた。

 私の返事、ちゃんと聞こえました?


「……その浮遊魔法、誰がかけていると思っている」

 意外と声だけはイケボだった黒い人は、魔法が得意らしい。

 その言葉を残して、黒い人も飛び出して行った。



「……どこに魔物がいるか、シェナは分かる?」

「はい。あのバカたちが飛んでいった方向で合ってます。一匹……ではなく、三匹いますね」

「そうなんだ。あの人たち、勝手に一匹だと思ってる風だったけど」


 向かっている場所には、いろんな金属が出る鉱山がそれぞれ並んでいるらしい。

 そこを縄張りにしてしまった魔物が、特別強いらしく……。

 クマとオオカミを混ぜたような、巨大な魔物ということだったけど。

 もしもオオカミの特性が強いなら、報告で聞いた三匹の他にも群れが居るかもしれない。


「ふふっ。肉片になってしまえばいいんです。お姉様をナンパしようなどという、不届き者は」

 後半はものすごく怖い言い方だったけど、可愛いから良し。

「あの二人、ちゃんと魔物の数を聞いていたのかしら」

「一緒に討伐内容を聞いていたのですから、最低でも三匹は居ると理解していたはずです」

「そう……よねぇ」


 でも、そんなに強いようにも、見えなかったから。

 試しに見てみた頭上の表示は、Lv.40だった。

 黒一色の人も同じくらい。

 ……重傷を負った陛下は、殿下と同じLv.70くらいだったのに。


 このレベル、ちゃんと合ってるんだよね?

 強さを表しているはずだけど、それなら陛下や殿下よりも、あの二人は弱いはず。

 そうなると――治癒魔法が、すぐにでも必要かもしれない。

「運転手さん、あの二人を急いで追いかけてください! 死んじゃうかもしれない!」




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