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消えた弟  作者: しおやき
第四章 結 消えた弟

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鍵穴


 裁判と聞いて身構えた俺は塚内さんの穏やかな声を合図に口を開いて話し始めた。覚えている限り全部だ。曖昧な記憶も、確信がない事も全部。

それはどれも今自分の中に閉まっておく必要性のない記憶達だ。

 

「スマホを取り上げられたのは、けいすけが居なくなってからです。土砂降りになった日、父さんが山の方までけいすけのこと探しに行って、その次の日だったかな。一人で色々されると心配だからって」

 「そうだったんだね」

 「はい。ただ、買ってもらって暫くしてから妙な違和感は感じてました」


 初めて買ってもらったスマホは黒色で最新のものとは程遠い、一番古い機種だった。


 「違和感?」


 俺の発言に塚内さんが反応して首を傾げる。それに対して俺は縦に頷いた。


 「家にパソコンとかなかったんで、必然的に・・・そのスマホで、ネットとか見るじゃないですか・・・どれくらい経ってからかは覚えてないんですけど、晩御飯の時に聞かれるようになって・・・最初はたまたまかなって思ってたんですけど、あまりにもリンクし過ぎてて」

 

 あの時、直感でスマホが監視されていると思った時に身体中に嫌悪感と寒気が走ったのは忘れない。スマホ内に監視アプリをインストールしてるのかと思って探したけど見つからなくて、それでもずっと聞いてくるから、やっぱり何かがスマホにインストールされてると不気味にも感じてしまった。


 「何を聞かれるようになったのかな?」

 「・・・俺がスマホで検索したページです」

 「ページ?」

 「はい。俺がネット検索してる内容と、おんなじ事を聞かれるようになって・・・。気持ち悪くてスマホでネット検索はしなくなりました」

 「そうか。そういうことだったんだね」

 「・・・あとは、スマホとは関係ないんですけど、()()()、凄い警察を嫌ってて、けいすけが居なくなっても警察に連絡しようとしなくて。でも今になってその理由が分かりました」


 けいすけの名前を口にすると感情的になる。


 「スマホの件については分かった。そこについても調べさせよう。他に何か覚えてることはある?」

 「・・・あとは・・・けいすけが居なくなる前だと、()()()()()()が2人で深夜に会話してたのを聞いたんだけど、内容についてはよくわからなかったです。ただいつもと違う雰囲気で・・・誰かのことについて話してるみたいでした」

 

 今思い出してみてもおかしな会話だった。2人とも知ってる人のようだったけど。


 「そうか。それじゃあこの写真の人に見覚えはあるかな?」

 「・・・この人は」

 「恐らくこうすけくんが聞いた会話の人物だ」

 

 足立さんに突然見せられた写真の顔に微かに見覚えがある気がする。だけどどこで見たのだろうか。はっきりと思い出せない。どこで見たんだと、何も話さずじっとその写真を見つめていると、足立さんが一言付け加えた。


「橘と橘えみ子の知り合いで、今回の君とけいすけくん誘拐の事件に関わっている人物だ。足に特徴的な傷がある」

 「傷?・・・・傷・・・あぁ、もしかして吉木さんの家の前で会った人・・・?」

 

 そうだ。確かそうだった。ぶつかった拍子にスマホを落として、後追いで持ってきてくれた。でも足の傷でけいすけがスーパーで会った人だって分かって、瞬間的にヤバいと思った記憶がある。傷の印象が強すぎて顔が頭に残ってなかったのかもしれない。


「俺、けいすけ探しに外に出てて、吉木さんの家にも行ったんですけど・・・この人も関わってるって・・・じゃあこの人も逮捕されて東京にいるんですか?」

 「その時に、横溝も一緒に居た?」

 「・・・はい。俺、体調悪くなっちゃって、介抱してくれました」

 「そうか。ありがとう。彼のことについてだが、東京には居ない」

 「居ない?逃げられたとかですか?」


 今写真を見せられたってことは、また捕まってないということか。でも、塚内さんは()()()()は解決していると言っていたはず。どういうことなんだろう。

 

 「いや、彼は既に亡くなっている」

 「・・・亡くなった?」

 

 足立さんは『うん』とだけ頷いて、男の写真を胸ポケットにしまい込んだ。


 「凶器は橘の家の外にある物置で見つかったらしい」

 「・・・・え、じゃあ」

 「殺害されたんだ」

 「殺害って・・・」


 まさか、その人のことも殺したのか。()()()()のことも酷く傷付けたのに。

 足立さんは、あえて誰が犯人かは言わず、ただ『鑑識で調べてもらっている。すぐに結果がでるよ』とだけ言った。既に検討がついているのだろう。当たり前だ。こんなの俺でも分かる。


 「・・・だからあの時変な臭いがしたのか」

 「臭い?」

 「はい」


 俺は土砂降りが2日間続いた次の日、物置に新聞を取りに行ったこと、その時に奥から変な臭いがしたこと、けいすけから()()()の部屋に新聞が山積みになっていると聞いたので気になって彼の書斎に入ったこと、そしてその書斎で血なまぐさい何かを見つけたことを告げた。


 「橘の書斎に入ったの?どうやって入ったのか聞いてもいいかな?」

 

 少し眉を上げ食いつき気味に質問してきたのは塚内さんで、俺は彼の反応を見て、これは怒られるやつかもしれないとこの時思った。家族で家の中とはいえ、鍵がかかっているドアをヘアピンを使って開けたのだから不法侵入になりかねない。


 (・・・裁判に不利になるのかな)

 

 「えっと・・・・鍵がかかってたので、ヘアピンを使って」

 

 なんて言い訳をしよう。もう過ぎ去ってしまったことだ。もうやってしまったことだ。時間なんてもとに戻せない。


 「「ヘアピン?」」

 

 そう思って、焦り始めたその時、今度は塚内さんだけでなく足立さんが反応して2人の声が重なり、少し眉を上げて驚いた様子をした。


 「・・は、はい」

 「それ以外に何か使った?」

 「いえ・・壊したらどうしようって思って」

 「すぐに開いた感じだった?」

 「確か1回目で開かなくて、2回目やって、それでも駄目なら諦めようと思いました。()()()が帰ってきても困るので」

 「じゃあヘアピンを使ったのは2回ってこと?」

 「そうです。でも結構時間経ってた気がします。2回目に差し込んだらカチャって音がして、ドアノブ回したら開きました」


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