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消えた弟  作者: しおやき
第四章 結 消えた弟

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刑法 第三十九条 (警察サイド〜事件現場〜)


==============

 (心神喪失及び心神耗弱)

第三十九条 心神喪失者の行為は、罰しない。


2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。


=============



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「橘の書斎は?」

 「これからです」

 「分かった」



 橘逮捕に向けて計画していたとおりには進まず、最悪の事態は免れたものの死者と負傷者を出してしまったのは悔やまれる。

 

 (横溝は仕方がないとしても、橘の奥さんのことについては・・・)


 「防ごうと思えば防げたのか」

 「何か言いました?」


 現場に集まった部下に指示を出しながら、数時間前に起こった出来事をもう一度思い出していると、ため息とともに思わず本音が漏れた。


 「いや、何でもない。けいすけくんの話によれば、橘の書斎の引き出しに新聞の束があるそうだ。彼が言っていた内容のとおりだとすれば、恐らくけいすけくんの誘拐に関する記事だな。それに、林隼人の殺害に使用した凶器かそれらしきものも出てくるかもしれないから鑑識にそう伝えといてくれ。ひととおり部屋の証拠品を押収したら教えてくれ」

 「分かりました」

 「あぁ、あとそれと、普段は鍵がかかってるらしいから、先にその鍵を探したほうがいい」

 

 林隼人の殺害現場は、天候のせいで形が綺麗に残っていなかった。範囲を広げての捜査も虚しく凶器らしきものは見当たらず。そして犯行に使われたその凶器が見つからなかったということは橘が持ち帰ってる可能性が高いと判断された。


 (複数回刺されて、かつ頭部も切断された・・・ということは凶器の刃物も少なからず傷がついてるはずだ)

 

 「あ、春日井さん、その鍵についてなんですが、」

 「なんだ?」

 「鍵自体はもう見つかってます。ただ、差し込む前に鑑識さんの方で先に調べてもらったんですけど、鍵じゃなくて別のもので開けられた形跡があるって言ってました」

 「別のもの?」

 「はい。ピッキングされたのか、鍵穴が壊れてたらしいです」

 「・・・・どういうことだ?」

 「僕らもよく分かりません。指紋も取ってもらってますけど、もしかしてこの家に住んでない他の誰かが侵入したとかないですよね?」


 (侵入?)


 警察がずっと見張っていたのに、知らない第3者がこの家に気が付かれずに入ることが出来るとは思わない。奥さんの仕業だろうか。でももしそうだとしたら一体なんで。


 「それは限りなくゼロに近いと思うが、指紋の結果次第だな。もしかしたら、橘の奥さんが何かしらの理由で入らざるおえなかったとか」

 「あ〜、それはないと思いますよ」

 「なんでだ?」

 「だって橘の部屋の鍵、寝室の奥さんの服が入ってる棚の一番奥に吊るしてありましたから。多分鍵を管理してたのは奥さんじゃないかと」

 「・・・・」


 (どういうことだ?)


 「まさか・・・けいすけくんとか?ですかね?部屋に入ったって言ってましたよね」

 「でも、彼はまだ6歳だ。ドアノブに手が届いたとしても、鍵穴を開けれる程そこまで手が届くわけないだろ。それにその時はたまたま開いてたって言ってたが」

 

 (・・・もしかしてその時から鍵が壊れていたのか?)


 「あ〜、まあ確かにそうですね」


 腕を組んで悩ましそうに首を傾げた部下の顔を見たちょうどその時、持っていた携帯が鳴った。

電話の相手を確認すると、家の外を調べている別班からだった。


 「春日井だ・・・本当か?分かった、すぐに行く」

「どうかしたんですか?」

 「外にある物置から、林隼人を殺害した凶器が見つかったらしい。今から行ってくるから、お前は橘の部屋を頼む」

 「本当ですか?分かりました。こっちは任せてください」


 鍵の件については気にはなるが、鑑識と指紋の結果から判断するしかない。何も分からない状態で予測を立てたところで、今は時間の無駄にしかならない。


 『できるだけ早めにこちらで証拠を集めて塚内と足立さんに連絡しておきたい』

 

 そう思いながら血なまぐさいリビングの台所を横目に玄関へ向かった。

 


 

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