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消えた弟  作者: しおやき
第四章 結 消えた弟

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残された謎 3


 

 「おっちゃん・・・よ、横溝・・・さん・・は」


 佐藤のおっちゃんとは、ずいぶんと仲がよかった気がする。田舎ならではの付き合いと言ったらそれまでだけど、確かに色々話し相手になってもらっていた。

 でも今となってはそれはただ『俺とけいすけを助けるため』という理由があってこそのことだったのだろう。


 またしても自分が発した慣れない響きに、彼らのことを全く知らない人だと認識してしまいそうになる。


 (・・・実際何も知らないか)


 気さくな性格も、話してくれた内容も全部嘘だったのかもしれない。


 「大丈夫ですか・・・」


 あれだけの傷を負いながら身体をはって()()()を止めた彼はすぐに回復すると思えない。

 

 「大丈夫だよ。何も問題ない」

 「・・・でも、刺されて・・・血がたくさん・・・それにっ」


 ()()()はあの時、刺したおっちゃんの脇腹辺りを足で踏みつけていた。

 思い出しただけで吐き気がする。血の生臭い匂いと、動かない()()()の身体。


 「こうすけくん、もう一度言う」

 「・・・」

 「彼は大丈夫だ」

 

 震える俺の声に力強くそう言った足立さんは、前に向き直りシートベルトを締めた。


 ゆっくり車が発進するほんの数秒、車内は静かになり俺の泣きそうな息だけが鳴り止まない。

 

 「こうすけくん」

 「・・・っはい」

 「僕たちは警察だから」

 「・・・・」

 「こういうことは覚悟している。どんなに用意周到に準備して備えたって、100%皆が無事に帰ってくるわけではない。そしてそれはどのケースでも当てはまる」

 

 自分のせいでおっちゃんがあんな目にあってしまったのは明白で、しかもそれを直視してしまっている。

 

 「でも、俺のせいで」

 「君のせいじゃない」

 「でもっ」

 「君は何も悪くない」

 「・・・・」

 「多分今は何を言ってもすんなり腑に落ちないと思うから、少し経ってから横溝が入院してる病院に行って、実際に彼と話したいことがあれば話をするといいよ」


 なんでもないかのようにそう言った足立さん。  

 


 「こうすけくんが罪悪感を感じるのは、横溝に何か文句を言われてからでいいさ」



 笑いながら言う足立さんに、おっちゃんが俺に文句を言うなんて多分、というか絶対ない、と思ってしまった。なんでそう感じたかはよく分からない。



 「あ、そういえば、これから行くホテルはご飯が凄く美味しいらしいからこうすけくんも満足すると思うよ」

 「え?」


 そして話をそらすかのように、横槍で唐突に質問を投げかけてきたのは、運転席に座っている彼だった。

 

 「・・・あ、えっと」


 (この人・・・名前まだ知らないんだけど、なんて名前だろう。っていうかなんで全然関係ない話題を・・・)

 

 「僕もタイミングが合えば食べたいな〜。足立さんは食べたことあります?」

 「ん〜あるっちゃあるがな〜」

 「どういう意味ですか?ご家族と行かれたとか?まさか奥様ですか?」

 「まぁ、そんなとこだな」

 「あ〜」

 

 いつの間にか俺抜きで楽しそうに話す二人を見て呆然としながらも、手に持っていた紙切れにふと目を落とした俺は『そうだ』と思いながらポケットに手をやり自分のスマホを探そうとした。

 

 だけどいくら探してもスマホがないことに焦りを感じ、どこにあるか必死で思い出そうと服を触りながら顔を下に向けた。

 

 「何か探し物かい?」

 「・・・え?あ、いや・・その・・・ス、スマホが無いなって・・・どこかに落としたかもしれなくて」

 「スマホ?・・・橘の持ち物押収した時、電源がついてないスマホが1代あったって聞いてるけど、もしかしてそれってこうすけくんのかな?」

 「・・・・」


 そう言われてふと思い出したのは、事件が起こる前。


 (()()()?)


 ほんの少し動きを止めて頭を動かす。

 

 (・・・そうだ・・・確か()()()に取り上げられたんだっけ・・・っていうかなんで取られたんだっけ)


 「あ、多分それ・・・俺の・・・です・・・返していただくことって、できますか」

 

 スマホがないと、俺の兄だという人から貰った番号に電話が出来ない。何を話せばいいのか、実際に電話をするのかも分からないけど、少なくともスマホがないと落ち着かない。

 

 「ん〜一応証拠品として押収してるから、すぐには返せないかな。ちなみにこれから行くホテルには必ず一人私服の警察官が付くようにするから何か伝言を頼みたい時はその人を通して連絡してもらえればと思うけど」

 「あ〜・・・」

 「ちなみに今日は一緒にいるのは僕だよ。塚内っていうんだ。自己紹介してなかったね。ごめんよ」

 「・・・あ、・・よろしく・・・お願いします」


 そうだ。確かにそうだ。

 俺が持っていたならまだしも、()()()が持っていたから、事件の証拠品として警察が保管するのは当たり前だ。すぐに返してもらえるわけがない。

 スマホのありかが分かったから少し安心したけど、それと同時に不安が消えない。


 「こうすけくん」

 「は、はい」

 「その件について聞きたいんだが」

 

 そんな不安をよそに突然聞こえてきた足立さんの声。そして彼の次の言葉で俺は身体をかたくしてしまった。



 「・・・・」

 「僕たちは中身をまだ見てないんだ。だからそのスマホが本当に君のモノなのかは今は断定できないんだが、もしかして毎日スマホは取り上げられてた?」

「えっ?」


 赤信号で止まった車に合わせて、足立さんはミラー越しに俺を見ながら最初の質問に答える前に被せて質問してきた。


 

「君はすぐに自分のだって言ったけど、ん〜そうだな、じゃあ例えばその持ち主不明のスマホが君のだと仮定して、橘が君のスマホを持っていたのはどうしてかな?日常的にスマホの中身を調べられたりしてた?」

 




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