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消えた弟  作者: しおやき
第三章 転

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たどり着いた真実





 「・・・・っ・・・や、やめろ・・・・黙れよ!!!」



 おっちゃんのほうに目を向けると、血が流れすぎたのか動きが止まっていた。微かに肩が動いて見えるのは呼吸をしてるからだと思いたいけど、お父さんの言うとおりもうすぐ死んでしまうかもしれない。


  (早く・・・早くおっちゃんを助けないと)

   

 

 そんなことを思ってもこれ以上子どもの俺にどうしろと言うんだ。

 

 構えるだけで必死。

 立ってるだけで必死。


 過呼吸になりそうな目の前の光景に、正常な精神を保てているのが不思議なくらいだった。

  


 そして、ふと静まり返ったリビングで、自分の呼吸が上ずったように聞こえたその時、父親が痺れを切らしたのか足元に居るおっちゃんを足で蹴飛ばしてゆっくりとこちらに向かってきた。



 「こうすけ?渡しなさい」

 「っ・・・・く、来るな・・・・来るな・・・!!!」

 



  パリンッ


 


  突然聞こえた渇いた音。


  (えっ)


 震えた手で握っていたからか、お父さんがこちらへ向かってくる恐怖で、無意識に叫びながら銃の引き金を引いてしまったと俺は思い込んだ。


 だけどテレビで聞いた発砲音とはあまりにも違いすぎて、握っていた拳銃の銃口を自分に間違えて向けてしまった。


  (・・・・撃った・・・のか?)



 「・・・こうすけぇ!!」

 「あっ・・・」


 ただどうやらそれは俺の勘違いだったらしい。

 すぐにお父さんの怒鳴り声が聞こえて、その後コンマ数秒も経たず右手にある窓からガシャン!!!と大きな音がして、立て続けにパリンとガラスが破れる音がした。



 (・・・・はっ)



 カーテンで隠れた向こうの景色、内と外でお互い状況把握ができていなかったはず。

 

 連絡さえも取れていなかったはずなのに、突如カーテンの外側から複数の武装した警官と、あとは防弾チョッキだけをつけた見たことのない顔の警察官らしき人物が2人ほど音に続いて部屋の中に一斉に入ってきた。

  


  「っ・・・・」


 突然の出来事に後ろに転けて、自分に間違って向けていた銃を幸いにも手放してしまった俺は、おっちゃんの時と同じように床を滑っていくその先を無意識に目で追った。

 そしてその銃は捜査員の一人の足元にぶつかり、そこで動きを止めた。



 (・・・・・あっ)


 「竹川ぁ!!!」


 止まったと同時に何故かおっちゃんが誰かの名前を叫んだけど、俺にはそれが誰だか分からず。



 (おっちゃん・・・・生きて・・生きてる・・・っ)

 

 「・・・・おっちゃん」

 「拘束しろ!!!押さえ込め!!!」

 「橘!!!」

 

 呟いた視線の先は、お父さんがあっという間に武装した警察官に銃を向けられ押さえ込まれている光景が。



 「・・・あ・・・・あっ・・」


 押さえつけられた腕から刃物を取り上げられてもなお、何かを叫びながら抵抗しようとする父親の姿を見た俺は、なりかけていた過呼吸がついに発症してしまった。



 「っ・・・・はっ・・・」

 「大丈夫か、鼻で息を吸って。むこうは見なくていいから、こっちを向いて」

 「はぁ・・・はぁ・・・」


 誰だか分からない横からかけられた声に、すがりついたのは握られた手で、その人のもう片方の手は俺の背中を擦ってくれていた。



 「手錠!!!手錠かけろ!!!」

 「離せぇ!!!」

 

 両腕を後ろに回されそのまま防弾チョッキだけを身に着けている捜査員に手錠をかけられたお父さん。所々で竹川という名前が聞こえてきたから、この人がおっちゃんが叫んだ相手なのだろう。


 刃物を取り上げたのはその人じゃなかったけど、一番最初にお父さんを押さえ付けに行ったその人はおっちゃんよりも若く見えた。


 「横溝さん!!大丈夫ですか!!」

 

 そんな彼がおっちゃんの方を向いて、何故か呼んだ名前は『横溝』。

 

 「・・・あぁ・・・っ」

 「救急車すぐ来ますから・・・」

 「竹川・・・・こっちはいいから、橘を連れて行け」

 「はい」


 おっちゃんに頷くその人は、息が上がっているように見えた。

 

 擦られていた背中に安堵して少し呼吸が落ち着いた俺は、声がしなくなった父さんが気になってたけど、無理矢理立たせられるようにして引き上げられるであろうその父親の姿を見たくなくて、顔をふせた。


 それに、目があったら何かを言われそうで、恐ろしくて連れて行かれる彼の背中すら見ることができなかった。



 「・・・・大丈夫か、どこか体に辛いとこは?」

 「・・・大丈夫です。どこも・・・」

 「とりあえず君も救急車に乗って」

 「・・・あの・・・おっちゃんは・・・・?」

 「おっちゃん?」

 「・・・・えっと、・・さ、佐藤・・・さん・・・です」

 「あぁ、彼なら大丈夫だ。心配いらないよ」

 「・・・・・」


  (横溝・・・って誰だろう)

 

 それを聞いて、ホッとした俺は今更足がすくんで立ち上がれない。無理矢理足に力を入れて立ち上がろうとしたら、隣に居る捜査員が支えてくれた。


 「・・・すいません」

 「大丈夫。謝らないで。それよりも外に出たらちょっとびっくりするかもしれないけど気にしないでね」

 

 (・・・外?)

 

  

 「・・・はい」


 お父さんが外に連れ出されて少し経ってから入れ替わるように家の中に入ってきた救急隊員は、捜査員に囲まれているおっちゃんのとこに行き応急処置を施していた。

 ぐったりした様子でそのまま担架に乗せられ外に先に出て行くおっちゃんとそれに着いていく竹川という捜査員。

 

 (・・・・俺の・・・せいだ)

 

 おっちゃんがこうなったのは明らかに俺のせいだ。



 項垂れておぼつかない足取りで支えてくれている捜査員の人からさっき言われた言葉の意味を考えながら、後に続いて外に出て行くと、すぐにその言葉の意味が分かってしまった。


  

  (・・・・な、なんだよ、これ)





  

 

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