真実までのカウントダウン2
「・・・・は?」
「行こう。時間がない」
「いてっ・・・な、なんで警察」
そんなこと一言も言わなかった。
「なんの冗談だよ・・・」
「冗談ではないよ。上から逃げる場所を確保してるから、さぁ早く」
「・・・・いっ」
支えられて無理矢理階段の上に移動させられそうになった俺は玄関に向かった母親と、未だ帰ってこない父親が気になりずっとリビングと玄関の境目を見つめていた。
「・・・嘘だろ」
「嘘じゃない」
警察手帳だけならまだしも拳銃を見せられたら脅されてるとしか思えない。
「・・・警察って、あの警察?」
「・・・『あの』が何を指してるか分からんが、警察は警察だ」
「・・・・・なんで」
「ん?」
「なんで、父さんが戻ってくる前なんだよ」
「・・・・・」
「なんで警察が・・・」
もしかして、なんて思わなくても、あの新聞の記事の男の子がけいすけであれば、必然的に彼を誘拐したのはお父さんということになる。事件が起こった場所とは無関係なこの土地でけいすけが暮らしているのはあまりにも不自然すぎるからだ。
それにお母さんのあの態度。
「・・・・けいすけは誘拐されたのか?」
「どういう意味だ?」
「お父さんの・・・・部屋の引き出しに、新聞の記事があった・・・6年前に誘拐された子どもの記事・・・それって・・・」
それはけいすけのことなのか?
そう聞こうとして、乾いた喉を開けると先におっちゃんが頷いた。
「あぁ」
「・・・・」
「そうだ」
「・・・・・」
そしてその一言で俺は黙ってしまった。
お父さんがそんなことするはずがないって思おうとしても、おっちゃんが俺を見つめる顔がいつものおっちゃんじゃなくて、あまりにもピリピリした雰囲気の目付きをしていたから、何も返すことができなかったのだ。
「・・・けいすけ・・・は・・・?」
どこにいる?無事なのか?
呆然として居ると、そんな俺を見たおっちゃんは首を横に振った。
「悪いけど彼のことについては今はまだ何も言えない」
「・・・・・」
「こうすけくん、今は君が助かることだけを考えて。お父さんは何をしでかすか分からないから、もしかしたら」
「どういう意味だよ、な・・・何もしないだろ。俺とけいすけだってなにかされたことなんてないよ」
「・・・・」
「そ、そんなことより、お父さん・・・おっちゃんのこと犯人かもしれないって。おっちゃんのとこに行って話ししたけど家に上げてくれなくて門前払いだったって・・・!!」
演技をしてるのは誰なのだろうか。俺は誰に騙されてる?ここまで自分でもお父さんのことを疑っていたにも関わらず、いざ他人に言われるとそれをすんなりと信じていいものなのか。
「いつのことだ」
「・・・・」
俺が中々動かないからか、おっちゃんは上に上がることを諦めて壁際に移動した。そこで俺を離して座らせると彼は片耳にはめていたワイヤレスのイヤホンに手を当て片膝を床につく。
「・・・えっと・・・確か火曜日・・・けいすけがいなくなった次の日」
「俺と話したって言ってたのか?」
「うん」
(・・・俺?)
「そうか。悪いがそいつは嘘だな。家に訪ねてきたのは本当だが、俺は出迎えてない。だから話してもないよ」
「・・・・・え」
「ごめんよ。ちょっと確認したいんだけど、けいすけくんが居なくなった日の月曜日・・・お父さんが君を迎えに来た日だ。あの日、あの後外に出たか?」
「・・・え?いや・・・俺は・・・家に居たけど」
「お父さんは?」
「けいすけを探しに・・・外に・・・」
「いつ帰ってきた?」
「・・・・な、なんで?」
父さんが帰ってきた時間が何か関係があるのか。ずぶ濡れになって山の方まで夜遅く暗い中危険なのにもかかわらず探しに行ってくれた。
結局見つからなかったと言っていたけど。
「いや、ちょっと気になってな」
(そ、そんな理由・・・)
「・・・遅かったよ。心配したんだけど・・・9時過ぎてたかも」
「そうか。何か変わったことなかったか?」
「・・・変わったとこ?」
「あぁ。例えば、」
おっちゃんがイヤホンに手を当ててから、俺と目を合わさずしきりに玄関の方を気にしだした。話してるのに、会話は噛み合ってるけど向いている意識は俺じゃない。
そして、異様な不安にかられて俺も玄関に続くリビングとの境目にまた目をやったちょうどその瞬間。
「きゃ"ー!!!!」
(えっ)
母親の聞いたことのない呻くような叫び声に、数秒遅れて父親の怒鳴り声が俺の耳に届いた。




