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消えた弟  作者: しおやき
第二章 承

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吉木さん




「っ・・・はぁはぁ・・・・」



ある程度走ると、道を思い出してきた。

あとは、ここを曲がれば吉木さんの家にたどり着く。

黒木さんは午前中に事が起こったと言っていたから、多分今行っても中にお邪魔することはできないかもしれない。



たまに見る都会のニュースで映し出される映像は、事件現場とかだと黄色いテープが貼られて規制がしかれている。田舎でも同じだろうか。でもそんなこと直面したことないから本当にそうなってるのかは直接見ないと分からない。



(・・・吉木さんに会えなくても、せめてヘルパーさんに会えれば)



「・・・・うっわ!!」

「おっと」



黒木さんと話していた時にサイレンの音が聞こえたからまだ吉木さんの家にはヘルパーさんもきっといるはず。もしも居なくても、人集りくらいはできていると思いたい。こんな田舎だと人集りにもならないかもしれないけど誰かに聞けば詳しく教えてくれるか。そう考えながらスピードを落とさずに曲がり角に突っ込んだ俺はそこから出てきた人と思いっきりぶつかってしまった。



「っ・・・痛・・・す、すいませんっ」

「ごめんよ、」


前を見ていなかったわけではない。厳密に言うと、曲がり角だから見えなかったというほうが正しい。


「大丈夫?思いっきりコケたね、申し訳ない」

「・・・大丈夫・・です。俺の方こそすいません」


はたから見ると出会い頭にぶつかったようだが、明らかに悪いのは俺だ。衝突した拍子で後に倒れるかと思ったけど、真正面から当たったのではなかったらしく横によろけてそのままコケてしまった。


(・・・・いった)



手を差し出してくれた声の主は、男性。

相手は軽くよろけただけで特にダメージを受けてはいないらしい。地面がコンクリートだからコケた時についた左手首がズキズキして、火傷をしたみたいに瞬間的に皮膚が熱くなった。



「危ないから曲がる時は走らないようにね」


出された手を右手でつかむと、起き上がらせてくれる。幸い足には痛みはないからそのまま両足で立ったけど、見上げた目の前の男性は今までに見たことのない人だった。


(・・・こんな人・・・いたっけ?)


年齢は若そうには見えないけど、大きい体に太い声。


「すいません・・・ちょっと急いでて・・・・次からは気をつけます」

「うん。怪我はない?」

「はい、大丈夫です。すいませんでした」


心配してくれる目の前の男の人は柔和な雰囲気で頭を撫でてくれた。高校生にもなって知らない人に頭を撫でられるのはなんだかいい気分はせず、重くのしかかったその手に顔を上げるのも何故か躊躇してしまい、謝罪の意味も込めて逆に軽く頭を下げた。


(・・・半ズボンとサンダル)


「怪我がないならそれでいいよ」


見えた足元に何ら不思議なことはない。夏だからだいたい皆同じような格好だ。それでもなんか違和感があった。それがなにか俺には分からなくて「?」が頭に浮かぶ。


(なんだ?)


「じゃあ僕はもう行くね」

「あ、はい。失礼します」


結局顔を見たのは最初だけ。凝視するのも失礼だからジロジロなんて見てられなくて感じ取った印象といえば『見たことのない人』ぐらいだった。彼にお別れの挨拶を言った俺はすぐにその場を離れたくて振り返りもせずに吉木さんの家に急ぐため、またこりもせずに走り始めた。








========





「・・・・はぁ・・・やっぱり規制しかれてる」



(ダメかっ)



吉木さんの家に着くと早速目に入ってきたのはテレビで見るような感じの様子。違ったのはマイクを持った人や、カメラマンとかはいないということと、あとは人集りがないということだった。



こういう事件があって実際に被害にあったあとの人達はそのままその日は家にいるのだろうか。

被害の度合いにもよるだろうけど、俺だったら犯人が捕まってないのなら同じ家に居座るのは怖すぎて夜なんて絶対に寝られないと思う。



(もう人がはけちゃったかな・・・ヘルパーさん・・・っていうか吉木さんって家の中に居たりするかな)


家のすぐ近くにはパトカーが1台と自転車が何故か2台ある。この自転車はきっと巡回の警察官がよく乗っているものだけど、なんで2台なんだろう。パトカーは、さっき黒木さんと話していた時に聞こえてきたサイレンの音の発信者か。


(・・・・そんなに警察官っていたっけ)


「どうしよう、ってか左手・・・なんかヒリヒリしてきたんだけど」



時間帯のピークを過ぎたのか、何故か誰もいない吉木さんの家の周りを1人でうろちょろしていた俺は母親のことが気になってスマホを確認しようとポケットに手を入れた。


その瞬間、玄関のドアが開く音が聞こえてきて、顔をぱっと上げた俺の視線の先に見えたのは1人の女性。



「・・・・あ、朽木さん!!」





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