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消えた弟  作者: しおやき
第二章 承

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27/73

家の中




俺が家を出る前はソファで寝ていたはず。

1人で勝手に外に出るとしても、せめて玄関の周りくらいだと思いたい。


(・・・・部屋のどっかにいないのか?)


当てにならないお母さんをその場に置いて、どうしようか迷いながらもとりあえず先に家の中を探した。本当は先に外に飛び出したかったけど、お母さんがおかしくなっているだけでもしかしたらけいすけは俺の部屋で寝てるかもしれない。


そんな考えがふと頭をよぎって俺は階段を駆け上がる。




「・・・・けいすけっ」


自分の部屋のドアを勢いよく開けて見渡した。

視界に広がる先は朝出たままの状態。布団も畳まれたままで、再度使われた形跡はない。机の上も綺麗だ。


(・・・・)


昨日使ったノートはバレたらまずいから引き出しの一番奥に閉まっておいた。



「ある・・・・な」


開けた引き出しの中に手を伸ばして取り出し、中を確かめたら鉛筆が挟まっていた。昨日途中でノートを閉じたんだとそれを見て思い出して、ため息をつきながら引き出しに戻して俺はすぐに自分の部屋から出た。




「母さんの・・・あれ何?まじ意味分かんね」


異常とも言える叫び声に、2階に上がって1人になった今になって心拍数が上がってきた。

口を押さえて深呼吸をしてみても汗が止まらない。身体の中が冷えているみたいに何故か寒気がする。



「・・・・別の部屋は」



けいすけはこの前、お母さんと2人で家で留守番をしていた時お父さんの部屋の中に勝手に入ったと言っていた。引き出しの中に新聞がたくさんあったと。



(もしかして、またここに入り込んでるとかないよな・・・・)



お父さんの部屋の前まで来た俺は足を止め、身体をドアのほうに向けた。彼は今仕事場にいるからここにはいない。ノックなんかしても返事もないし、ましてや出てくるわけでもない。


「・・・・」


この部屋にけいすけが居たらどうしようかと思ったけど、それなら逆にありがたい。何処かに1人で行ったわけでもないし、俺が心配しすぎてお母さんのあの反応の仕方に早とちりしただけかもしれない。


(ってか普通に自分で最初っから家の中探せばよかったな)


ついこの前も、出掛けた時にけいすけはいきなり居なくなって、俺とお父さんに軽く叱られた。結果的にすぐそばにいて俺の視界から消えていただけだったけど、今回もきっとそうだ。


(・・・ちょっと色々考えすぎか・・・・)


精神的に過敏になって考える方向がおかしなことになっているのは俺の方かもしれないと、持っていたタオルを首にかけて嫌な汗を拭いた。




「・・・ん?」


そういえば昨日お父さんは、お母さんの不調は精神的なものと言っていた。ドアノブに手をかけて一瞬動きを止めて考える。


お父さんは何かを知ってるような言いぶりだった?いや、そんなはずはない。疲れと夏の暑さで精神をやられる時だってあるはずだ。お母さんが薬を飲んでるところは見たことがないし、そんな会話を夫婦でしていた記憶もない。



今までの夏の時、お母さんはどんな様子だったか思い出そうとしたけど頭の中が冷静にならなくてすぐに断念。


「・・・だめだ、考えられない・・・・・っていうか早く中に」



入るなと言われていたこの部屋に、けいすけが隠れているかもしれないと思った俺は、ドアにかけていた手に力を入れて開けようとした。



「・・・・えっ」


その瞬間すぐに腕に違和感を感じて、何回かガチャガチャとドアノブを揺らしてしまう。


「鍵かかってんじゃん・・・・」


ということはけいすけはお父さんの部屋にはいない。

念のため弟の名前を呼びかけてみるも中から返事は皆無。





「・・・・まじでいない」


それから部屋という部屋は全部見たけど弟がいる気配なんてまるでない。リビングに戻り洗面所とトイレも確認したけど、けいすけはどこにもいなかった。




「・・・・母さん」


床に落ちた洗濯物を拾いもせず、顔を両手で隠して肩を震わせている彼女はまさかずっとそうしていたのだろうか。


「さっきはごめん、大きな声出して。大丈夫?ちょっとソファに移動しよう。ここに座って」

「・・・・・」


洗濯物は畳む暇がないからソファに放り投げた。お母さんは何も言わず下を向いて俺に引っ張られるままにソファに腰を下ろす。


「・・・・ちょっと外に行く。けいすけ探してくるから・・・あと、父さんには連絡したほうがいいよね」

「・・・・・え?」

「あのさ、もし入れ違いでけいすけが戻ってきたら俺のスマホに連絡して。すぐに帰るようにするから」




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