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消えた弟  作者: しおやき
第二章 承

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23/73

ノート


異変3の続きです。




「なぁ・・・けいすけ」

「なに?」

「知らないおじさんってどんな姿してた?」


弟の手を離して、スマホを机の上に置いた。


「ん〜、分かんない」

「分かんない?顔とか見てない?」


(背が高くて顔が見えなかったとか?)


「見てない。大きかったから分かんない。でも、ここがもじゃもじゃだった」

「もじゃもじゃ?」


けいすけが指した場所は顎。

もじゃもじゃということは相当髭が生えているということか。それなら俺はそんな人知らない。


(・・・俺も知らない人・・・ってことは本当にここに住んでる人じゃない)



「もじゃもじゃ!」

「そうか・・・なぁ、それなら兄ちゃんも多分誰だか分かんないから、これにどんな人だったか描いてくれるか?」

「え〜?いいよ?」

 


差し出された鉛筆と、まっさらで何も書かれていない白紙のページが開かれたノートを少し見つめてから不思議そうな声を出してそれを掴んだけいすけは、俺の布団の上で寝転がりながら書き始めた。




(・・・あれ、ってか帽子・・・)



「しくった。持ってくるの忘れてた」

「なにが?」

「帽子。ちょっと取りに行ってくる」

「どこに?」

「リビングだよ。すぐに戻るから」

「・・・うん」



さっきソファに座ったときに、ケツで潰していたかもしれない。けいすけに謎のおじさんの絵を描いてもらっている間に俺はリビングに戻るため部屋から出た。



(明日お父さんのとこに行けるといいな〜)



トントンと急ぎ足で階段を降りると軽く音が立つ。

それでもテレビをつけたり、話しに夢中になっていればリビングにいてもその音はあんまり聞こえない。階段を降りる時『うるさい』なんて叱られたことがないから、絶対にそうだろう。



お父さんとお母さんはテレビでも見てるのかなと思って、残り3段になった時、階段の段差から目を離してダイニングテーブルのほうに視線を向けた。



「・・・あれ、」

「ん?あぁ、なんだこうすけか」

「母さんは?」


階段を降りきってひんやりとした床に足をつける。



「ちょっと寝てくるって」

「・・・やっぱり体調悪い?」

「やっぱり?」

「・・・・あ、いや。なんか夏だし、熱中症かなって。昨日の夜も顔色あんま良くなかったから」

「あぁ、そうだったんだね」

「うん」

「まぁ今回のはちょっと精神的なもののほうが強いかな」


(・・・・精神的なもの?)



けいすけと買い物に行った時のことが原因だろうか。

ダイニングテーブルに座って新聞を読んでいたお父さんを遮って話しかけると素っ気なくだけど答えてくれた。



「へ〜・・・・家事とか手伝ったほうがいいのかな。精神的なものって、」



俺は本来の目的である帽子を見つけソファに近付いてつばを掴んだ。案の定尻で潰していたらしい、折られたようなあとがついて小さくソファの上でうずくまっていた。



「・・・夏の暑さのせい?それとも家事が大変とか?けいすけはもう小学生だから、日中は手が空いてると思うけど・・・・」


(まぁ今は夏休みだから日中も手がかかるか)


「ん〜、どうかな。色々重なってしまってるからかな」

「・・・・そっか」

「こうすけは手伝わなくてもいいよ」

「・・・そっか・・・・ならいいけど。部屋に戻るわ」

「そう?ん?あぁ、帽子か」

「そそ。取り忘れ」



持った帽子を軽く上げれば、父親はそれを見て俺がわざわざリビングに降りてきた理由に納得。



「じゃあね」と返事も聞かずにすぐに階段を駆け上がり部屋へと戻った。



「精神的なものってなんだよ」


部屋のドアを背にして右手で閉めながら呟く。その声に反応して何故か仰向けになっていたけいすけが顔と上体をパッあげた。


「にいちゃん、出来た」

「ん?出来た?見せて」

「はい」



言葉だけの説明でどんな外見かなんて想像がつかない。

けいすけの絵の才能はそこまであるとは思わないけど、見たままを描いてくれればそれなりに形にはなると思う。一週間前の記憶でもないし、ちょうどさっき見た光景のはずだから、大きくはそれてないはずだ。


布団の横に胡座をかいて、足をバタバタさせているけいすけからノートを受け取った。



(どんな人なんだろ)


絵が描かれたそのページを広げたまま、けいすけが渡してくれたノートを見て俺は「あれ?」と思った。



「・・・・これって」



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