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消えた弟  作者: しおやき
第一章 起

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散歩


誤字脱字報告ありがとうございます!




「美味そうじゃなくて、『美味い』だよ」

「そっか。でもなんか小さくない?」

「まぁ普通のに比べたらそうだな。1人用って感じか」

「ふ~ん」



もし居たら飲み物を恵んでくれるかと思ったけど、まさかのスイカにありつけることが判明して少し気分が上がる。


「ほら、食うなら座ってだぞ」

「うん」

「その前にこれで手洗え」

「ありがと」


庭には蛇口を捻れば水が出る水道がある。

炎天下の中だと出し始めは絶対に温かいけど、おじさんが先に使ってたんなら多分冷たいはずだ。


「うわ、冷て!」

「だろ。さっき使ったからな」

「生き返る~」

「何をオヤジみたいなこと言ってんだ」

「いや~、あと2年で18ですから」

「若いだろ」

「ん~、あれ、おっちゃんって何歳なんだっけ?」

「もうすぐ46だよ」

「・・・・おっさんじゃん!!」

「うるさいな」


知ってたことをわざとらしく聞いて、ケラケラ笑いながら洗った手をぶんぶん振り回して水滴を飛ばした。


「ほら、タオル」

「どうも」


夏だからほっといても水滴なんて飛んでいくのにと思いながら、出されたタオルで適当に拭く。


縁側に座ると、おじさんも座るかと思ったけどそのまま靴を脱いで家の中に入っていった。


(あれ)


「どこ行くの?」

「お茶取ってくる。飲みたいだろ?」

「ぉお、流石」

「ここらへんは自販機がねえからな~」


(自販機?)


少しすると、冷えたお茶が入ったコップを2つ抱えて戻ってきたおじさんは縁側に腰を下ろした。俺たちの間にはスイカがある。



「あぁ~、それにしても暑いな~」

「だね」


スイカを手にとって一口かじると冷えていて美味い。種があるけど小ぶりだからたいして邪魔じゃない。



「さっきさ、久下のお爺さんが持ってきてくれたって言ってたじゃん」

「あぁ」

「仲良いんだね」

「まぁな」

「おじさん2人で何話すの?」

「あ?どんな質問だよそれは。たいした話はしねえぞ。爺さんの孫の話とか、年金の話とか」

「ふ~ん」


(・・・・けいすけが言ってた知らないおじさんのこと聞きたいけど、分かんないかな~)


直接的に聞くことはできない。

けいすけと約束したし、もし聞いたとして、それを俺のお父さんに言われたらたまったもんじゃない。


(いい聞き方ないかな・・・)


おじさんの家は小学校付近だから、知らない人が居たらとりあえず見かけてはいそうだけど。



「そう言えばおじさんって市内に居たんだよな、なんでわざわざこんな田舎に戻ってきたの?」

「ん?あ~・・・・仕事で体壊したんだよ」

「そっか」

「なんだよ?」

「いや、結婚とかしてなかったの?ずっと独身?こっち帰ってきても嫁さんなんて見つかんなくない?っていうか46歳だよね?もう無理ゲーじゃない?」

「・・・・それは質問か?それとも俺のことけなしてんのか?」

「え~・・・・どっちもかな」

「なんだよそれは」



ゴツゴツした手で小さなサイズのスイカを持って食べてる姿を見るとなんだか面白い。


「すぐ食べ終わっちゃうね」

「そうだな」

「・・・・・」

「どうした?」

「ん?いや~・・・・ニュース見てたら父さんにいきなり切られたんだけど、やっぱり子どもが誘拐されるニュースとか見るのって親としては嫌なのかな」

「は?」



突然の俺の発言に、佐藤のおじさんは『なに言ってんだこいつは』というような顔をしてスイカを食べている手を止めた。


「・・・・昨日さ、なんかそういうニュース流れてて、赤ん坊が誘拐されたっていうやつ。昨日で6年目だって言ってたから・・・まだ見つかってないらしくて」

「・・・・・」


いきなり自分の子どもが居なくなったら親はどんな気持ちなのだろう。しかも拐われたことは明白。


「俺・・・気になっちゃってさ、ほらけいすけも6歳だろ。同い年じゃん」

「・・・・そうか」

「おっちゃんはニュースとか見ない?まぁ、東京で起こった事件らしいし、父さんも言ってたけどこんな田舎とは無関係だから、あんまりそういうのには関心ないよな」




自分で言い出したわりに、前フリもなく言ったからなんだか恥ずかしくなり最後の方は早口になってしまった。




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