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消えた弟  作者: しおやき
第一章 起

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材料集めと称して





(・・・・え)



バタン



ドアが閉まった音がする。ただこれだけだと外に出ていったのか、中に入ってきたのか分からない。そしてドアが閉まったから光もなくなってしまった。


(真っ暗じゃん・・・)



人がいる気配は近くにない。他に何かあるとすれば、けいすけが寝返りを打って足を畳に打ちつけた音がするくらいだ。



(暗いから目は開けても良いのか?)


一瞬そう思ったが、目を開けて目の前に居たら確実に心臓が止まる。怖すぎるし、叫び声は必須だろう。考えた結果寝返りを打つふりをして反対を向くという無難な方向に持っていくことに決めた。


もちろん目は開けられない。


(まじで勘弁して・・・・)


あの時、あそこで立ち止まらずそのまま下に降りて『水を飲みに来た』と言えば自然だったからもしれない。

さっき聞こえた父親の発言を考えてみても、冗談で言ってるようには聞こえなくて、今考えると声色はだいぶ無機質だった気がする。



「・・・っ」


上手く寝返りは打てた。

これで目を瞑っている表情は見られないから大丈夫だと思いたい。



「・・・・にいちゃん」 


(は?)



「兄ちゃん」


背中から、けいすけの舌っ足らずな声が聞こえて思わず身体を固くした。さっきのお父さんのもそうだけど、真夜中にこんな事されたらホラー過ぎる。



(けいすけ起きた?)



畳が擦れる音に、呼ばれて目を開けるのなら不自然ではないと目を薄っすらと開けわざとゆっくり身体を起こした。



「・・・・いない・・・いないじゃん、良かった。ほんとにビビった・・・まじでなんなんだよ」


父親があんな不可思議な行動を取るなんて、今までにあっただろうか。



「けいすけ・・・大丈夫か?」

「ん"~・・・」

「・・・けいすけ」

「・・・・ま~〃$&〃ゝ仝」


(寝てやがんなこいつ)


弟が寝ている場所まで移動して話しかけるも本人はまだ夢の中。起こして布団に乗っけるのも可哀想だと思った俺は自分が寝ていた布団を引っ張って移動した。


「これなら・・・大丈夫だろ」



横抱きにして少しだけ浮かせても起きない。

また寝言を言う前に布団にゆっくりとおろしてタオルケットをかけてやった。


「こいつ重くなったな」



赤ちゃんの時なんて、当たり前に軽かったのに。

寝てる時は可愛かった。もちろん今も可愛いけど、寝返りが激しくて一緒に寝るとどうしても身体を毎回どこか痛める。



「・・・・あ~・・・ふぇ」

「・・・俺も寝てる時なんか喋ってんのかな」



子どもだから体温が高くて、冬はくっつかれると非常にありがたい。夏にやられるとちょっと困るけど。



「・・・・にいちゃん」


(お、3回目)


また寝返りを打って俺のほうに寄ってきた弟は、そのまま俺にぎゅっとしがみついてきた。体感温度的に発熱してるように感じるけど、子ども体温だから仕方ない。



(寝れるか俺・・・・まぁいいか)



高校を卒業したら多分家を出る。具体的にお父さんとお母さんと将来の話をしたことはないけど、大学に行って、社会に出て働いて、結婚して、家庭を持って。


そんな普通な人生を歩みたいなと思っている俺は高校卒業とともに今この住んでいる場所から出たいとお父さんに申し出をしたら、どんな反応をされるのだろうか。



(相手とかいないから、結婚の前にそもそも彼女作らないとダメだな)



そんなことを考えながら、俺の服によだれを垂らして気持ちよさそうに眠っているけいすけの頭を飽きもせずに撫でていた。







「・・・・眠い」



朝をむかえて、案の定眠れなかった俺はカーテンの隙間から漏れる光をボーッと眺める。


(今日大丈夫かな・・・まぁ、昨日の夜前半は寝てたから一睡もしてないわけじゃないけど)



いまだにしがみついている弟の肩を軽く叩いて起こそうとした。


「けいすけ、兄ちゃんトイレ行きたいからちょっと離して」

「ん~・・・・はに」


(はに?)


「けいすけ」

「・・・にいちゃん」


(なんだ?って聞きたいけど、寝言に返事しないほうがいいんだっけ)



「・・・・」

「おはよう」

「・・・あ?」

 

(あ?)


「ヘヘ・・・」

「なんだよ」



もしかしたらまだ夢の中かもしれない。俺を見て何故か顔をクシャとさせて笑うけいすけの腕が少し緩んだから上体を起こした。



「にいちゃんどこ行くの」

「トイレ」

「・・・ダメ」

「なんで?」

「・・・・・ダメだから」


(いや意味わかんね)


「漏らしてもいいの?けいすけの着てる服しょんべん臭くなるよ」

「え~?」

「まぁ冗談だけど、兄ちゃんちょっと今日出掛けるから、少ししたら準備するぞ。手離せ」

「・・・・どこ行くの?僕も一緒に行く」

「ダメ~」

「なんで?」

「お前が勝手に1人でどっか行ったら、お父さんとお母さんに怒られるから」


こう言うと、けいすけはグズる。

いつものことだから、暴れ出しそうになったらとっとと起きてリビングに行こうと思っていた。



「・・・・兄ちゃん」

「なに?」

「・・・どこも行かない?」

「誰が?」

「兄ちゃん」


(俺?)


「なんで?どこも行かんよ。だいたいどっか急に消えていなくなりそうなのはお前のほうだろ」

「・・・・」

「父さんも心配するし、あんまりうろちょろすんなよ」

「・・・うん」



わめきださない弟に内心『あれ?』と思いながら布団から出て伸びをしながらカーテンを開けた。




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