56話 憎しみと哀れみ
大輝は、トン・カンの寝ぐらを目指した。
自分が何がしたいか?解らない大輝は、迷っていた、只、最初にいかなければならないのは、事実であった。
人数分しか無いタイムカプセルを、一台も失う訳にはいかなかったからである。
トン・カンの洞穴
大輝は、大声をだした。
「出て来い!話がある!」
だが、暫く待っても一向に返事は無い。
「悪い話ではないんだ!」と大輝は声を出すが、変化は無い。
大輝は、〝太刀〟のスイッチを入れ刃を出した。
「入るぞ!」と明かりを持ち、奥へ進んだ。
中に入ると、二人は寝ているように見えた。
大輝は、トンに近づき「おい!起きろ!」と手をかけるが、トンは〝ミイラ〟になっている!
「うわ!」と後退りする大輝は、カンも見るが、同じである。
〝誰かにやられたのか?〟と疑問が湧くが、外傷はなく、身体は、痩せ細り〝餓死〟か?と大輝は思った。
大輝にさっきまでの〝怒り〟と痩せ細った遺体からの〝哀れみ〟が、化学反応を起こす。
紗理奈にした事は、許せないはずなのに!
あれ程〝殺したい〟と思っていたのに!
胸には、〝化学反応〟により、悲しみが哀れさが、
押し寄せる。
分かり合う事は出来なかったのか?
こんな太古で、数人しか居ない人間が、歪み合わなければならなかったのか?
と疑問が湧く。
大輝は、答えの無い問題と行き先のない〝怒り〟を持ったまま、遺体に手を合わせ、洞穴を後にした。
ベースキャンプ付近、
大輝は、3時間かけベースキャンプ付近まできた。
もうすぐ、紗理奈が笛をならす。
そんな思いで、一歩ずつ歩いた。
あと少しの所で人影が見える!
おかしい、どう見ても〝子供〟である!
大輝は、走り、子供の側まで近寄る!
〝子供〟は5、6歳の様に見える、女の子である。
大輝は、「君?どうしたの?」と聞くと、女の子は、「オジちゃんだれ?」と逆に聞かれた。
女の子は、「あたしは、〝渋谷キーシャ〟!」
キーシャ⁈大輝は訳分からなくなった。
大輝の最後に見た〝キーシャ〟はまだ一歳にもならず、抱かれていた。




