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魔力ゼロの天才、魔法学園に通う下級貴族に転生し無双する  作者: 黄舞
第二章【天才、魔法の杖を作る】
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第十五話【アムレットの相談】

「うーん。やはり質量があると、速度を上げるためにはそれに乗じた魔力が必要で……いや……質量を無視する法則を当てはめれば――」

「ねー! さっきから何ぶつぶつ一人で呟いてるの⁉」

「わ、わぁ⁉ なんだ、アムレットか。脅かすなよ……」


 学園復帰からしばらく経ち、ようやく生活環境に慣れてきた俺は、空を高速で飛ぶための理論を学園の図書館で研究している最中だった。

 前世は部屋中自分の書き散らかした紙だらけだったので、特に読むでもなく、そうした場所が心地よいためだ。

 真剣に集中していた俺を驚かせたのはクラスメイトの少女、アムレットだった。


「フィリオ君を探して、やっと見つけたと思ったら、熱心に何か書いてたから落ち着くまで待とうと思ったんだけどさー。全然止まんないんだもん。独り言。だから、声かけちゃった」


 そういってアムレットはぺろりと小さな形の良い舌を悪びれもなく出した。

 まぁ、意識が完全に中に入ってたところに声をかけられてびっくりしたが、別にそれで怒るほど俺は心は狭くない。

 顔だけではなく身体もアムレットに向けて、要件を聞くことにした。


「それで? わざわざ俺を探してたのはどういう理由だ? 魔法の指導なら次は明日のはずだろう?」

「違うよぉ。そんな、四六時中魔法のことばっかり考えているのなんて、フィリオ君くらいだからね!」


 アムレットは俺たちが暮らす国セントオルガの貴族の子息子女が通う魔法学園マグナレアの生徒だが、他の生徒と違い平民の生まれだ。

 どうやらこの学園の多くの生徒や教員たちは選民思想が強いらしく、編入生であるアムレットへの態度のその思想が如実に表れていた。

 しかし一方で、貴族という生き物の(さが)なのか、実力のある者にはめっぽう弱い。

 平民から編入を決めたくらいであるから、アムレットの魔力量はそこらへんにいるやつらよりもはるかに高い。

 魔力の扱い方さえきちんと学べば、やつらの鼻を明かせるというわけだ。

 そんなアムレットに俺は友人として魔法の指導をする約束をし、定期的に行っている。

 てっきり要件というのはそのことかと思ったが、俺の予想はすっかり外れてしまったようだ。

 アムレットは両手の人差し指を互いに突き合いながら、少し恥ずかしそうな表情で続けた。


「実は……私の杖のことで相談がしたくて……」

「杖? あぁ、そういえばようやく第三競技場の修繕が終わり、実技が再開する予定だったな。しかし、昨日買いに行ったんじゃなかったのか?」


 杖は魔法を使う際の媒体となり、魔法の威力を底上げしたり、より複雑な魔法を使うための道しるべとなる道具だ。

 学園では教員以外は普段の携帯を禁止されているが、実技の授業ではそれぞれ自分で用意した杖を使う。

 前回受けた実技ではそのことを知らず、俺もアムレットも杖なしでの参加になってしまった。

 俺に関しては、身体の持ち主であるフィリオが元々持っていたはずだが、実技担当のメルビンの話によれば、以前に壊れてしまったらしい。

 フィリオの過去を考えれば、おそらく壊れたというよりも壊されたというのが妥当だろうが。

 アムレットは単純に杖の存在を知らなかったので、用意できなかっただけ。

 後から確認したところ、自分に合う杖を購入するよう、資金を渡されていたらしい。


「それがね……昨日、お店に行ってきたんだけど。どれを選べばいいか全然わからなくて……」

「そんなもの、店の人に聞けばいいじゃないか。そういうのは得意だろう?」

「もちろん聞いたよ! それでね! 聞いたんだけど、結局買えなかったんだぁ……」

「どういうことだ? とりあえず、長くなりそうだから座らないか? ずっとこの首の角度でいるのも疲れる」

「あ、うん!」


 俺に促され、重い椅子を机から引きずり出して、アムレットは俺の隣に座る。

 机の向かいにも椅子はあるが、図書館の机は広く作られているから、話をするならこっちの方が話しやすい。

 アムレットはぴたりとくっつけた両ひざの上に両手を添え、うつむき加減で話し始めた。

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新作ハイファン書き始めましたヾ(●´∇`●)ノ

千年の眠りから覚めた天才魔道具師は創りたい〜冬眠装置に誤って入った私が目覚めたのは、一度文明が滅びた後の未来でした〜

魔道具師が滅んだ千年後の未来で、コールドスリープから目覚めた天才魔道具師が、魔道具を創りたい衝動に駆られてあれこれ騒動を起こす話です。 良かったらこちらもよろしくお願いします!
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