表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力ゼロの天才、魔法学園に通う下級貴族に転生し無双する  作者: 黄舞
第一章【魔力ゼロの天才、転生する】
12/34

第十二話【同類】

 再びサーミリアの方へと身体を向けた俺は素直な質問を投げかける。


「なんか用か?」

「ええ。もちろん。ねぇ。どうやったの? 私の魔力量測定に間違いはありえないわ。あなたの魔力量は貴族として平凡。それに今まで特別な噂も聞いたことがない」


 サーミリアは妖艶な笑みを顔に浮かばせながら、俺を見つめる。

 まるで珍しい研究対象を見つけたような、そんな目つきだ。


「でもね? 何か変な感じもするのよねぇ。まるで開けてはいけない神話の箱がその底に沈んでいるような……」

「この世の全ての災厄が封じられている箱のことか?」

「ええ。ねぇ。ペイル君、あなた本当に何者なの?」

「何者も何も、ただのこの学園の一年生さ」


 俺はサーミリアの質問を適当に受け流しながら、言われたことの一つが気になっていた。

 サーミリアも言ったように俺の魔力量は常人よりは多いが、貴族としては平凡で、それは俺自身が調べた結果とも一致している。

 しかし、先ほどの四重複合魔法を使おうとした時に、感じた違和感。

 まるで、俺の身体の中に全貌を見ることすら敵わない何かがあるような気がしたのだ。

 あのままさらに五重、六重と重ねていったとしたら、何かとてつもない問題が起こる直感がして、やめたというのもある。

 それを一度の測定で視えたということは、サーミリアの魔力測定能力は並外れているということだろう。


「もう! はぐらかすのが得意なのね……じゃあ、こっちはきちんと教えてくれるかしら? 何を潜ませていようが、たった今あなたはそれを扱うことができていないはずだわ。それなのに、ねぇどうやったの?」


 その瞬間、俺は直感した。

 この女性サーミリアは、ある意味俺と同類と言っていい。

 彼女は取りつかれているのだ。

 知識欲という魔物に。

 しかし俺は慌てることなく、淡々と言葉を返した。


「どうやったとは? さっき自分で言っていたじゃないか。俺には壁を壊すような魔力量はない。かと言って、俺には俺のために外から壁を壊してくれるような実力の持ち主の知り合いはいない」

「いいのよ。偽らなくても。いくら古くなったとはいえ、たかが入学して半年のガキに壊せるほど学園長の魔法はやわじゃないわ。それにね、魔力痕って知ってる? 魔法を唱えると、その威力に応じた痕跡がしばらく残るのよ。それを視るには特別な力が必要だけれど、私には視えるの。あなたの周りにびっくりするくらいの魔力痕がね」

「魔力痕だと?」


 魔力痕というのは初めて聞く言葉だ。

 俺はサーミリアに隠し通せないという事実よりも、自分の知らない世界がまだある事実に心を躍らせていた。

 いまだに恍惚の表情で俺を見つめているサーミリアに、俺は提案を投げかける。


「その魔力痕というのは、どうやって見るんだ? やり方を俺に教えてくれたら、俺も先生の質問に素直に答えよう」

「ダメよ! ダメ、ダメ‼ そんな安い女じゃないの。あー、もう! いいわ。秘密は自分で暴く方がずーっと素敵ですものね」

「そうか。交渉決裂だな。俺も魔力痕の見方については独自に学ぶとしよう。ただ、魔力痕という新しい知識を与えてくれた礼として、一つヒントをやろう」

「あら、意外と優しいのね? ミステリアスも好きだけど、優しい男も好きよ。でも一番好きなのは強い雄」

「先生の性癖に興味は一切ないが。魔力と魔法は容器に入った水とその容器から取り出した水の関係に似ている。以上だ」

「なるほど……余計わかりにくくなった気もしないでもないけれど、きっとその中に答えがあるのね。うふふふ……」

「あっはっはっは!」


 サーミリアと俺は、互いに見つめ合ったまま高らかと声を出して笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作ハイファン書き始めましたヾ(●´∇`●)ノ

千年の眠りから覚めた天才魔道具師は創りたい〜冬眠装置に誤って入った私が目覚めたのは、一度文明が滅びた後の未来でした〜

魔道具師が滅んだ千年後の未来で、コールドスリープから目覚めた天才魔道具師が、魔道具を創りたい衝動に駆られてあれこれ騒動を起こす話です。 良かったらこちらもよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ