最初の町へ
ヤカタ村、俺が食料を調達していたのに良く利用していた町だ。
そして人間の国では一番西にある町で魔国と最も近い町である。
つまりこの町は魔国を攻め入る時の野営地として兵士がパトロールをしたりしているのである。
そんな所に俺とアミは一番大きな酒場で休憩を取ることにした。
「それにしても俺の時はフードを外していたが普段そんな格好をしているのか?」
そう、今のアミは最初に出会った時と同じ服装でコップに入っている飲み物を飲んでいる。
正直怪しい人物との悪巧みをしているしか見えない。
フードを外せばそれなりの綺麗な女性として男を惹きつけたりもできるのにこんな俺みたいな人物と行動をとみにするからちょっと罪悪感が生まれてしまう。
ただ俺自身もここにきた目的を忘れてはいない。
それは、ここにいる兵士達に声をかけここからさらに東に位置するフツリナ市に向かいそこで王国との会談を得ることができるよう橋渡し役をしてくれる人物がいるか聞くためだ。
今力がない状態で戦いを止めようとしても本末転倒だし、兵士を説得したとしても聞く耳を持たない。
結局の所権力を握っている人物に話しかけ少しでも戦闘を回避するようお願いすることだ。
これ自体もなかなかハードルが高いし、最悪指名手配なんかもありうるかもしれないけど、やらないと時間だけが過ぎてしまうし、なんとかここで情報を入手しなければ。
「そう言えばあなたが食料を買いに訪れている人物に聞いてみたんですか?」
俺が考え込んでいるうちにアミが話題を降ってきた。
「ああ、お店のおばちゃん言わく『最近見かけない如何にも厳つく身体が大きい、騎士さんが町を襲撃する魔族たちを撃退したそうなんだ。私は本人を見たことはないけど右肩に黒色の星形をいれていると噂があってね、なんでもこの町を守る要にもなっている人物なんだって。』と教えてくれたよ。」
人間の国では力ある兵士のランクがあるのだが、その右肩にいれているものでどれくらいの人物か分かるのだ。
一般兵士には無いが、段階的には黒色から青色、緑色、赤色、黄色、そして金色の計六色あるわけだが、一般兵士より少しは情報を持っている人物がこの町に来ているようだ。
「そうですか、では早速探してみましょう。」
とアミはすぐに席を立ち扉へ向かおうとする。
「いやいや、ちょっと待てよ。どう考えても見切り発射すぎるだろ。」
本当にこのアミは言葉で言った途端にそれを実行しようと行動する人物だったようだ。この町に来る前からいろいろ振り回されいい加減慣れてきたがそれ以上に疲労が溜まるようだ。
「情報を探るにしてもこちらが下手に出れば怪しまれるからあっちが何から動いたほうが安全なんだからもっと慎重に行動してくれ。」
と酒場のど真ん中で、フードを被っている人物を引っ張る男性。
興味するように周りの視線を集めてしまい逆効果を与えてしまっているようで、本当に恥ずかしくなってきた。
しかし、そんな賑やか酒場に一人の兵士が急ぎ足で酒場の扉を開け入ってきた。
「盛り上がっている所すまぬが只今西方面の平野に再び魔族が現れたようだ。すぐに避難するようにしてくれ。」
と情報を探す手前この町を襲撃する魔族がすぐそこまで攻めてきているようだ。
「▪️▪️▪️さんこれはチャンスです今すぐ現場に向かいましょう。その騎士さんがどんなん人物か知るためにはまたとない機会です。」
再び扉に向かって歩き出したアミだったが、俺自身もその人物をいち早く知る機会が得られた以上あみと同行した方が早そうだと思いフードから手を離し一緒に現場に向かったのだった。
ドドドドドドドド
かなり大きな集団がこの町に接近しいるようだ。
遠くからであまり見えないが、ゴブリンが大型犬に乗りそれを軍隊として行動しているようだった。
そして人間側は、 弓矢、槍をそれぞれ持っている兵士が一列になって町を守る壁役として配置されていた。
その中で一番先頭に立つ人物が右肩に黒色の星形を身につけているた。
「市民よこの俺ローブシンんが来たからには町に被害を出す前に魔族を一目散に撃退してやるから安心するがいい。」
と自分の大剣を高く持ち上げたからかに宣言をし始めた。
かなり力自慢の人物なのか、如何にも一人で持ち上げるのにも無理そうな大剣を片手で持ち上げるもんだからこれには俺も驚いてそのローブシンを見ていた。
そして、人間と魔族との戦いが始まってしまった。
俺自身戦争を何度も見てきたけど、この世界では初めてだった。
まずは、弓矢を持った兵士が魔族に向かって一斉に矢を放った。
それにまともに攻撃を喰らったのか倒れて動けなくなった者達がいたが攻撃をかわした者達が一心不乱に突進して来た。
続いてローブシン率いる、槍部隊が前に先行し近接戦で戦闘を始めた。
大型犬が首に向かって飛び上がっても逆に首元に鋭利な槍が突き刺さり絶命してしまった。
そしてゴブリンと大型犬を一撃で粉砕するローブシ。
近接部隊が攻撃を始めて、僅か5分足らずで残りのゴブリン達は一目散に退避していった。
「流石です騎士さん、凄い力ですね。」
「格好いいです。」
「またこの町を守ってください。」
とたくさんの拍手喝采が巻き起こった。
正直俺も初めて戦闘を見たがここまで一方的に相手を退けるとは思わなかった。
俺も市民と同じ感想を抱いていたが、アミは何故かさっきの様な破茶滅茶な様子とは違く静かにローブシンを見つめていた。
「▪️▪️▪️さん、この後ローブシンに会いにいきましょう。」
その声は俺だけに聞こえるくらいの静かな声で言って来た。
さすがに俺もアミの態度が急変したことに驚き理由を聞いてみた。
「どうした、さっきまでと言動が変わり過ぎじゃないか、なんかローブシンをじっと見ているし、あの騎士に情報を聞くにもなんか嫌悪感に近い雰囲気を出しているがどうしたんだ?」
「理由を説明しますので、少しここから離れましょう、ローブシンに尋ねるのはその後で。」
と言い、その場から離れたのだった。
周りが暗くなり戦闘で活躍した人物達が宴を開いていた。肉を食べお酒を飲み大声で歌を歌うものもいれば、踊っている人物もいたりと、勝利の祝いをしていた。
そんな中、夜風にあたりにローブシンが建物から出て薄暗い小道を歩いていった。
そこには黒いフードを被った少し背が低い人物が建物にもたれかかりながら、ローブシンを待っていた。
「首尾はどうだった?」
「完璧だよ。イヤー大いに助かっているよ、この大剣のおかげで俺も今ではこの町で有名人だ、このまま続ければこの町は俺の町として支配者になれる。」
と邪悪な笑みを浮かべていた。
「さてそれではまた数日後に準備をするからその時にまたこちらから接触するのでその時は宜しく、そしてこれが今日の報酬分だ。」
と言い懐からぎっしり金貨が入った袋をローブシンに渡した。
「おお助かる。金はいざって時にも重要だし、俺が今後贅沢するのにちゃんと貰っていくぜ。」
と言い両者ともに小道で笑い合った。
しかしそのすぐ後に
「なんとも聞き捨てならない話が聞こえて来ましたね。」
と女性の声が聞こえ両者ともその方に顔を向けた。するとそこには赤いローブを着た人物と一人の男が立っていた。