また苦労が始まる
開幕とんでもない発言をするもんだから頭が麻痺するのではないかと思ってしまった。この世界の天秤になってもらいたいのですだと。こんな内容を聞けば誰でも同じ反応をするに違いない。そして俺はそのままその人物に
「俺の睡眠を妨げたい出鱈目な話をしたいだけならそのまますぐに家に帰りな、こんな夜中に目覚ましジョークされても困るんだ。じゃーな」と、俺はそのまま扉を閉めかけると
「ごめんなさい。どうかあなたの力が必要なのです。どうか少しの間だけでもお話を聞いてもらえないでしょうか。」と、先程より少し弱い声になって帰ってきた。しかもよく聴いてみたらその声は女性の声だった。少し驚き扉の上にある点灯をつけてみると紅くハードを頭まで被り全身を覆うように着こなしている女性が立っていた。そしてその女性はハードを外すと蒼い目と銀髪の髪色が特徴なとても若く美しい人物だった。流石にこんな夜中にこんな綺麗な女性が家に尋ねてきたのには何か訳があるのではと思いつつ、先程の話がどこまで本当なのか問い詰めたくもなり、そのまま家に招き入れた。
「暖かい飲み物はないけど水はあるけど飲む?」
「はい、ありがとうございます。」
最初はこの人が少しでも疲労を解消するよう水を与え話せる状況を作りつつその女性をよく観察してみた。するとその人物の首飾りがとてつもない物だと驚いた。大きさはダイヤモンドよりも小さい大きさだったが、最初見た時の色が様々な色へと変色しながら光り輝いていたのだ。赤色から緑色、黄色、青色、黒色と混合しながら渦を描いているように見えた。まるでその首飾りが意志を持っているように。
「ありがとうございます。少し落ち着きました。」とちょうど水を飲み干し落ち着きを取り戻したみたいだ。少しづつ順を追って聞いてみた。
「じゃあ、まずはあんたの自己紹介をしてくれ。」
「はい、私はこの世界の破滅を防ぐアミと申します。」
やっぱり真面目に聞いた俺が馬鹿だった。自己紹介の前文におかしな言葉がついてきた。これを真面目に答えるもんだから、逆に俺の方がおかしいのさえ思えてきてしまう。
「名前よりもその役目の方に意識を向けてしまうけど、なんでそんなスケールを掲げているの?俺じゃなくても他の人にも同じ自己紹介をしてないよね?」
「いえ、流石に他の人にはこんな自己紹介はしません。するとしたら名前だけです。」
余計わかねぇー。つまり俺にしかこんな自己紹介はしてないということになる。俺も他の人と同じく名前だけの自己紹介にして欲しかったと内心でそう思ってしまった。
「じゃあなんでそんな大層なもんを俺に言う?内容事態よく把握できねぇんだけど。」
「あなたはこの世界が今どのような状況かご存知ですか?」と、今度は世間的な話になった。内容の真意がわからない以上自分の考えを一度言ってみるか。
「確かに、この世界は今大きな分岐点に立っていることは薄々わかっている。魔物も人間も力が均衡に近づき、どちらか一方の勢力が勝利すれば形勢は大きく傾くことになるだろうこともな。それが破滅を呼ぶのかどうかも実際知らない。だが、そんなことを考えても俺には何もできないし、する必要もあまり感じない。何故そんな話を俺に持ちかけてきたんだ?」
「だからこそなのです。あなたのようにどちらの味方にもならず、どちらの敵にもならない、そんな考えを持つ人物を探しておりました。」すこし驚いたが、このアミという女性俺の考えを聞いても否定するばかりか、肯定してきた。ますますわからない。このアミという女性は俺に何を期待しているのか?
「さっきも言ったが、俺がするつもりもないのは自分が大した力もなく度胸もない奴が他人の人生を手助けできるほど良い人生を歩んでこなかったということでもあるんだぞ。無気力な人物よりももっと力があって人を惹きつけるようなやつに進言すればいいだろ?」
少し自分で言って傷つくがこんな俺に助けを求めても何にもならないし、アミのためにもならない、そう思い半ば強気で言葉を返してみた。しかしまたここで俺は驚いた。
「いいえそれでも十分です。肝心な部分はその思考を持っていることですから、その考えを聞けただけでも私は嬉しいです。」と返してきた。しかも少し顔が緩み笑顔をし始めた。一体このアミという女性は俺に何を頼むのか少し不気味なってしまった。
「さて、ここから本題なんですけれでも私も別にあなたに世界の平和を目指して欲しいという言葉は言いません。ただ、世界の破滅を未然に防ぐ役割を担ってほしいのです。」
「それも十分凄い内容だと思うけど、たとえ俺自身のその思考に近かったとしても実際の俺には何もできない一人の人間なんだぞ。一体どうすればいいというんだ?」
「これも順を追って説明します。近い将来魔物と人間の激しい戦争が起きるでしょう。しかもほぼ間違い無く。それを防ぐのも大いに世界を破滅を防ぐ道なのですがそれの他にもその道までの間に両勢力をなるべく力を減少させ、バランスを保ちつつ、被害を抑えるようにしてもらいたいのです。戦争をなくすよりは、戦争の被害を最小限にそれが世界の破滅を防ぐ最も最良な方法なのですが、これをするにもまず思想を大きく変える必要があるのですが、両勢力も戦争に勝利することに躍起になってまるで聞く耳を立てません。このままでは今までにないほどの世に混乱を生むことになるでしょう。そこで私だけで無くあなたにも手助けしてほしいということです▪️▪️▪️さん。」と、なるほどこのアミは自分だけで抑えることができない世界の破滅を一緒に手助けしてほしいということか。かなり長い文で理解するのに時間が掛かったが。
「そして自分には力がないとおっしゃいましたがその点はご安心を私があなたに力を授けます。」
また少しわからない内容がきたが、俺に力を授けることができるのか?
「ではこれからあなたに力を授けます。」と言い身に付けていた首飾りを外した。
いつも思う。戦争というものがこの世からなくならないのか。平和というものが本当に存在するのか。世界を渡り歩いても結局は同じ答えがいつも出る、何度同じ試みをしても最後には同じ結果が目の前に現れる。一体どれほどのことを頑張ってきたのか、それすらも覚えていないいつのまにか自分が生きてきた過去を忘れてしまっていた。そんな中俺は一つの思考にたどり着いた。それはそんなことを考えるくらいならそんな立場に立つべきではないもっと違う視点から物事を見据え考え最良の結果へと導く、それが生きる上での最善の生き方なのではないかと。その思考が全ての始まりとなった。
俺が記憶を持ったまま転生を繰り返すことを知ったのかはもう覚えていない、なんでそんなことにもなったのかはどうでもいいとさえ思えてくるほどだ。ただ今を生きる上で必死でそんなことは頭のなからすでに離れていた。それでも今いるこの世界は今まで渡り歩いてきた世界よりも幾分もマシに感じるほどに善悪が上手く噛み合い平和も貧困も所々で見かける。俺はそんな世界でこつこつ淡々と生きる努力をした。しかし、そうも言ってはいられなくなるのが世の中だ、この世界では人と魔物が相容れず幾千もの長き時戦争と紛争を繰り返してきた。あるものは虐殺をあるものは拷問の果て公開処刑されたものその世界を振り返れば目を背けたくなるような記述がいくつも出てくる。だからこそどちらの勢力も自分たちが勝利し平和な世の中にしようと日々の軍事力を秘匿に拡大を続けた。俺はそんな勢力に対して興味はさらさらなかった、どちらを助けるもなく、喧嘩を売りたかった訳ではなかった。ただ自分の生活を邪魔してくるならば腹を括るしかないと思いひたすらに体を鍛えた。
しかしこの世界は魔物や人間など多種多様な種族がいるせいか見たこともない魔法や妖術、見たこともない現象がたくさん起こる。特に驚きなのは魔物と人間の頂点に立っている人物魔物は魔王と呼ばれるもの、人間は王族と呼ばれる人物の特徴だ。魔族はほとんど子を産まない、その理由は人間よりもはるかに長生きをし継承をしてしまうとそのぶん力が分散し、徐々に脆弱をし始めてしまうからだ。そのため魔王は数千年に一度しか子を産まず、代替わりすることはほとんどなかったとのこと。逆に人間の方は子に継承する分自分の力もその子に明け渡す、継承すればするほど強くなるというしかもそれは既に人間の枠を超え魔物を脅かすほどにまで大きくなっているとのこと。しかもそのそれぞれの力がついに均衡になるほどまで迫っているとのことだった。そんな均衡が崩れれば一気に片方に勢力はまし今までにない規模の戦争が起こりこの世界がもつのか少々不安になるのは当然考えたが果たして体を鍛えたからといって同行できるものでもないしまた同じ残酷さを見ることになるのかと憂鬱になってしまった。
そんなある夜のことだった俺が寝ている間に家に尋ねてきた人物がいた。
「今晩は夜分遅くに失礼します。▪️▪️▪️さんは居ますか?」
俺の睡眠を妨害する奴を許すつもりもなかったがこんな離れた地の一軒家にしかも俺の名前で呼んでいることは何かしら俺に伝えたいことでもあるのかと半信半疑で俺は家の扉を開け中に招いた。するとその人物は
「こんな時間に大変申し訳ありません。しかし急ぎあなたに伝えねばならないことを伝えにきました。▪️▪️▪️さん、あなたにこの世界の天秤になってもらいたいのです。」そんなことを言われ俺は二度寝をしたい気持ちに駆られてしまったのだった。