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困惑令嬢と空回り令息  作者: 夕鈴


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第5話前編 困惑令嬢の恐怖の出来事

イナベラは男爵領に帰ってきた。

ベンは友人の家に出かけた。

ベンは伯爵家での下位貴族の集まりからたくさんの友人ができたと喜んでいた。

イナベラは男爵家に遊びに行くベンを笑顔で見送った。同じ家格の家なので無礼の心配がないことに安心していた。イナベラは両親とお茶を飲んでいた。ハンカチを贈ると喜んでくれた両親に笑みを浮かべていた。

夜会の後にそのまま学園に帰ったイナベラが微笑んでいる様子に両親は安心していた。


「お父様、お母様、ドレスを白く染め直したんだけど」


男爵夫妻は申しわけない顔をしている娘に優しく微笑んだ。イナベラがドレスを大事にしていることを知っていた。染め直したことに事情があっても娘が言わないなら聞く気はなかった。男爵夫妻はイナベラを信頼していた。


「仕上がりが楽しみね。完成したら着てみせて」

「きっとお前はどんなドレスも似合うからな」

「大事なドレスなのに・・」

「貴方に贈ったものよ。好きにしていいのよ。せっかくだから白いドレスに会うコサージュと髪飾りを作ろうかしら」

「楽しみだな」


イナベラは両親の様子に安堵して笑みをこぼした。ただ和やかな時間は続かなかった。

ベンが捕えられたと使者がきた。イナベラは両親と面会を求めても拒否されてしまった。

伯爵家の私物を盗んだため投獄されたと聞いて言葉を失った。

ベンは男爵家に出かけた。ベンを訴えている伯爵家の名前と話を聞いてイナベラは顔が真っ青になった。

伯爵家なら男爵家を裁ける。冷たくなった弟を想像して体が震えた。

助けてくれるかはわからなかった。それでも頼れる相手は一人しかいなかった。

追い返されるのも無礼も承知の上で、イナベラは馬車に駆けこんだ。男爵夫妻はベンの出かけた男爵家に詳細を聞きにいくことにした。真っ青な顔の娘の出かける先はわかっていたので適任者に任せることにした。


***

伯爵邸ではエリオットの話を聞いた兄のオリオンは腹を抱えて笑っていた。

自分に似て令嬢に大人気の弟が本命には失策ばかり繰り広げていた。兄からすればダメ出しの連続だった。一目惚れした令嬢のために、わざわざ理由を作って男爵領に通っていたことも、オーダーメイドのドレスを仕立てあげたのも知っていた。そして趣味でもない小説を取り寄せて読んでいることも。


「兄上」

「お前、何年気付かなかったの?社交デビューが8歳だろ?それから7年もうすぐ8年間か。嫌われてるのに好かれてると勘違いしてたなんて」

「嫌われて・・・」

「怯えられてもいたな。父上がイナベラ嬢の同意がなければ婚約許さないって言ってたよな。他に浚われる前に、気付いてよかったんじゃないか。お前、鈍すぎる。あんなに取り寄せた本も今まで受け取って貰えなかったとは」


エリオットは兄の態度や言葉に不愉快な気持ちを抑えた。兄の機嫌を損ねるわけにはいかなかった。貴重な相談相手である。


「どうすればいいか教えて」

「からまわってんな。お前に好かれたせいで、嫌がらせをされてるイナベラ嬢が可哀想だ。でも彼女はいじめられているのに、上位貴族には悪い噂が聞こえてこないんだよな」

「僕のイナベラは悪いところなどないから当然だよ」

「学園で孤立させた原因が。お前、頼ってもらえると思ってただろう?」

「僕は彼女が僕以外に頼るのも一緒の時間をとられるのも嫌だった。」

「バカだよな。元凶に誰も頼らないよ。むしろ嫌われて当然だ」


エリオットは兄の言葉に心が抉られていた。


「でも、傍にいてくれるし、最近は時々笑ってくれる」


「坊ちゃん、ご令嬢が訪問されましたがお会いになりますか?」


先触れを出すと断られるので突然会いに来る令嬢達がいた。オリオンは気まぐれで令嬢の相手をしてもエリオットが相手をすることはなかった。


「興味ないから追い返して」

「わかりました」


執事はエリオットの命令で立ち去っていった。


「容赦ないな」

「僕は兄上と違って見境いなしじゃないから」


しばらくすると、執事が戻ってきた。エリオットが不快な顔をむけた。


「坊ちゃん、申しわけありません。ご令嬢の様子がおかしいんですが。あまりに必死なご様子で、放っておいたら・・」


執事の様子に兄弟は面倒な状況に顔をしかめた。


「エリオット、行け。さすがに首を吊られたら困る」

「僕、しつこい令嬢嫌いんだけど」

「令嬢もお前に言われたくはないだろう。わかったよ。俺が行くよ」


オリオンはエリオットの代わりに様子を見に行くことにした。


「先触れもなく申しわけありません。どうかエリオット様にお取次ぎをいただけないでしょうか。会わせていただけるなら、なんでも致します。どうかお願いします。不敬についての咎も受けます。私の首でよければ喜んで差し出します」


真っ青な顔で床に額をつけて懇願しているイナベラの様子に執事が呼びにきた理由を察した。オリオンはイナベラを返せばエリオットが荒れると思い、執事に再度呼びに行かせた。

不機嫌な顔でオリオンに近づいてきたエリオットはイナベラに気づき慌てて駆け寄った。


「イナベラ!?」

「先触れもなく無礼をお許しください。私、個人でしたらいくらでも咎は受けます。どうか助けていただけませんか。私、一生小間使いでも構いません。事がすんだら首を差し出します。なんでもします。どうか、お願い致します」


オリオンは必死に頼むイナベラと動揺している弟を愉快に見ていた。イナベラが願えば弟はなんでも叶える。一生小間使いって・・。弟の好意が全く伝わっていないことがよくわかった。


「顔を上げてくれないか。」


イナベラは怖くて顔を上げられなかった。1度面会を断られた時に絶望した。でも諦めるわけにはいかなかった。


「弟を、弟をどうか」

「ベンがどうした?」

「助けてくださいとは言いません。ただ会わせていただけるように取り計らってはいただけないでしょうか。私、もうエリオット様しか頼れる方が」


膝をついて頭を下げているイナベラは震えていた。


「いいよ。君の願いならどんなことでも叶えるよ。」


イナベラはエリオットの言葉が耳に入らなかった。自分に都合のよい幻聴だと思っていた。


「私、なんでもします。どうか」

「願いを教えて。絶対に叶えるから」

「え?」


イナベラは再び聞こえた言葉に驚いて顔をあげた。絶対に拒否されると思っていた。目の前には意地悪な笑みを浮かべる顔ではなく真剣な顔のエリオットがいた。

エリオットは動揺するイナベラの説明を聞いて嫌な予感しかしなかった。ベンが捕えられた家がイナベラにワインをかけた令嬢の家だった。書状だけでいいというイナベラに強引に付き添うことにした。弟のためなら、どんな無理難題もイナベラは飲み込みそうだった。すでに首を差し出すと言っていた。エリオットはイナベラの訪問を告げなかった無能な執事の処罰を心の中で決めていた。エリオットの用意がすむまで、真っ青な顔でイナベラは待っていた。無礼とわかっていても出されたお茶に手を伸ばす気力もなかった。


伯爵令嬢は門前払いされるイナベラを愉快に眺めていた。上機嫌で男爵家に手紙を送って、返答を待っていたらエリオットの訪問を告げられた。高位のエリオットの面会を伯爵家は断れないが、令嬢はエリオットを慕っていたので上機嫌で受け入れた。ただイナベラが一緒に訪問したことを知り顔を顰めていた。伯爵令嬢は二人を引き離したかった。ただエリオットはイナベラと別に案内されるのを頷かなかった。

伯爵夫妻は留守のため、伯爵令嬢はエリオット達と面会した。伯爵令嬢はエリオットの前で高慢な態度をとるわけにはいかなかった。伯爵令嬢は悲痛な顔を作り、自分の弟がベンの盗みに気付いたと話した。エリオットの頼みなら、いくつか条件を飲むなら穏便な方法を選ぶように父を説得すると話した。イナベラが頷こうとするのをエリオットが止めた。


「イナベラ、絶対にベンは助けるから、僕に任せて静かにしてて」


イナベラは囁かれる声に逆らってはいけない気がして静かに頷いた。


「ベンの盗んだ物を見せてくれないか?」


伯爵令嬢は何枚かのハンカチを見せた。イナベラがベンの誕生日に贈ったハンカチだった。イナベラは自分の所為でベンが危険な目に会っていると知りさらに顔が青くなった。


「男爵家がこんなもの買えないでしょう?」


エリオットにも見覚えのある物だった。隣で息を飲んで悲痛な顔をしたイナベラの手を握った。


「これの持ち主を調べたのか?」

「まだ調査中です。ただ彼の持ち物ではないことは確かです。上位貴族の中で刺繍入りの高価な物が流行しています。」

「被害者がいないのに裁くことはできない」

「上位の者が下位の無礼を諫めるのは当然です。貴族として相応しくない者には断罪を」


伯爵令嬢には叶えたいことがあった。エリオットの前でも引く気はなかった。

エリオットはハンカチを手に取った。


「この粗悪な品は上位貴族の持ち物ではないだろう?」


貴族に流行しているのは絹のハンカチだった。ただ目の前のハンカチは安価な綿だった。

伯爵令嬢は本物の流行しているハンカチを見たことがなかった。


「え?」


エリオットは一枚のハンカチをさし出した。鮮やかな花の刺繍があり、貴婦人に出回っているものだった。ライアンがイナベラの処女作と売りつけてきたものだった。


「比べてほしい。これが金貨で取引されているハンカチだ」


イナベラは目を丸くした。ベンに申しわけない気持ちでいっぱいだった。ただ聞きづてならない言葉だった。自分の刺繍したハンカチが貴族に売られていることも金貨で取引されていることも知らなかった。

金貨という言葉に恐ろしいほど高価な素材を使っていたことを知り恐怖で体が震えた。


「ですが、あれが彼のものという証拠はありません」

「あるよ。刺繍をしたのはイナベラだ。証人が欲しいなら他にも用意しようか?」

「罪人の姉の言葉など信じられません。エリオット様、正気に戻ってください。貴方も騙されてます」

「僕の言葉が信用できないなら、もっと上位の者を呼ぼう」

「彼女にはエリオット様以外の知り合いはいないでしょう」

「さぁね。謂れのない罪で子供を投獄か。きちんと調べさせよう。ただし、彼の身柄はうちで預かる。逃がしたりはしない。僕の名にかけて約束するよ。明らかになるまで、イナベラや男爵家と接触はしないでほしい。ベンを連れてきてくれるかい?」


沈黙が続いたがエリオットの冷たい空気に飲まれた令嬢が頷いた。

ようやくベンが連れてこられてきた。

イナベラはベンに駆け寄って抱きしめた。

ひどいことをされていないか不安で堪らなかった。


「ベン、良かった。」


イナベラは腕の中の暖かいベンに涙が溢れた。


「姉上、泣かないで。僕は平気だから。どこも痛くないよ」

「ごめんね。私の所為で。私が贈らなければ」

「姉上の所為じゃないよ。僕、嬉しかったんだ。もう友達に自慢しないからまた作って。僕は姉上の刺繍が大好き」

「ベン」

「泣かないで。今度は僕の名前も刺繍して。そしたらもう取られないから。姉上、僕の所為でごめん」

「ベンの所為じゃないの。全部私が悪いの。私、貴方が死んじゃったら」


号泣しているイナベラを見てエリオットの中で何かが切れた音がした。

これ以上二人に手を出せないように徹底的に手を回すことを決めた。

ベンは泣きじゃくるイナベラを必死で慰めた。


「イナベラ、移動しようか。」

「はい。申しわけありません。」


エリオットの声に我に返ったイナベラは涙を拭いてベンの手を繋いで、エリオットのあとについていった。

ベンは馬車の中でイナベラに抱きついた。エリオットが許したので、イナベラは甘えて抱きしめることにした。自分の腕の中の暖かいベンがいることに安堵した。馬車が伯爵邸に着く頃にイナベラは落ち着きを取り戻した。イナベラは伯爵邸に入ると頭を下げた。


「このたびは助けていただきありがとうございました。」

「頭をあげて。まだこの件は終わってないから、片付くまではベンをうちで預からせてほしい。男爵夫妻も呼ぼうか?」

「え?」


イナベラは恐ろしい言葉に頭をあげて、ベンを腕に抱いた。


「無実の子供を投獄など、うちとしては見過ごせない。ベンの安全のためにも。うちで預からせてくれないか。」

「いえ。そんなご迷惑をかけられません。お礼もできません」

「お礼はいらない。うちの役目だから。それに大層なことではないよ。ベンも心細いだろうから、イナベラも一緒に滞在して構わないよ」


イナベラはベンが一人で伯爵家に滞在など恐ろしかった。壺を割ったらどうしようかと考えただけで、頭が真っ白だった。違う意味で男爵領の危機だった。


「ありがとうございます。エリオット様、私たちは使用人宿舎でかまいません。侍女長にご挨拶をさせてください」

「姉上、さすがに見ず知らずの俺達を働かせるほど困っている家には思えないよ。エリオット様の言うことを聞いて、静かに待ってよう」

「でも、なにもせずにお世話になるなんて。私、料理も洗濯も」

「よその家で勝手は許されないよ。命じられたら従えばいいよ」

「そう。わかったわ。エリオット様、私達にできることがあれば遠慮なく命じてくださいませ」


イナベラはベンの言葉に頷き大人しくすることにした。

エリオットはベンはやんちゃだと聞いていた。ただイナベラよりもベンの方がしっかりしているように見えてしまった。二人を部屋に案内して、男爵家に使いを出した。不謹慎でもイナベラと過ごせることが嬉しかった。男爵家からは二人をお願いしますと手紙が届いた。男爵家から同封されたもう一枚の手紙を読んで報復することを決めた。

兄は冷気を出している弟の様子を眺めていた。


「怒ってるのか」

「あいつの出した条件知ってる?イナベラを悪評だらけの子爵の後妻にして、男爵領に多額の賠償金、伯爵家への忠誠を誓わせるだと。慈悲深い顔をして示した条件がこれ?イナベラは僕が一緒じゃなければ頷いた。それにイナベラが号泣した。しかも2度目だ。どこにも許せる要素がない」

「さっきは伯爵家としての役目って言ってたけど、私怨じゃないかよ」

「あれも本気。せっかくイナベラがうちにいるのにやることが多すぎる」

「イナベラ嬢は母上に連れて行かれたよ」

「は?」

「お茶会だってさ。母上も会いたがっていたしな」

「兄上、手伝って。」

「仕方ないな」


兄は弟が暴走しないように手を貸すことにした。

弟の愉快な初恋に多少は協力してやるかと思いながら。


***


イナベラはエリオットの母親にお茶に誘われて恐縮していた。ベンには部屋から出ず、物に触れないように厳しく言い聞かせて伯爵夫人の部屋を訪ねていた。


「礼はいらないわ。私、ずっと貴方に会いたかったの。お茶をしましょう。座って」


謝罪をしようと思っていたイナベラは朗らかな笑みを浮かべる伯爵夫人の言葉に首を傾げた。慌てて平静を装い案内された椅子に座った。


「エリオットがずっと夢中なご令嬢に」


イナベラは驚愕した。

まさかエリオットの母親に勘違いされているとは思わなかった。


「恐れながら伯爵夫人、誤解です。」

「あら?どうして?」

「私は嫌われております。便利な小間使いとしてお傍におかれているだけですわ」


伯爵夫人は曇りのない瞳で断言するイナベラに言葉を失った。社交界で大人気の息子は本命には相手にされていなかった。伯爵夫人は話題を変えることにした。可愛げのない息子で遊べるネタに笑みを深めた。


イナベラが伯爵夫人とお茶をしている時にベンはエリオットに呼ばれた。姉に一人で部屋から出ないように頼まれてもエリオットの誘いを断るわけにはいかなかった。姉が戻る前に帰ることを決めて案内される部屋に向かった。エリオットはイナベラに事情を聞かせたくなかった。イナベラが母に捕まるなら当分解放されないためベンを呼び出した。ベンはエリオットに求められるまま静かに事情を話した。


「男爵家に自慢の姉の刺繍入りのハンカチを持っていきました。友人とハンカチのことで盛り上がっていると、偶然訪ねた伯爵子息に泥棒と声をあげられ拘束され、伯爵邸の牢にいれられました」


淡々と話すベンをエリオットは静かに見ていた。やはりイナベラの話すような手のかかる、やんちゃな弟には見えなかった。むしろ自分と同じ感じがした。


「イナベラには言わないけど、捕まったのわざと?」

「はい。あの場でおさめることはできました。ただ話を大きくした方が、得策かと。俺は姉上がよぼよぼのじじいに嫁がされるなんて許せません。それに自分を見つめる視線に気づいてました。貴方を利用したことは謝罪します」


エリオットは頭を下げているベンを見て、動揺していたイナベラを思い出した。伯爵邸に訪ねたイナベラは真っ青な顔で震えて頭を下げていた。伯爵令嬢と話す時も悲痛な顔をしていた。ベンの無事に大号泣だった。初めて見る光景ばかりだった。エリオットは不愉快な気持ちを抑えた。目の前にいるのはイナベラの大事な弟であり排除していい存在ではない。


「頭をあげて。イナベラが僕を頼らなかったらどうしたの?」

「姉上には貴族の知り合いはエリオット様だけです。姉上は僕のためならためらいません。それに貴方は姉上に頼まれたら、断らないと読んでました。一応、他にも保険はありましたよ。怒って僕達を放り出しますか?」


エリオットは自分と姉を利用して平気な顔をしているベンに、イナベラの弟か疑念を抱いた。ベンはエリオットにとって聞き逃せない言葉を零した。


「保険?」

「僕の姉上は人気があるんです。仲を取り持つから手を貸してって言えば頷いてくれる方々がいます。でも美味しい思いしてませんか?こんなことがなければ、自分が嫌われている相手に懇願なんてしませんよ」

「嫌われている?」

「姉上はエリオット様は自分を嫌っていると思っておられます。ここで得点を稼げるといいですね」


事件よりもベンの言葉の方が気になっていた。ベンの言葉にエリオットの心は抉られていた。エリオットはベンを味方につけたほうがいいことがよくわかった。


「剣、見てやろうか?」

「姉上が近々指導騎士を用意してくれると言うので結構です。僕はこれで、失礼します」


ベンは礼をして去っていった。エリオットが自分を介して姉に近づきたいのはわかっていても思惑にのる気はなかった。

伯爵家の催しのおかげでベンはいくつか伝手を広げていた。姉に頼んでお菓子を用意した。姉のお菓子は絶品である。そのおかげで良い友人ができた。そして自分のことを注意深く観察している男にも気づいていた。恨みを買う理由はいくつか心当たりがあった。自分の姉を貶める材料を探していると気づいて潰そうと思った。友人の話を聞いて姉のドレスを汚したことも知っていた。姉のためなら容赦のないエリオットを知っていたので一番適任だった。男爵家ではエリオットがイナベラに惚れていることを知らないのはイナベラだけだった。


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