第7話 空回り令息のやり直し
イナベラのドレスの刺繍が完成した。
ライアンは上出来だとイナベラの頭を撫でた。イナベラはライアンの評価に喜んでいた。ライアンには協力してくれたお礼にいつもお菓子を渡していた。
イナベラは糸や本のお礼をエリオットにもしたかった。押し付けられる本は楽しい物ばかりで、何より糸のおかげでドレスが完成した。色鮮やかな刺繍糸はイナベラでは手が出せない高級品だった。
ただエリオットが身に付けるような高価な物は贈れなかった。目の前の刺繍をしている布に目を止めた。この品質なら贈っても許されるかもしれないと考えた。
「ライアン、この布ってお幾らですか?」
「銀貨1枚で売ってあげるよ」
「いいんですか?」
「いいよ」
イナベラはライアンに銀貨を渡すと布を2枚もらった。
エリオットにもらった糸が余っていたので刺繍することにした。
1枚は伯爵家の紋章を。2枚目には伯爵邸を刺繍をした。
ライアンはイナベラのセンスに曖昧に笑っていた。
***
最近はイナベラは意地悪を言わないエリオットとの時間が苦痛ではなくなった。
昼休みに訪ねてきたエリオットと庭園に移動した。
「あの、ご迷惑でなければ、不要なら捨てていただいて構いません」
恐る恐るイナベラが差し出した包みをエリオットは受け取った。
中を開けると、刺繍されたハンカチが2枚入っていた。
「もらっていいの?」
「ご迷惑でなければ」
エリオットは怯えているイナベラに微笑んだ。イナベラから貰えるものはどんなものでも嬉しかった。
「ありがとう。嬉しい」
「いえ、こんなお礼しかできなくて・・・」
ベンの件のお礼はマントの刺繍をしてもらっていた。エリオットは他にお礼をされる覚えはなかった。
「お礼?」
「本と糸の。あの糸のおかげで、ドレスができたんです」
「ドレス?」
イナベラは柔らかく微笑んだ。ライアンや博士のおかげで持ち直せたことに感謝していた。そしてエリオットが糸をくれたことも。
「はい。汚れてしまったので、博士が染め直してくれたんです。そしたら真っ白になってしまったので刺繍をいれたんです。」
「捨てなかったんだ」
エリオットはドレスは捨てたと思っていた。
いつの間にか元気になったイナベラにほっとしていた。
「うちには新しいドレスを買う余裕はありません。もしお金があってもあのドレスだけは特別です。色が変わってしまいましたがお父様達が私のことを想って作ってくださったものですから。もしお金持ちになっても生涯大事にしたい唯一無二のドレスです。」
ドレスを思い浮かべて幸せそうにイナベラは微笑んだ。
エリオットは自分の贈ったドレスをそこまで大事に思ってもらえてるとは思わなかった。
「そんなに嬉しかったの?」
「はい。あの頃は諦めてましたから。あのドレスを着て令嬢らしくなろうと決めました」
エリオットは当時の自分の強引さを思い出した。
いつも家族や領民のことを思うイナベラに受け取ってもらえるように必死に考えた。自分の選んだドレスを身に着けた幼いイナベラを思い出した。
「君の綺麗な赤毛に似合って綺麗だった。髪に飾った花も。もともと可愛いけど、ドレス姿も格別に可愛いかったよ」
「え?」
イナベラはエリオットの言葉に首を傾げた。
エリオットは兄の助言をもとにやり直すことにした。主語をつけて言葉を省略するなと言う言葉を。
「イナベラはどんな服も着こなすから。令嬢には嘘にまみれた褒め言葉を贈るけど、イナベラにだけは心からの賞賛だよ。」
イナベラはエリオットの言葉に困惑していた。
「昔、変わらないって」
「イナベラの可憐さはどんなときも変わらないよ。」
「私の髪とドレスを見苦しいって令嬢達と」
「え?あれは褒められてただろう?特別って」
「雑草みたいって。髪の毛は汚れてるって」
エリオットは当時傍を離れたことを後悔した。令嬢達に囲まれて悪口を言われていたとは思わなかった。イナベラの目には令嬢達の言葉に同意した自分がどう映ったかようやくわかった。
「そんなこと思ったことはない。他の男に口説かれる君に嫉妬して意地悪を言ったけど、君のドレスも髪も美しかった。男達が君を褒めたのは本気だったよ。僕は嫉妬に狂って君に嘘を教えた」
「赤毛、怖い」
「美しいよ。怖いことなんてない。」
「皆、私の髪を怖がる」
エリオットはイナベラの誤解にようやく気付いた。
大事なイナベラを自分が傷付けていた。イナベラを見て怯えるのは近くでエリオットが牽制していたからである。
「イナベラの髪を怖がる者はいないよ。怖がる理由は君の所為じゃない。君は美しいよ。上位貴族に生まれれば引く手数多だったよ」
「そんなことありません」
「僕は君が好きだから、引く手数多じゃないほうがありがたいけど」
「え?」
「やっぱりわからなかったか。男爵領に通っていた頃から君が好きだった。僕が君を嫌ったことは一度もない」
イナベラは困惑していた。目の前の男は自分が嫌いなはずだった。
「そろそろ昼休みがおわるから戻ろうか」
エリオットに差し出される手に手を重ねてイナベラは立ち上がった。
嫌われてなかったらどうしてあんなに意地悪されたかわからなかった。
最近のエリオットは本物なのかと不思議に思いながら教室に足を進めた。
***
生誕祭のためイナベラは男爵領に帰ってきた。
白く染まったドレスを両親も弟も褒めてくれた。博士やライアンも上出来と笑っていた。
自信がなくても自分の好きな人たちが認めてくれるなら、これでいいと思った。母が作ってくれたコサージュと髪飾りをつけて会場に向かった。
イナベラは視線を集めていた。
華美なドレスの中で真っ白なドレスは人目を引いていた。
大好きな人たちの笑顔を思い出して前を向くことにした。イナベラのドレスは優しさと思いやりにあふれたものだから令嬢らしくあろうと胸を張って喧騒に足を踏み入れた。
エリオットが隣にいなくてもイナベラは令嬢達に声をかけられるのはわかっていた。
「イナベラ様、あら・・」
イナベラは自分に蔑む視線を送る令嬢に微笑んだ。
「ごきげんよう。お恥ずかしながら、自慢のドレスです。ドレスを着こなせない自分に非常に残念ですが」
堂々と微笑むイナベラに令嬢達が嘲笑った。
「そんなドレスが自慢なんて。男爵家は見る目も」
「正しい審査眼を持てないなんて嘆かわしいわ。雑草の次は幽霊かしら」
「ひざ元の花の刺繍も斬新ね。趣味が悪い」
イナベラは令嬢達の言葉に大好きな人達を思い浮かべて耐えた。下を向くことはしなかった。
イナベラに伯爵夫人が近づいてきた。
令嬢達の言葉に穏やかに微笑んで平静を装うイナベラに小さく笑った。
「あら、イナベラ素敵じゃない。よく似合っているわ」
イナベラはエリオットの母親に微笑んで礼をした。
伯爵邸から帰った後もエリオットの母親に誘われて時々お茶を一緒に飲んでいた。ただ使用人達の歓迎にイナベラは引いていた。
「ごきげんよう。伯爵夫人」
伯爵夫人はイナベラのドレスを見つめた。
昔、息子が必死に悩んで贈ったドレスだった。
ドレスが汚れて、イナベラが落ち込んでいるのに何もできないと頭を抱えていた息子を思い浮かべて微笑んだ。息子よりもイナベラのほうが逞しいと思いながら。
「繊細なドレスね。気品があって、刺繍も素晴らしいわ。ひざ元の刺繍は新作のハンカチと同じね」
ライアン以外で貴族に流行るハンカチの製作者を知っているのはエリオットと伯爵夫人だけだった。
イナベラはこのドレスはエリオットのおかげで完成したことに感謝していた。
「エリオット様が貴重な糸をわけてくださったおかげです」
「うちの息子は貴方の贈り物を喜んでたわ。私からもお礼を言うわ」
自分の息子は気持ち悪いくらいにイナベラからの贈り物を喜んでいた。ずっとニヤけている息子に家族は引いていた。使用人は恐怖に震えていた。
「いえ、私にできるお礼はあれくらいしかありません」
仲睦まじい二人の様子にエリオットが不満そうに割り込んだ。
自分よりも早く母親がイナベラを褒めているのが不愉快だった。
「母上、僕より先に褒めないでください」
「遅い貴方が悪いのよ。私にはイナベラが幽霊のようには見えないのよ。私の目がおかしいのかしら」
エリオットはすでに、イナベラが不快な言葉を浴びせられたことに、自分の足止めをした令嬢を恨んだ。場の雰囲気を壊すわけにはいかないので、エリオットは令嬢達の見惚れる微笑みを浮かべた。
「女神にも引けをとらない美しさですね。幽霊さえも引きつけそうな魅力に嫉妬に狂いそうです」
「貴方は常に嫉妬に狂ってるじゃないの。邪魔者は退散するわ。イナベラ、またお茶を飲みにいらっしゃい」
「ありがとうございます。喜んでお伺いさせていただきます」
エリオットは自分の母がイナベラの餌付けに成功したことを知っていた。休みになると母とお茶を飲み、自分にお茶を淹れにくるイナベラを歓迎していた。母にからかわれても協力してもらえることに感謝していた。
今日も母の協力に甘えることにした。
エリオットはイナベラの前に跪いた。
「僕にエスコートをさせていただけませんか」
イナベラは突然、跪いて手を差し出したエリオットに戸惑いながらも手を重ねた。微笑みながら自分の手に口づけをおとしたエリオットに引きながらも、社交用の笑みを浮かべて微笑んだ。
この状況でエリオットを拒絶するなど男爵令嬢にはできなかった。
そしてイナベラは自分の周りの令嬢達をどうしようか迷っていた。
ただエリオットは気にしなかった。イナベラの瞳を見つめて微笑みかけた。
「白いドレス姿も美しいね。前のドレスも良かったけど引けを取らない。華美なドレスよりもイナベラの良さが引き立つよ。君の為だけのドレスのようだ」
イナベラは隣で自分のことを褒め続けるエリオットに戸惑っていた。大事なドレスが褒められるのは嬉しかった。ただ過剰な褒め言葉にどうすればいいかわからなかった。
イナベラは意地悪ややっかみには慣れていても、褒め言葉には免疫がなかった。
エリオットに戸惑うイナベラに救世主が現れた。
「愚弟、イナベラ嬢が引いている。口説くならちゃんと表情を見て口説け。困惑させるな。可哀想に。いつも弟がすまない。迷惑だったらいつでも俺のとこにおいで」
「兄上は他の令嬢にしてください。イナベラは駄目。絶対に」
「お前さ独占欲丸出しにする前にやることあるだろうが。」
「大丈夫。選択肢なんて与える気ないから。他は全部潰す。どんな手を使っても」
残念ながら救世主ではなかった。褒め言葉は止まっても兄弟喧嘩を始めたエリオット達にイナベラは引いていた。
この訳のわからない状況から逃げたかった。
一人の令嬢がイナベラの前に進みでて睨みつけた。
「イナベラ様、いつも否定されますがはっきりさせてくださいませ。貴方の行動は誤解を招きます」
「はい?」
「貴方はエリオット様のなんですか?」
エリオット達の兄弟喧嘩が止まった。
イナベラは何度か瞬きをして、クラスメイトの質問の意図を理解した。
「私はエリオット様の小間使いです。それ以上でもそれ以下でもありません」
一部から噴き出す音が聞こえた。エリオットは無言だった。
相変わらず視線を集めていた。令嬢達もイナベラの迷いのない言葉に困惑していた。誰も予想していない答えだった。
イナベラに残された選択肢は一つだけだった。
「失礼します」
礼をしてエリオットの手を放して立ち去ろうとするイナベラを我に返ったエリオットが腰を抱いた。
「お前、恥ずかしいな」
「兄上、黙ってて。ゆっくり話を聞きたいけど、そろそろ陛下が」
逃亡に失敗したイナベラが困惑した笑みを浮かべていた。上位貴族も多いこの場でエリオットはイナベラは傍から離すつもりはなかった。自分より高位のものに見初められるのを避けたかった。
イナベラは会いたい人もいなかったのでエリオットの隣で静かにしていることにした。もうヤケになっていた。
イナベラはエリオットの横でドレスを褒められ、好意的に自分に話しかける上位貴族の令嬢に戸惑っていた。
ライアンはイナベラのハンカチを上位貴族に売っていた。オーダーメイドの入手困難のハンカチと同じ刺繍をあしらったイナベラのドレスは興味を引いていた。そして容姿端麗なエリオットの隣にいても見劣りしないイナベラも人目を引いていた。男爵令嬢だろうと美しい者を愛でたいことには変わらなかった。ライアンは遠目で戸惑っている友人を愉快に見守っていた。またイナベラのドレスが流行すると踏んで準備を整えていた。
エリオットは社交になれないイナベラの傍でフォローしていた。ただ外国の貴族には怯えずに和気あいあいと話すイナベラに驚いていた。
「イナベラ、外国語が話せるの?」
「博士が教えてくれました」
話せる言葉を数えて指を折る姿にエリオットの兄が怪しく笑った。伯爵家に外国語に優れた者はいなかった。イナベラは寒気がした。震えるイナベラにエリオットが上着をかけた。それでも寒気は止まらなかった。
イナベラはエリオットだけでなく兄にまで目をつけられたことは知らなかった。
イナベラは生誕祭が無事に終わったことにほっと息をついた。
ただこの日からなぜかエリオットの家の夜会に頻繁に招待される日々が待っていることも知らなかった。
***
家に帰ったイナベラはベンの剣術を見学していた。
ライアンが紹介してくれた指導騎士は優しかった。楽しそうに剣術を学ぶベンを見ながら、ライアンに感謝していた。そのため、ライアンが願うならどんな刺繍もした。何に使うかわからないものにも。
謎の大きい布に刺繍を施した。博士は自分の薬草園が作業場になっていることに気付いても何も言わなかった。無関心なライアンと一人ぼっちのイナベラという手のかかる生徒が楽しそうにしているならいいことにした。博士は引退した教師だった。博士が理事長ということはライアンだけが知っていた。
***
イナベラはエリオットの家の夜会に頻繁に呼ばれていた。
頻繁すぎて困ったことが起きていた。時々ならドレスをアレンジできた。月に2回出ていた夜会が週に1回となると勝手が変わってしまった。毎回ドレスのアレンジに頭を抱えていた。
イナベラはエリオットの母と一緒にお茶を飲んでいた。エリオットの母は博識で物腰柔らかなイナベラを気に入っていた。イナベラはお茶が終わると衣装部屋に案内されて困惑していた。
気付くとドレスを着ており、飾りつけられていた。
「伯爵夫人、これは」
「私が若い頃に着ていたドレスなの。でもうちには娘はいないのよ。うちの夜会に出る時だけは、私に見立てさせてくれないかしら?」
「お気持ちは嬉しいんですが、もし汚してしまったらと思うと」
「着ないんだから、汚れてもいいわ。むしろあげるわ」
「お気持ちだけで」
「それなら、私に付き合って。」
輝いた目で見つめられてイナベラは拒否することなどできなかった。よろしくお願いしますと頭をさげると伯爵夫人は優雅に微笑んだ。
実はエリオット達がイナベラのためにドレスを仕立てていることは気付かなかった。
伯爵夫人もエリオットもイナベラを自分好みに着飾ることを楽しんでした。使用人は主達の機嫌を良くしてくれるイナベラに感謝していた。伯爵は妻と息子の機嫌が良いなら多少の散財など気にしなかった。頻繁に伯爵家の夜会に参加したことで、イナベラはさらにエリオットの婚約者という誤解を受けることになるとは思ってもいなかった。
伯爵は妻と息子たちに気に入られた哀れな令嬢を申しわけなさそうに見守っていた。そして嫁いだら、イナベラは自分と同じ振り回されて苦労することになるとわかっているからこそ楽観できなかった。
息子にはイナベラと男爵家の了解があれば婚約を許すと伝えていた。イナベラが逃げられるように願うか息子を応援するか伯爵は悩んでいた。
イナベラは侍女に頼まれエリオットにお茶出すのも日課だった。エリオットはイナベラの訪問を笑みを浮かべて歓迎した。イナベラは入室しても怖い視線が向けられないことに安堵していた。
いつもエリオットの休憩に付き合わされていた。休憩が終わり立ち去ろうとすると、刺繍を頼まれたので、椅子に座って作業をしていた。
刺繍をおえるとエリオットがいらないからといつも余りの布と糸を贈ってくれた。ただ毎回貰うわけにはいかなかった。
「エリオット様、頂きすぎです。こんなに貴重なものはいただけません」
「うちにあっても使わないから」
「でしたら、この残りの材料を次回渡してください」
受け取らないイナベラにエリオットは本心を伝えることにした。本当は贈ると喜ぶ顔がみたいだけだった。それではイナベラが受け入れないことは知っていた。
「イナベラは糸や布があると、僕に色々作ってくれるだろう?それが嬉しいんだ。だから受け取ってほしい。こないだの筆箱も有り難く使わせてもらっている」
「言っていただければいくらでも作りますよ」
「イナベラが僕のために作ってくれることが嬉しいんだよ」
「エリオット様はかわってますね」
よくわからないが、エリオットが譲らないのでありがたく受け取ることにした。イナベラとしても、材料が手に入るのはありがたかった。
エリオットは大事に糸を胸に抱いているイナベラに機嫌を良くしていた。
使用人達は荒れると怖いエリオットの穏やかな様子に早くイナベラが嫁いでくれることを祈っていた。
***
イナベラは相変わらずやっかみを受けながら生活をしていた。
ただ前よりも回数は減っていた。休み時間は読書をしながら過ごしていた。最近は自分の物を取り上げられることがないので安心していた。
「イナベラ様、エリオット様の小間使いとは本当ですか?」
「はい。本当です」
「でしたら協力してください」
初めて言われる言葉に首を傾げた。
「協力ですか?」
「エリオット様のことを教えてください」
イナベラは残念ながらエリオットのことを全然知らなかった。
「私、エリオット様と親しくないので、よくわからないですが」
「まぁ!?」
非難の声があがった。
「何をお知りになりたいんですか?」
イナベラに答えられることは一つもなかった。
イナベラは令嬢の知りたいことが多すぎてため息を飲み込んだ。覚えきれないので、紙に書き込んだ。
弱小男爵令嬢には拒否権はないのでエリオットが教えてくれなければエリオットの母に相談することにした。
お昼休みに珍しく饒舌で自分の事を質問してくるイナベラにエリオットは上機嫌で答えていた。好きな物や理想の妻、夫婦生活など、イナベラが自分に好意を持ち始めているのではないかと期待していた。その話を聞いた友人は残酷な言葉を告げた。他の令嬢に頼まれたんじゃないかという言葉にエリオットは崩れ落ちそうだった。最近は怯えられてない。ただ好かれているかはわからなかった。なんせイナベラは自分のことを小間使いと言っていた。エリオットは怖くて真意を聞けなかった。
イナベラは解答用紙を令嬢に渡した。令嬢達の満足した様子を見て安堵の息をつき読書をはじめた。




