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8.リタの驕り

リタの回想です。

あたしはリタ=フォン=ホーネ=ジョルカエフ。れっきとした男爵令嬢よ。


この世界が大好きな乙女ゲーム『沈丁花が散る前に』の世界だと気がついたのは5歳の時。今のパパに会った時だった。そこであたしがジョルカエフ男爵の娘だと分かったの。それで気がついた。あたしはヒロインに転生したんだって。この世界はあたしのもの。あたしが幸せになるために作られた世界。ああ、なんて幸せなんだろう。神様ありがとう。


このゲームの攻略対象は全部で4人。

1人目はこの国の第2王子ジュラルディン殿下。とある侯爵令嬢と婚約しているけれど、その仲は冷えきっていて仮初めのようなもの。政略結婚とはそういうものだって言われればそうなんだけどさ。野心溢れるお母様との仲が上手くいっていないこともあって殿下は愛情に飢えている。

2人目は宰相子息で公爵継嗣のリィンジーク。国政にかかりきりで領地と家族を顧みない父親と、着飾ることにしか興味がない母親。そんな両親の元でまともに育ったリィンジークは、荒れ果てていく領地に心を痛める。公爵継嗣としてできることをしようとするけど上手くいかずに苦しんでいるのよね。

3人目は王軍第1師団長子息のヴァルター。侯爵家の三男坊。上に優秀過ぎる兄が2人いて、兄達と常に比べられて卑屈になってる。ヴァルターにはヴァルターなりの良さがあるのに皆節穴よね。彼は魔法が得意なんだからそっちの道へ進めるように応援してあげればいいのに。

4人目は神官長子息のザムエル。なんか誰かに似た響きの名前よね。ザムエルは教会が国政に強く関わる権限を持っていることを良く思っていない。でも、神官長という教会のトップの息子としてそんなことを思っているとは言えなくて悩んでいる。


乙女ゲームの攻略対象だけあって4人の容姿はとても整っている。その中でもあたしが一番好きなのはリィンジーク。あのネオンブルーの瞳に見つめられるともうダメ。天にも昇るような気持ちになる。

あ、でも他の3人もちゃんと好きだからね!皆あたしが救ってあげるから待ってて!


今のパパはなんというか凄く面倒くさい。12歳になったら王立学院に通うんだから貴族令嬢として恥ずかしくないようにしっかり勉強しろってうるさいの。でも、お母さんはありのままのあたしでいいじゃないって言ってくれる。流石お母さんは分かってるよね。そう、あたしは今のままでいいの。この性格のあたしだけがあの4人を救えるんだから。だから邪魔しないでよね、パパ。


王立学院に入学して分かったことがある。それはリィンジークのこと。あたしより3歳年上で学院にいなかった。一番最初に会うのが彼だから張り切ってたのに!しかも、色んな人にリィンジークについて聞いてみたらシナリオとは全然違う人だった。もしかして同姓同名の別人……?でも、宰相子息で公爵継嗣といったら彼しかいない。一体どういうことよ?

リィンジークのことはモヤモヤしたけど、他の3人はシナリオ通りだったからすぐに気にならなくなった。


シルビアも会ってみたらシナリオとは全然違う人だった。シナリオでは典型的な我儘令嬢って感じだったけど、全然そんなことないの。誰に聞いてもジュラルディン殿下に相応しい婚約者だって言う。

でもあたしは知ってる。シルビアは悪役令嬢。皆シルビアの外面に騙されてるのよ。だって、あたしが殿下と親しくなってきたらすぐに嫌がらせが始まったんだもん。これも絶対シルビアの指示よね。


卒業までの3年間、あたしは数々の嫌がらせに耐えた。そして殿下達との仲を深めていった。

そして、いよいよ断罪イベントがやってきた。リィンジークは手に入らなかったけど、他の3人はもうあたしのもの。これで勝った!そう思った。


なのに。


シナリオになかったイベントが発生した。パーティーに国王陛下達が乱入してきたの。そしてあたしが悪いって言った。婚約者のいる殿下に近づいたあたしが悪いんだって。なんであたしが責められなきゃならないのよ!悪いのはきちんと殿下を愛さなかったシルビアでしょ!?


リィンジークの妹クリスティーナもあたしが悪いって言った。それにカッとなって()()()()()()()()毒を使った魔法を放ってしまった。クリスティーナを襲うはずだったけど、咄嗟に妹を庇ったリィンジークが怪我をしてしまった。殿下があたしに何か言ってる。


あたしの意識はそこで途切れた。

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