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7.シルビアの想い

シルビアが語りたいそうです。

わたくしはシルビア=フォン=ゾエ=ヴィアゼムスキー。フェーゲライン王国のヴィアゼムスキー侯爵家の長女として生を受けました。


5歳の時にこの国の第2王子であるジュラルディン殿下にお会いして、ここが生前にやり込んでいた乙女ゲーム『沈丁花が散る前に』の世界だと気がついたのです。

その後シナリオ通りに攻略対象の方々とお会いしましたが、 1人だけ違う方がいました。ローゼンフェルト公爵家の嫡男、リィンジーク様です。彼はシナリオ通りならわたくしと同い年のはず。ですが実際には3歳年上で、わたくしは妹君のクリスティーナ様と同い年でした。既にジュラルディン殿下の婚約者となっていたわたくしは、クリスティーナ様とはすぐに親しくなれましたが、婚約のことを気にしたのかリィンジーク様とは当たり障りのない会話しかできませんでした。


わたくしはそのことを少し残念に思うと同時にとても安堵しました。たった一つとはいえシナリオとの違いを見つけられたのです。もしかするとシナリオのような破滅ENDをむかえずに済むのではないかと思いました。


王子妃としての教育は、一般庶民として生きてきた前世の記憶があるわたくしには想像を絶するものでした。野心家のマルティデ妃との関係もさることながら、殿下との仲がなかなか縮まらないことはわたくしにとってとても負担となりました。

夫婦とは支えあって生きていくもの。そんな両親を見て育ったわたくしは、政略結婚といえども殿下とそんな仲がいずれは築けるだろうと信じていました。


前世の常識と貴族としての常識の狭間で苦しむわたくしの唯一の救いはクリスティーナ様との文通でした。クリスティーナ様の文面から分かるリィンジーク様はわたくしの知るシナリオのお方とは全く違いました。ご家族も同様です。領政も先代公爵夫妻がなされていてとても立派なものでした。たまにお会いする茶会でお話してみても同じです。それに、リィンジーク様の領政のなさりようはどこか日本人を彷彿とさせるものがあったのです。

そこでわたくしは気づきました。わたくしという例があるのですから、他にも転生者の方がいてもおかしくはないのではないかと。わたくしは前世で乙女ゲーム以外にも異世界転生物の小説も読み漁っていました。なので、ヒロインである方も転生者である場合があることは知っています。この時点で転生者は2人存在することになります。ならばもう1人くらいいてもおかしくはないと考えました。

ただ、リィンジーク様にお尋ねすることはできませんでした。頭のおかしい人間だと思われたくなかったのです。


そして始まった学院生活。シナリオ通りにジョルカエフ男爵令嬢であるリタ様とお会いしました。リタ様はなんというか……とても酷い方でしたわ。貴族令嬢としての言動が全く身に付いていないのです。この世に生を受けて12年も経っているというのに一体何をなさっていたのでしょうか。ジョルカエフ男爵自身は真っ当な方とお聞きしていますのに。

それでも殿下や側近の方々はリタ様に傾倒されていきました。貴族令嬢らしからぬリタ様がそんなに新鮮だったのでしょうか。わたくしには理解できません。


学院の卒業パーティーの日、わたくしはシナリオ通りに殿下から婚約破棄を突き付けられました。常識的に考えて有り得ない事態です。シナリオを知っているといってもまさか本当に起こりうるとは思いませんでした。王侯貴族の婚姻の裁量は国王陛下のみにあります。そんな当たり前のことさえお忘れになるほど殿下はリタ様に惚れ込んでいらっしゃるのでしょうか。


その後、お父様から殿下とは婚約破棄ではなく婚約解消になったとお聞きしました。そして、リィンジーク様がお怪我をなさったとも。この件に無関係で、しかも格上の公爵継嗣を攻撃するなど大それたことです。リィンジーク様はただの公爵継嗣ではありません。筆頭貴族家継嗣です。リタ様はその場で処刑されたとのことですが、当然の処置ですわね。


リタ様のことはともかくとして、問題はリィンジーク様ですわ。わたくしのせいでお怪我をなさったも同然ですから、一度お見舞いに伺いませんと。

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