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6.リィンジークの考察

リィンジークが語ります。

私はリィンジーク=フォン=アルミン=ローゼンフェルト。ローゼンフェルト公爵家継嗣だ。ローゼンフェルト家は歴代当主が代々宰相を務めてきた名門である。


私にリィンジークではない別の記憶があると気がついたのは3歳の時だ。ここではない別の世界のニホンという国で生まれた育った。性別は男。その頃の自分の名前や家族構成等は覚えていない。ただその世界で生きてきた記憶だけが私にはあった。

前世の記憶と今生との擦り合わせには非常に手間がかかった。前世の私は今生でいうところの平民。ところが今の私は筆頭貴族家の嫡男。あまりにも違いがありすぎる。


ヴィアゼムスキー侯爵令嬢と初めて会ったのは、妹クリスティーナの5歳のお披露目の茶会の時だ。同じ中立派に属する者として挨拶してきた彼女と妹は同い年ということもあってすぐに打ち解けた。

だが、彼女はこの時既に第2王子の婚約者であったため私は一定の距離をおいていた。


この国には現在3人の王子がいる。正妃の子が1人、別々の側妃の子が1人ずつ。筆頭貴族家である我が家が王位争いにおいて特定の王子に肩入れするのはよろしくない。中立派のトップでもある我が家。父上からも口を酸っぱくして王子やその関係者とは距離をおくように言われていた。仲良くなった妹には悪いが、私がヴィアゼムスキー侯爵令嬢と深く関わることは今後無いだろう。


この国の王侯貴族の令息令嬢には12歳から15歳までの3年間王都の王立学院に通う決まりがある。王立学院は貴族社会の縮図だ。本来の社交界に比べればぬるま湯のような王立学院で卒業後の社交界デビューに向けて身の振り方を学ぶのだ。

私もその決まりに従って3年間は王都で暮らすことになる。王都にある別邸から通学するのだ。

領地に籠って領政について学び、断れない用件でもない限り王都に来なかった結果、私には引きこもりという不名誉な渾名がついた。公爵継嗣としてすべきことをしているだけなのに失礼な話である。


いくら転移魔法が存在して私がそれを使えるといっても、日に何度も使えるようなものでもない。だから必要最低限しか使いたくないし、馬車での移動はもっと面倒だ。

家族は王都暮らしで1人遠く離れた領地で生活していたわけだが、祖父母もいたし別に寂しくはなかった。


私が王立学院に入学した年には最高学年に王太子のヴィルヘルム殿下がいた。

この時、既に公明正大な人格者として謳われていた殿下は己の派閥を上手く制御していた。そんな殿下のことが私は恐ろしかった。欠点がどこにも見えない殿下。この人は本当に人間なのかと疑ったほどだ。


学院を卒業すると正式に領主代行として働くことになった。宰相である父は国政の方で忙しく正直言って領政まで手が回らない。予め言われていたから覚悟はしていたが現実は厳しかった。


周囲の助けを借りながらなんとか形になって3年、久しぶりに王都を訪れる機会がきた。妹クリスティーナの王立学院卒業パーティーにエスコート役で出席することになったのだ。父は当然のことながら、妹の婚約者殿も都合がつかなかったらしい。残念なことだ。


卒業パーティーでは第2王子がやらかした。王侯貴族の婚姻の裁量を持つのは国王陛下のみだというのに、勝手にヴィアゼムスキー侯爵令嬢との婚約を破棄しようとするとは。

ジョルカエフ男爵令嬢の不意打ちの攻撃を受けて倒れてしまったがあれには本当に驚いた。陛下に異議を唱えるだけではなく無関係の人間に攻撃を加えようとするとは思わなかった。


倒れた原因は未知の毒によるものだった。医師の話によれば後遺症は残らないだろうとのことだが……。

母上達にはしきりに大丈夫かと心配された。静養期間がどのくらい必要になるかはわかっていない。もしかすると覚悟をしておく必要があるかもしれないな。

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