大好き5
スキー合宿一日目
*二泊三日です。
「準備ができた奴からバスに乗れー!!!」
先生から合図がかかりみんなそれに従った。
そして、私は準備ができていたので、バスに乗った。
バスの中では、ほとんどの人が席に腰をかけていた。
みんな早いなー。
そして、私の隣の人は寝ていた。
横の髪が顔に少しかかっていてちょっと可愛い。
「剣…寝てるし。」
私は独り言をポロリとこぼした。
残念なようなホッとするような。
複雑な気持ちを胸に秘めた。
「誰のこと言ってんの?」
いきなり剣が尋ねてきた。
私はビクッと体がはねた。
そして、剣のほうに体を震わせながら向いた。
「起きてたの?」
私は目を細めながら尋ねた。
私はちょっとだけムスッとした顔をした。
「百面相?」
剣は首を傾げながら言い放った。
笑った顔が妙にかっこよくてちょっと嫌になった。
「あっそ。」
私はそっけなく言い放った。
いつまでもそっちのほうを向いてると意識しちゃうもん。
「ひどっ。」
剣は口をとがらせながらぼやいた。
こうして、バスが出発した。
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スキー場
私達は着替え終わり、自分達で滑ることになった。
私は中級コースに行った。
私は何でも普通がいいから。
そして、剣はというと…
「ヤッフー!!!」
この通りスポーツ万能なため上級コースで気持ちよさそうに滑っている。
いいなー。
私も滑ってみたいなー。
そう思った私は、無理して上級コースに移動した。
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私は滑り出した。
最初はとても好調に滑れた。
「こんな簡単なんだ。」
私はスキーをあまく見ていた。
後々になってそのことを気が付いた。
「え?」
バサッ・ドッドッドッ・バタッ。
私はその瞬間スキー場の網を越え、森のほうに落ちてしまった。
「そんなー。」
私はそう残念そうぼやいて、登ろうとしたが…
「痛ッ。」
足に激痛を感じた。
ひねっちゃったんだ。
私は足をさすりながら困った。
私は助けを求め叫んだが…
誰も聞こえてないのか誰一人顔を出さない。
「はあ、待つしかないな。」
私はじっと待った。
誰か来ないかなーとスキー場のほうを眺めながら。
寒い。
誰か…
助けて…
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もう日が沈みつつある。
震えが止まらない。
手や足をさすりながら待っていたときだった。
「……ーい……んーー。」
誰かの声が聞こえる。
誰?
私は耳を澄ませた。
すると…
「…んーー……こだーーー。」
聞き覚えのある声だった。
つばを飲み込みもう一回耳を澄ませた。
「あーーーーーーん……。」
私の一番今逢いたい人だ。
来てくれたんだ。
「あーーーーん!!!!」
剣だ。
剣助けて!!!!
叫びたいのに、寒すぎて声が出ない。
剣。
お願い。
気づいて!!!
「杏!!!!」
ギュッ
いきなり後ろから抱きしめられた。
「やっと…見つけた。」
剣は息を切らしながらつぶやいた。
あったかいや。
「冷え切ってんじゃねぇかよ。このバカ!!!滑れない癖にこっちにくんじゃねぇよ!!!」
剣はものすごい大迫力で怒鳴ってきた。
私は涙目になりながら…
「ご…めん…な…さい。」
自分にも聞こえずらい小声で謝った。
心を込めて…
「本当に心配したんだからな。」
私のことをもう一回強く抱きしめてくれた。
強く。
大事に。
私…
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ホテル
「もうー!!心配させないでよ。杏!!!」
逸美が怒りながら怒鳴った。
つばが飛ぶほど強く。
「ごめん。」
私は小さくなりながら謝った。
伝わるように。
「まあ、まあ。天風落ち着け。それにお前もだぞ道妃娑。先生達はみんな気をつけろと言ったはずだぞ。」
先生は優しく私に怒った。
今はその先生の言葉が身にしみた。
「ごめんなさい。」
私はうつむきながら謝った。
涙目になった。
「まあ、言ってもこんなことになるのはわかっていたからな。いいんだが。」
先生は笑いながら言い放った。
先生は誰よりも優しいと今思った。
「でも、心配させたんだからちゃんと謝れよ。」
先生は私の頭をポンポンッと軽く叩いて自分の部屋に入っていってしまった。
「はい。本当にすみませんでした。」
私は深く頭をさげみんなに謝った。
ごめんね。
みんな。
「無事でよかったわ。」
逸美は笑顔で許してくれた。
優しい目をして微笑んでくれた。
「昔と変わらねぇな。」
剣が呆れながら言い放った。
ちょっと怒りながら。
「何が?」
私はちょっとムッとしながら尋ねた。
「いつも俺のまねをしようとするところ。」
剣は笑いながら言い放った。
意地悪な顔をしている。
「まねしようとしてない。」
私は怒りながら言い放った。
眉間にしわを寄せた。
「そうかな?」
剣は意地悪な顔をして首を傾げた。
ちょっとニヤつきながら。
こうして、事件はおさまった。
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みんなはきっと寝たと思う…
何故かって?
今が深夜の二時だから。
私は家以外で寝るのは苦手で今はなかなか寝れない。
私はちょっと外の空気を吸いに外に出ようと思って、部屋の扉をあけた。
『あっ。』
私は向かい側から出てくる人と目が合った。
「何で?」
私と同じような驚き顔の剣に尋ねた。
口が半開きで目を瞬きさせながら。
「そっちこそ。」
剣はおどおどしながら私に返してきた。
はじめてみたような気がするここまで驚いてる顔。
「私は寝れないから。」
私は苦笑いしながらつぶやいた。
うつむきながら。
「俺も。本当に俺ら似てるよな。」
剣はどこかに向かって歩きながら呆れていた。
ちょっと寝癖がついてる髪の毛が可愛く思えた。
「どこ行くの?」
ちょっと気になったので、私は剣に小声で尋ねた。
「外。」
剣は私のほうに振り返りながら言い放った。
微笑んでる剣。
何か久しぶりかも。
「私も行く。」
私は少し先に歩いている剣の隣に走った。
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私と剣は二人で歩いて外に出た。
「寒いね。」
私は手の指先に白い息をあてた。
少しでもあたたかくなるように。
「何でそんな格好できてんだよ。ほらよ。これで寒くないだろう?」
剣は着ていた黒いジャンバーを私にかけてくれた。
昔から着ていたこのジャンバーからは剣の匂いがした。
なんだかこの匂い懐かしい。
「いいよ。そんなことしたら剣が寒いじゃん。」
私は心配顔で剣に言い放った。
剣が私のせいで熱出したりすんのは嫌だよ。
「じゃあ、手。」
剣は手を差し出しながら命令をしたかのような口調だった。
その顔は少し暗くてよく見えなかったけど。
多分頬が赤かったと思う。
「え?」
私は何のことかよくわからなくて一回聞きなおした。
「手、かして。寒い。」
剣はちょっと照れながら言い放った。
まるで犬みたいで愛らしく思えた。
「ぷ、照れてるね。」
私はそう意地悪につぶやきながら剣の手に手を重ねた。
その手があまりにも暖かいから、胸が大きく脈を打った。
この時間がいつまでも続くといいのにな。
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スキー合宿二日目
二日目はスケートをしに氷がはってある池についた。
そこで起きたことは、私にとって、大事なことを気づかせてくれた。
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次に続く…