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大好き  作者: 春月桜
4/12

大好き4

 5、誤解


「杏。おはよう。」


 いきなり声がして、振り返ったら逸美が不気味に笑みを浮かべながら立っていた。


 何でこんなときに…


 私は顔を引きつった。


「お…おはよ。」


 私は目をそらしながらつぶやいた。


 いやだなー。


「ねぇ、杏は千里のこと好きじゃないんだよね?」


 逸美は笑みを浮かべながら尋ねてきた。


 またか。


 結局剣のことを諦めないんだ。


「う…うん。」


 私はどうしてこんな意気地が無いんだろう。


 私はつくづく思う。


 意気地なしだと。


 ちゃんと言えばいいじゃない。


「じゃあ、何で公園で抱き合ってたの?」


 逸美はいきなり顔を変え、怖い顔になった。


 目は鋭く光り。


 声は低くなった。


「え、それは…」


 私が言おうとしたら…


「それを世の中ではたらしっていうだよ?そんなことするのって、千里を好きな人に失礼なんじゃない?」


 逸美は私を睨みながら言い放った。


 冷たい声。


 怖い顔。


「杏がそんな人なんて思わなかった。」


 逸美は警戒の目で私を見つめながら言い放った。


 勝手に決め付けないでよ。


「ちょっ…」


 私の話も聞こうとせずに逸美は行ってしまった。


 私は怒り半分、悲しみ半分の気持ちを抱えながらトボトボ重たい足を動かした。


 これから、どうなるんだろう。


 私は不安になりながら歩き続けた。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


 教室…


 教室で私に近づいてくる人は誰一人いなかった。


 でも、何もいじめなどは無かった。


 それだけは助かったっと思った。


 誰も寄ってこないというのも、つまらないものだなと時々思った。


 でも、友達に気を遣わずにいられるというのも、楽といえば楽だから。


 ある意味、私には嬉しいことでもあった。


 でも、剣のことが誤解されたままだと、困る。


 もし、それで私が剣のことを好きって言ったら、どうなることやら。


 私…どうしたらいいんだろう。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


 帰り道…


 私は茜色に染められているアスファルトの道をゆっくり歩いていた。


 寒い風が吹いている。


 その時だった。


「ヨッ!!」


 いきなり後ろから頭を叩かれた。


 体がびくっと反応したものの。


「イタッ…」


 私はそのほうに振り返った。


 私のことをいつもわかってくれる人。


「一緒に帰ろうぜ。」


 その男はいつもと同じ顔の優しい剣だった。


 剣は顔色一つ変わってなかった。


 剣の言葉が体に染み込んで心があたたかくなったような気がした。


「え?」


 私は驚きながら顔をしかめた。


 あまりにも言葉が染みてきて驚きが抑えられなかった。


「え、いいけど。」


 私は答えてしまった。


 後で、後悔した。


 こんなことしなきゃよかったと。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


 翌日…


 私は学校についた。


 逸美と何人かの女子が怖い顔をしながら寄ってきた。


「好きじゃねぇ男に手出してんじゃねぇよ!!!」


 いきなり一人の女子が私の頬を叩いてきた。


「いやっ!!!」


 ガシッ


 私が叫んでも頬にあたるものは一つも無かった。


 何で?


「?」


 私は閉じていた目をゆっくり開けた。


 その目に映ったのは女子の手首を掴んでいる、剣の凛々しい背中だった。


 そのとき思った。


 いつでも傍にいてくれたんだ。


「俺がこいつを勝手に好きなだけなんだよ!!!何で、こいつが責められなきゃいけねぇんだよ!!!」


 剣は怖い顔をしながら叫んだ。


 剣。


「だ、だって…千里君に。」


 一人の女子はタジタジになりながらぼやいていた。


 目を逸らしながら。


「こう仕向けたのはお前だろ?天風。」


 剣はものすごい怖い顔をしながら逸美に尋ねた。


 声がかなり低くて何か圧力を感じた。


「そうだったら何?」


 逸美は不気味な笑みを浮かべながらささやいた。


 首を傾げながらえらそうに登場してきた。


 目が笑ってなかった。


「友達を道具にするってお前、最低な奴だな?」


 剣は眉間にしわを寄せ逸美を睨んだ。


「そうかしら、友達は使うためにあるものなんじゃないの?」


 鳥肌が立った。


 ありえない。


 悲しいよ。


 私は泣きそうになりながら、歯を食いしばった。


「もう。逸美には、友達なんていらないね。」


 私は気づいたら泣いていたのがこのはっした言葉でわかった。


 声は震え、声は小さくて。


 頬を伝った冷たい悲しみ。


『……。』


 みんなは驚きながら私の言葉をきいて、黙っていた。


「逸美。バカなんじゃないの?いつか友達いなくなるよ?」


 私は一生懸命つぶやいた。


 逸美の心に届くように。


「それが何?」


 逸美はちょっと怒りながら言い放った。


 ちょっと声が震えていた。


「恋愛って無理矢理手に入れたって、面白くないじゃん。楽しくないじゃん。…苦しいじゃん。…悲しいじゃん。好きって気持ちってそういうことなの?」


 私は途切れ途切れになりながら尋ねた。


 だって、あまりにも苦しいから。


 逸美が最後は悲しむだけじゃない。


「余計なお世話よ!!!!」


 逸美は怒鳴ってきた。


 悲しそうな目をして。


「辛かったんだよね?」


 私は逸美に泣きながら近づいた。


 歩きながら思った。


 頑張ってたんだよね?


 自分の気持ち、ずっと我慢してたんだよね?


「何でよ。怒ればいいじゃない。何で…何で?」


 逸美は目から出てくる雫を必死に拭いながら言い放った。


 その泣き顔は見たことが無くて最初は戸惑った。


 でも、その涙でどんぐらい苦しかったのかわかった。


「怒るわけじゃない。あんなに仲良くしてくれたんだから。逸美は逸美だよ?」


 私は逸美を抱きしめた。


 力をこめて。


 ねぇ、逸美。


 私の気持ち届いたよね?


「ごめんね。」


 逸美は小さな小声でつぶやいた。


 消えそうなぐらい小さな声だけど。


 私にはしっかり聞こえたよ。


「大丈夫。」


 こうして、私と逸美は仲直りできた。


 誤解もはれてとても爽快感でいっぱいになった。


 ちょっと大人になれたかな?


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


 6、スキー合宿


 この学校の二年生はスキー合宿に必ず行く。


「楽しみだね。」


 一人の女子が私に楽しそうに頬を赤らめてきた。


 きっとよっぽど楽しみなのだろう。


「うん。そうだね。」


 私は笑顔で応えた。


 そしてもう一つ、この学校のスキー合宿で有名なものがある。


 なんとバス席が男子と女子で座る。


「女子と男子で二人組みつくれー!!!!」


 先生が生徒に大迫力で声をかけた。


 でもその迫力に負けないぐらいに。


『ええーーーーーーー!!!!』


 生徒のほとんどが大声を上げてブーイングをした。


「はやくしろ!!!!」


 先生はその声にお構いなしに怒鳴った。


『はい。』


 みんなシュンッとしながら返事をして組を作ることにした。


 もちろんカップルは二人が一致する。


 でも、他はみんなくじ引きになる。


 その時だった。


 私がくじを引こうとした瞬間…


「お前は俺と。」


 いきなり剣が私の手を握ってきてその手を引っ張った。


「…剣!!!!」


 私は驚きながら思わず大声を上げてしまった。


 だって、小学校から繋いだことが無い手だったから。


 大きくて私の手をすっぽりと埋めてしまう。


「そんなに驚かなくても…。」


 剣は焦りながらつぶやいた。


 ちょっと頬を赤く染めながら。


「ご、ごめん。だって…。」


 私は黙ってしまった。


 だって、言えるわけないじゃん。


 「カップルじゃないのに」なんて恥ずかしくって。


「何だよ。俺じゃ不安か?」


 剣は心配そうに私の顔を覗き込んできた。


 顔が近い!!!!


「いや。不安ではないよ。」


 私は声を裏返しながら首を横にふった。


「?」


 剣は顔を傾げ私のことを見つめた。


 どうしよう。


 私、変なふうに意識しちゃうよ。


 私は、赤くなっているであろう頬をおさえながら困っていた。


 スキー合宿って…


 大変…


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


 私は、思わなかったんだ。


 あの剣が傷をおってしまうなんて。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


 次に続く…













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