大好き2
3、本当の気持ち
ガンッ!!!!
思いっきり嫌な音が教室中に響く。
私が目にした光景はこの場から逃げ出したくなるほど怖いと感じるものだった。
「啓太君!!!!」
私は口の中が切れて血を流しながら倒れている啓太君に寄り添った。
「え?」
「何あれ?」
「何が起こったの?」
次々にこそこそとざわめきが起こった。
キッ
私は剣を睨んだ。
「最低。」
私は潤んだ瞳で剣を睨みながらつぶやいた。
本当はこんな目したくなかったよ。
「……。」
剣は拳を握りながら黙っていた。
「とりあえず保健室に行こう。啓太君。」
私は啓太君にささやいた。
わからない気持ちを抱えながら。
「うん。」
啓太君は殴られたほうの頬をおさえながら頷いた。
ガラッ
私は啓太君と教室を出て保健室に向かった。
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剣
俺は何やってるんだろう?
何であんなやつにそこまで嫉妬する?
ありえねぇー。
かっこわる。
俺はそんなことばかり考えていた。
「ねぇ、何で啓太のこと殴ったの?」
いきなり杏の仲が良い天風に尋ねられた。
「何でお前なんかに言わなきゃいけないんだよ。」
俺は目をそらしながら怒り、言い放った。
「私は杏の親友としてきく権利があるの!!!」
天風はない胸を張りながらいばった。
「ふっ。バカじゃねぇの?」
俺は天風に鼻で笑いながらバカにした。
「どーせ、杏のことでしょ。」
天風は呆れながらつぶやいた。
「どうして。」
俺は驚き顔でつぶやいた。
「わかるよ。ずっと見てたんだもん。私、あんたのことが好きだから。わかるの。あんたが杏のことを好きってことが。苦しくて見てられないよ。」
天風は俺を真剣に見つめながら言い放った。
「は?」
俺は驚きを隠しきれず驚いていた。
「何で、杏なのよ。」
天風は切なそうな顔を残して教室を出て行った。
「俺が聞きたいよ。」
俺は頭をおさえながら考えた。
どうしてうまくいかないんだろう?
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「大丈夫よ。すり傷だけだから。さ、もうちょっとでチャイムがなるから。教室に戻りなさい。」
保健室の先生が手をふりながら言い放った。
「はい。ありがとうございました。」
啓太君と私はお礼を言って保健室を出た。
「大丈夫?」
私は啓太君の顔を覗き込みながら尋ねた。
「うーん。杏が俺にキスしてくれたら治るかな?」
啓太君は私に顔を近づきながら言い放った。
「ちょっ、元気なんじゃん。」
私は啓太君の顔から遠ざかりながらつぶやいた。
「あは、ばれた?ごめんねー。」
(軽いな。)
今、私何考えた?
今、変なこと考えたよね。
何で?
啓太君だよ?
何でだろう。
今、啓太君のこと気持ち悪いって思っちゃった。
どうしよう。
啓太君からどんどん気持ちが遠ざかる。
ねぇ、やだよ。
誰か。
助けて。
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夕方…
キーンコーンカーンコーン…
帰りのチャイムが鳴る。
窓の外は綺麗な茜色に染まっている。
私は浮かない顔をしていた。
帰りたくない。
だって、帰ったらまた両親が喧嘩しているんだもの。
「帰ろうか?」
啓太君は相変わらず能天気。
だって、私の事情なんて知らないもの。
「うん。」
と、応えてしまうのが現実。
スタ・スタ・スタ・スタ・スタ…
私達は歩く。
歩幅をあわせて。
ねぇ、啓太君本当に私のこと好き?
聞いたら、ちゃんと言ってくれる?
でも、ごめん。
もう耐えられないかもしれない。
「今日さ、どっかよっていかない?」
啓太君がいきなり尋ねてきた。
「え?」
「だめ?」
「…い、いいよ。」
私はびっくりしながら応えてしまった。
後に後悔することを余地もせずに。
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暗い夜道に変わった。
そんな道路を、ゆっくり歩いている。
そして、啓太君が立ち止まった場所は…
公園だった。
「啓太君?」
私は止まっている啓太君に尋ねた。
その時だった。
バサッ
私はいきなり公園の冷たい地面に押し倒された。
「お前は元々このために付き合ったんだよ。まったく、苦労させるよな?お前って。」
啓太君は今までに見たこと無い顔をしながら言い放った。
「じゃあ、騙して…」
私は力が抜けかけながらぼやいた。
頬を伝う涙。
なんて冷たいんだろう。
体は冷え切って震えが止まらない。
怖い。
「当たり前だろう。お前なんかそうじゃなきゃ付き合わねぇよ。」
啓太君は不気味に笑みをこぼしながら言い放った。
「最低。」
私は叫ぶ気にもなれなかった。
最低。
誰か助けて。
この闇の世界から。
私を救って。
その時だった。
「そいつに触れんじゃねぇ!!!!!!!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
ガンッ
聞き覚えのある声をしている人は啓太君をいきなり殴った。
「そういうこったろうと思ったよ。お前ここら辺じゃ有名だもんな?性格の悪さで。」
聞き覚えのある声はやっぱり剣だった。
息を切らせながら怖い顔をしている。
何で?
何で剣はそこまでしてくれるの?
「ちっ、またお前かよ。お前に二発も殴られるとはな。今日は最悪の日だな。」
啓太君は呆れながら言い放ってきた。
「どっちが最悪だよ。」
剣は啓太君を睨みながら言い放った。
「じゃ、いいや。今日は。また明日ね。杏。」
啓太君の笑みは悪の色に染まっていた。
怖い。
「もう、別れる。」
私は泣きながら震える声でつぶやいた。
「そっか。残念。もう少しでできそうだったのに。まあ、いいよ。お前の他なんていっぱいいるからね。んじゃ、バイバイ。」
啓太君はそう言い残して、公園から足早に出て行った。
ギュッ
「大丈夫か?」
剣は優しく、強く私のことを抱きしめてくれた。
「どうして?剣はずるいよ。」
私は剣の胸に顔を埋めながらぼやいた。
「何が?」
剣は私を抱きしめながら尋ねた。
「どうして私の助けてほしいときにいつも隣にいるのよ。」
私は剣の背中に手を回しながらぼやいた。
「いつもお前をみてるからに決まってるじゃん。」
「みてる?」
「そう。好きなんだ。お前のこと。小さい頃からずっと。」
「え?」
私は思わず顔をあげたとき…
私の唇に剣の唇が重なった。
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このとき気づいていなかったんだ。
自分の手からこぼれ落ちる愛の欠片の音がわからなかった。
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次に続く…