大好き12
「お前がいなかったら俺はどうなってんだよ??!!!しっかりしろ杏!!!!」
剣が叫んだ。
剣。
助けて。
苦しいよ。
悲しいよ。
私は泣きながら剣の袖を掴んだ。
力いっぱい。
今は息ができないぐらい。
苦しくて言葉がでなかった。
「とりあえず、救急車を呼ぼう。」
そう剣が優しくささやいてくれたので。
私はただうなずくことしかできなかった。
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病院…
お母さんとお父さんは別々の病室に寝かせた。
別々にしないとまた何を起こすかわからないので。
私と剣はお母さんの病室にいた。
お父さんのほうは医者の先生が治療をしていた。
お母さんがゆっくり目を開いた。
意識が戻ったみたい。
よかった。
私はホッとしたため息をついた。
「お母さん、私が誰だかわかる?」
私はお母さんに意識があるか尋ねた。
優しく。
伝わるように。
落ち着いて。
「ええ。私の大切な子供の杏よ。」
お母さんはそう言って私の頭を撫でてくれた。
私は久しぶりにお母さんのぬくもりを感じて、また涙をこぼしていた。
ねぇ、お母さんはどう思ってるの?
「ねぇ、お母さん。私がいなければこんなことにならなかったの?」
私はお母さんに尋ねた。
胸がすごく痛かった。
胸が締め付けられる思いを感じた。
「誰がそんなこと言ったの???!!!!」
お母さんは目を見開き、すごく怖い顔をした。
きっと心の何かに引っかかったのだろう。
「お父さん。」
私は小さい声でつぶやいた。
言ったらまた何かなりそうで怖いけど。
正直に言い放った。
「そんなわけないじゃない。私の大切な大切な大事な子供よ。」
そうお母さんは言って、私のことを抱きしめてくれた。
お母さんの体はあたたかくてすごい久しぶりな香りを感じた。
心が何かを取り戻した感覚になった。
「ちゃんと、話すわ。私とお父さんは最初は友達だったの。でもある日、急に気持ち悪くなって、はいちゃっって。あまりにもいきなりだったからおかしいってことになって病院に行ったら子供ができていてね。その子供は誰の子?ってなって。そしたら、お父さんとの子供だったの。お父さんは最初は結婚なんてするつもりじゃなかったのよ。でも、あなたができたからって結婚したの。」
お母さんは苦しそうに話してくれた。
やっとわかった真相。
毎日の喧嘩の種。
「そう…だったんだ。」
私は落ち込んだ。
私のせいで、お母さんとお父さんは喧嘩をするはめになってしまったから。
気持ちが重くなるのを感じた。
「でも、決して、あなたがいなかったほうがよかったってなったら。私が今頃どうなってたのかしら。あなたが私を救ってくれたのよ?杏。大事な大事な私の娘。」
お母さんはそう言って優しく抱きしめてくれた。
私の心にフワッとあたたかい風がふいたような気がした。
優しくて綺麗であたたかい風が。
「お母さん。」
私は泣きながらつぶやいた。
私を必要としてくれたお母さんや剣や、いろんな人に私は感謝の気持ちを抱いた。
「剣君もありがとう。あの時もありがとね。でも、あんまりカッコイイこと言うもんだからびっくりしちゃった。」
お母さんは剣に向かって笑っていた。
ん?
カッコイイことって何?
私は剣のほうを見つめた。
「そ、それは。」
剣はあわてながら言い放った。
明らかに焦っている顔。
なんだろう?
私は首を傾げた。
「いいじゃない。もう付き合ってるんでしょ。」
お母さんにはお見通しだったみたいで。
その時のことを話し始めた。
「小さい頃に木登りして落ちたときあったでしょ?」
あ、そんなことがあったような気がする。
私は思い出しながら…
「うん。」
力強くうなずいた。
ちょうど最近に夢を見た気がする。
「そのときに杏が骨折してね。もしかしたら痕が残るかもしれないって言われてね。私が着替えの服を持ってこようと帰ろうとしたときに病院の出入り口に剣君が立っててね。いきなり「もし、痕に残ることになっても、俺が責任をとります。」って言ってね。すごいなーって感心しちゃったわよ。でも、それが今になってこうだから安心したわ。これからも仲良くお幸せにね。悪魔でも私達みたいにはならないでちょうだいね。」
お母さんは笑ってそう言ってくれた。
でも、微かに寂しそうだった。
「ありがとうございます。」
剣は深くお辞儀をした。
その姿はすごく凛々しくて、カッコイイと私が感心してしまった。
「結婚式が楽しみだわ。」
お母さんは楽しそうに言い放った。
え??!!
「お母さん??!!」
私は頬を赤らめながら言い放った。
そこまでまだ決まってないよ???!!!
私は驚いた。
「冗談よ。」
お母さんは意地悪な顔をしながら笑った。
お母さんと久しぶりに楽しく話した感じ。
すごくあたたかくて優しい気持ちになる。
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数日後…
「これでいいか?」
剣はちょっと照れながら言い放った。
髪をいじりながら不安そうな顔をしている。
「うん。バッチリ。カッコイイよ。」
私は笑顔で剣に言い放った。
だって、本当なんだもん。
「そんな緊張しなくても大丈夫だよ。」
私は剣の背中を軽く叩きながら言い放った。
カレンダーに赤いペンで丸く印をした日が今日。
ちょっと楽しみなんだ。
「緊張するよいくら家族同士で仲がいいからって。普通に言えるわけないだろ?なんて言えばいいんだよ。」
剣はため息をつきながらぼやいていた。
相当緊張してるみたい。
しょうがないなー。
・・・・・・・・・・
「私は娘さんを僕にくださいがいいなー。」
ねぇ、剣。
これからもずっと一緒にいてね。
大好きって気持ちを忘れずに。
剣。
大好きだよ。
終わり…