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大好き  作者: 春月桜
11/12

大好き11

 12、前言撤回


「これでいいだろ?俺のことは諦めてくれ。」


 剣は真剣な眼差しをしながら明日香に言い放った。


 ありがとう。


 剣。


「ずっと好きだった。だから、小さい頃から弓道に入ってた。」


 明日香は泣きながら話してくれた。


 でも、微笑んでいるようにも見えた。


 優しい口調。


 何かスッキリしたらしく。


「でも、もう諦めるしかないわね。私からもおば様達とお母様達には言っておくわ。いつまでもお幸せに。さよなら。」


 明日香はわずかに悲しそうに帰っていった。


 明日香がどんな思いをしてきたかがにじみ出ていた。


 ごめんね。


 明日香。


 私は落ち込みながらそう心の中で謝った。


 でも、明日香のおかげで、正直になれたよ。


「はあー疲れた。」


 剣はそうつぶやきながら座り込んでしまった。


 あんなに神経使ったもんね。


 そりゃそうだよね。


「大丈夫?ごめん。私のせいで。」


 私は豆ができている剣の手を握り締めた。


 大きくてあたたかい。


 剣の手。


 少しゴツゴツしていて男の子の力強い手。


「大丈夫。それより、明日香のことちゃんと話してなかったな。」


 剣はちょっと苦しそうに話し始めた。


 きっと話したくなかったよね。


「明日香と俺は最初、弓道クラブで出会ったんだ。俺小さい頃弓道クラブ入ってたんだよ。その弓道クラブに明日香は途中で入って来た。なのに、すごく呑み込みが早くてさ。すげなーって思って声をかけたんだ。これが、多分この原因になったんだと思うんだけどさ。声かけたらさ、俺にどんどん近づいてきてさ。毎日毎日、話しかけられるようになってな?終いには、母さんが明日香の母親とお茶したみたいでさ。仲良くなっちゃって。それで、仲がいいなら大人になったら結婚させようってことになっちゃったらしくてさ。それで、話がどんどん進んじゃってさ。でも、明日香の父親の関係でアメリカに転勤することになって。それで、やっと開放されてたんだけど…やっぱり、帰ってきたな。ごめんな。隠すつもりではなかったんだけど。」


 剣はちょっと心配そうに言い放った。


 その顔でわかった。


 長年苦しんでいたんだね。


「大丈夫。」


 私はスッキリした顔で言い放った。


 やっとわかったよ。


 剣と明日香の関係。


 よかったよ。


 聞けて。


「ありがとうね。剣。」


 私はちょっと頬を赤らめながらつぶやいた。


 だって、嬉しいんだもん。


 これからも剣の隣にいれる。


「お前って、小さいときからのその癖可愛いよな。」


 剣は笑いながら言い放った。


 え?


 今言わなくてもー!!


 私はもっと顔が赤くなった。


「バ、バカにしないでよ!!!」


 そう言いながら内心すごく嬉しいんだ。


 剣の笑っている顔をまた見れるから。


 また、こう言ってくれると思うとね。


 心が弾むんだ。


 こうして、一緒に帰った。


 もっと剣のことが知りたいよ。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


 翌日…


 ブー・ブー・ブー…


 いきなり起きる前の時間に携帯の(電話)バイブが鳴った。


 こんな朝早くに何?


 そう思い目をこすりながら、電話に出た。


「もしもし。」


 私はあくびをしながらつぶやいた。


 目が開かない。


 こんなに朝早く電話してくるのはただ一人。


〔もしもし?早く着替えて、カーテンあけろ。そしたら話す。〕


 ガチャンッ


 やっぱり剣だ。


 剣はそう言い残して電話を切った。


 いきなり何?


 私はムカつきながらも…


 あわてながら仕度をした。


 いつも、乗せられるんだよな。


 私は自分で自分に呆れていた。


 そして制服に着替え、カーテンをあけた。


 窓の先には剣が手を振っている。


 ガラッ


 私は窓を開けた。


「いきなりな、キャッ!!」


 私はいきなり手を引かれて、剣の部屋に連れ込まれた。


 一瞬死という文字が見えた!!!!


 怖かった。


 私は泣きそうになったが我慢をした。


「な、何?」


 私は剣の顔のほうに目を向けた。


 剣の表情がよく見える。


 何か安心する。


「俺がこれから、母さんに言いに行くから。ドアに隠れて聞いてろよ?じゃ、行くぞ。」


 剣はそう言って私の手を握って、階段を下りた。


 いきなり何??!!!


 てゆーか手ー!!!


 ヤバイってー!!!


 私は意識が飛びそうになりながらも付いていった。


 私はドアに隠れて、剣はそのままリビングに勢いよく入っていった。


「母さん、前言撤回!!!明日香から聞いたか?」


 剣は単刀直入に言い放っていた。


 バカ…


 私は一瞬ガクッと力が抜けた。


 ちゃんと言おうよ。


 説明しようよ。


 私は剣に呆れていた。


「はいはい。聞いてるから。何でそんなに嬉しそうなの?」


 叔母さんが冷たく尋ねてきた。


 声で呆れているような声をしていた。


 さすが、剣のお母さんだな。


  ↑何が?


「だって、俺明日香のこと好きじゃねぇもん。」


 剣はそう叔母さんに言い残して、リビングから出てきた。


 私は何故か泣いていた。


 何故だか心があたたかくなった。


 剣。


 私は剣のことを見つめた。


 そして、剣は泣いていた私を優しく抱きしめてくれた。


「俺が好きなのはお前だけだから…安心してくれ。」


 剣は優しく囁くようにつぶやいた。


 声が心に響いて、ゆっくりとしみていく。


 この感覚。


 すごく嬉しい。


 今、言わなくちゃ!!


「ねぇ、前言ったこと聞こえた?」


 私は剣を見つめながら尋ねた。


 今言わなくちゃいつ言うっていうのよ。


「は?何それ?」


 剣は首を傾げながら尋ねてきた。


 やっぱり。


 剣のことだから聞こえてないだろうと思った。


「好き。」


 私は小さい声でつぶやいた。


 本当は思いっきり言いたいんだけど。


 恥ずかしいから言えないの。


「何?聞こえない。」


 剣は意地悪そうな顔をしながら言い放った。


 あ、こいつ!!!


 私は顔を赤くした。


「もう!!!わかってるのに。言わせたの?!」


 私はちょっと怒りながら言い放った。


 信じらんない!!!


 意地悪すぎでしょ??!!


「ごめんごめん。でも、ちょっと黙って。」


 剣はそう言うと私の顔に顔を近づけてきた。


 何か近くない?


 私、顔やばくない?


「え?」


「黙れ。」


 そう言って、私の唇と剣の唇は重なった。


 好きになるってこういう感じなんだ。


 あったかくて難しくてすごく心地よくて大切なもの。


 君を好きになってよかった。


 剣。


 ずっと一緒だよ。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


 13、喧嘩のもとは…?


 夜…


「あんたがこんなんだから私もこうなるんでしょ?」


 ガシャン!!!


 何かがわれる音が家中に響く。


「お前がそうなってるのは俺には関係ないだろ??!!!」


 パリーン!!


 さっきのに負けないくらいすごい音が聞こえてきた。


 今日の喧嘩はやけにすごい。


 いろんなものの壊れる音がする。


 怖いような慣れているような。


 私は何故か、自分を孤独に感じる。


 剣、助けて。


 私は携帯を握り締めながらそう願った。


 すると…


 ブー・ブー・ブー…


 メールのバイブが鳴った。


 剣からだった。


 私は急いで携帯を開き、画面を見た。


 −−−剣ーーー


 −−−カーテン開けてーーー


 そう打ってあったので。


 私は…


 シャー…


 カーテンをあけ窓を開けた。


「こっちに来い。」


 剣は優しい微笑みで私に手を差し伸べてくれた。


 ああ、やっぱり。


 私、この人のこと好き。


 何回も実感する。


 この気持ち。


「うん。」


 私はそう頷いて剣の手を握りしめた。


 この手の感触は小さい頃とは違うけど。


 やっと手にいれた幸せだもの。


 いつもより力を込めて握りしめた。


「叔父さんと叔母さん今日すごくない?音がすごい聞こえるんだけど。」


 剣はちょっと困りながら言い放った。


 心配してくれてるんだ。


 剣、ありがとう。


「うん。でも、喧嘩は毎日してるのに離婚はしないんだよね。」


 私は困りながら疑問に思っていた。


 小さい頃から、ずっと聞いてきた喧嘩。


 でも、何故か離婚はしなくて。


 仲がいいのか悪いのかよくわからない状態なのだ。


「確かに。いつも喧嘩してんのにな。喧嘩するほど仲がいいってやつ?」


 剣は首を傾げながら言い放った。


 眉間にしわが寄っていた。


 あんまりこういう顔みたことが無いから、一回だけドキンッと胸が鳴った。


「でも、さすがに今日はちょっと怖い。」


 私は震える手を隠しながらつぶやいた。


 本当は隠していた。


 気づいたら、剣が心配しちゃう。


「我慢しなくていいから。怖いときは怖いって言え。俺が飛んでってやるから。」


 剣はそう言って私のことを強く抱きしめてくれた。


 ばれてたんだね。


 やっぱり剣には隠せないか。


 剣の腕の中はあったかくてすごく落ち着く。


 私は震えがゆっくりとおさまっていった。


「ありがとう……剣?」


 私は剣の顔を見つめて剣を呼んだ。


 こっちを見てっと言いかけるように。


「ん?」


 剣は思ったとおりに私のほうを向いてくれた。


 こんな姿が新鮮で初めて味わう感じがする。


「大好きだよ。」


 私は剣に照れながらつぶやいた。


 だって抑えきれないほど募っていた思いだもの。


 ちゃんと言いたいじゃない。


「お前って本当に可愛いな。」


 剣は笑ってそう言ってくれた。


 剣の顔が優しくて、私はうっとりしてしまった。


 この空気が嬉しい。


 ピタッ


 いきなり音がしなくなった。


「え?音がしなくなった??!!」


 私は驚きながら家のほうを見た。


 いきなりなんで?


 そんな早くまるく収まらないはず。


「本当だ。でもなんかおかしくないか?」


 剣はちょっと怖い顔をしながら言い放った。


 私と同じことを考えていた剣。


 まるで一心同体だね。


 私はちょっと嬉しくなったが、今はおいておくことにした。


「ちょっと様子を見に行こう。」


 剣はそう言って私の部屋に飛びこんだ。


 私もそれに連れられて家に帰った。


 ガチャッ


 リビングのドアを開けたら怖くて声が出なかった。


 血だらけになりながらお父さんがお母さんの首をしめていた。


「やめろー!!!!!」


 剣はそう言いながらお父さんをお母さんから遠ざけた。


 私は座り込んでしまった。


 何で?


「杏?大丈夫か?」


 剣は私を心配してくれた。


 でも、私にはそれが聞こえなくて。


 目の前の光景に目が取られてしまい。


「いや…いや…いや!!!!」


 私は頭を抱えながら叫んだ。


 怖い。


 悲しい。


 苦しい。


 いやだよ。


「落ち着け杏!!!!お前がしっかりしなきゃ叔父さんと叔母さんはどうなんだよ!!」


 剣がそう言ってくれたおかげで私は意識をもどした。


 剣…


 ごめん。


 そうだよ。


 私がしっかりしなきゃ。


「あ、お母さん。」


 私はお母さんに近づいた。


 擦り傷や切り傷がすごくて血だらけになっていた。


 何でこんなになるまで喧嘩なんかすんのよ。


 私はあごに力を込めて歯をくいしばった。


「はあ…はあ…」


 お母さんは息をしていた。


 よかった。


 まだ生きてる。


「剣、お母さんはちゃんと息をしてるわ。」


 私は剣にそう知らせてハンカチで血を拭いた。


 届いたよね。


 剣は力強くうなずいた。


「叔父さん。俺が誰だかわかる?」


 剣はお父さんに尋ねた。


 お父さんは息を切らしながら、目を血走らせていた。


 こ、怖い。


 私は少し震えながらもお父さんのほうを見た。


「お前が生まれなければ…」


 微かな小さい声が発した言葉は…


 私の呼吸を止めた。


「叔父さん??」


 剣が驚きながらとめようとしているらしく。


 お父さんのことを呼んだ。


「お前が生まれなければこんなことにはならなかったんだ!!!!!」


 お父さんは私にそう叫んだ。


 心に重く圧し掛かり。


 呼吸ができなくなった。


「え?」


 私はわけがわからず一言つぶやいた。


 何か言わなきゃ。


 何か言わないと。


「お前があのときにあいつの腹にできてなければこんなことにはならなかったんだ!!!!」


 頬に涙が伝わる。


 冷たい雫が床に一粒落ちた。


 私がいなければこんなことにならなかったの?


「杏?」


 剣がそう囁いてくれたことは私には解らなかった。


 私は光りを失った気持ちになった。


 前が見えないよ。


 誰か、助けて。


「お前さえ…」


 剣はお父さん口をふさいだ。


 剣は今までにない怖い顔でお父さんのことを睨んだ。


「これ以上。杏を苦しませないでください。」


 剣はお父さんにそう言い放って私を抱きしめてくれた。


 剣?


 剣なの?


 ねぇ、つらいよ。


「私がいなければこんなことに…」


 私は放心状態になっていた。


 何がなんだかわからなくなりもう何も考えられなくなった。


「そんなことない。安心しろ。」


 剣は力強く言い放った。


 私の心にしみて。


 もっと涙があふれた。


「だって、お父さんが……私生まれてこなきゃよかった。」


 私は剣の腕に抱きしめられながら、自分の心を見失ってしまった。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


 私はいなかったほうがよかったの?


 剣、私もう生きたくないよ。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 


 次に続く…













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