大好き10
『対決?』
私と剣が一緒に尋ねた。
私は首をかしげ、剣は眉間にしわを寄せた。
「そうよ。剣をかけた、真剣勝負。負けたら、剣のことを諦めるのよ。」
明日香の目は本気なようで、私はつばを飲み込んだ。
何でこうなるのー。
私は心の中で頭をおさえて絶望していた。
「は?お前…」
「黙って!!!!これは私と杏の問題。」
明日香は剣が何か言おうとした口をおさえた。
剣は何を言おうとしたの?
私はそっちのほうが気になった。
「私は諦めない。私が諦めたら…私は何のために日本に帰ってきたのよ!!!」
明日香は泣きそうになりながら怒鳴った。
何か苦しそう。
明日香は一体どんな思いで…
「明日香?」
私は心配しながら明日香の顔を覗き込んだ。
心配になってきた。
あなたが考えてることは何?
「私は、絶対諦めない!!!」
明日香はそう怒鳴った途端に保健室を出て行った。
悲しそうな顔、苦しそうな声、今にも涙がこぼれそうな瞳。
よっぽど心に気持ちを秘めているのがわかった。
私と剣は明日香が出て行ったほうを見つめていた。
ねぇ、剣。
明日香は何のためにここにきたの?
帰ってきたって何?
私はそう尋ねたかった。
でも、言えるわけが無い。
だって、明日香が飛び出していった引き戸をずっと見つめているんだもの。
苦しそうで切なそうな顔をして。
ねぇ、剣は明日香のことを、どう思ってるの?
複雑すぎて、何かが胸に突き刺さるような痛みを感じた。
森の中に入って、道に迷っているような感覚。
明日香と剣はどんな関係なの?
ねぇ、つらいよ。
もし、もしだよ?剣は私が尋ねたら答えてくれる?
ねぇ、怖いよ。
何かを失ってしまいそうで。
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10、なぜ???!!
「対決は明日、種目は弓道よ。」
いきなり教室で言われ、驚きながらうなずいてしまった。
でも、どうして?
弓道?
「じゃ。さようなら。」
明日香はそう言い残して帰ってしまった。
「って、私弓道なんてやったこと無いわよ!!!!」
私は一人で大声を出してしまった。
思いっきり席を立って叫んだ。
「やっぱり、そうくると思ったよ。」
いきなり剣がつぶやいた。
何で?
「…びっくりした。やっぱりって何で??」
私は首を傾げながら尋ねた。
いつもこの人に驚かされてるような気がする。
「あいつ、弓道で4段だからな。小さい頃からあいつは弓道一本だったよ。」
剣は遠い目をして言い放った。
小さい頃から?
そんな前からのつきあいだったの?
ねぇ、気になるじゃん。
「何でそんなこと知っ…」
「おーい!!!千里ー!!!日直の仕事ちゃんとやれー!!!!」
私が尋ねようと思ったときにいきなり一人の女子が剣を呼んだ。
私は勇気を振り絞ったのに。
「あーわりーわりー。ほんじゃ、またな。」
剣はそう言い残して行ってしまった。
いつもそう。
私が聞こうとしたことは無視するよね。
私は落ち込みながら剣と違う反対の方向に向かって歩いた。
何でこんなこと聞けないんだろう?
何を怖がってるの?
何でこんな胸が苦しいの?
もうやだよ…。
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11、対決!!は思わぬ展開??
私はドキドキしながら学校の弓道場に着いた。
↑この学校は弓道場があり、いつもは弓道部が使っております。
私が弓道場に入ったら、明日香がもう練習をしていた。
すごい!!
私は驚きの顔を隠せなかった。
だって、明日香が放った矢が必ずと言っていいほど完全に的を射ていたから。
私はびっくりして呆然としていたところを明日香が気づいたみたいで。
「これに着替えて、そんな格好でやったら怪我するわよ。」
明日香は私にそう言って、服を渡してきた。
ムスッとした顔をしながら。
私はちょっと落ち込んだ。
私はその服に着替え、弓道場に入った。
すごい空気。
怖いくらい緊張感がある。
こんなの初めて。
私が驚いていたら…
「あなたにはこれから練習をしてもらうわ。コーチはちゃんと呼んどいたから。あなたが五本矢を射てたら、対決を開始するわ。」
明日香は顔が真剣な顔に変わっていた。
弓道場では顔が違うんだな。
私は関心していた。
「うん。わかった。」
こうして、やり始めた。
でも、すぐ上達するわけもなく。
一時間経過…
一本も当たらない。
こんなの無理だよ。
私は諦めながら、血豆をつくりやり続けた。
手がじんじんする。
やり続け、二時間がたった。
カランッ
弓が音をたてながら床に落ちた。
「痛い。」
私は手をおさえながら座り込んでしまった。
痛すぎ。
血豆はわれて血が流れていた。
赤く腫れている。
「おい…」
「あんたの想いってそんなもの?」
コーチが何か言おうとした言葉をさえぎって明日香が私の前に立ち言い放った。
今は力が入らなくて立てない。
「え?」
私は明日香を見上げた。
上から見下ろされる感覚は何か気に触るものがある。
「あんたが剣に対する想いってそんなもの?剣のことを大切に想ってるってことはないの?剣が…」
剣、剣、剣って…
私は何かがプチッ音をたてたと思った瞬間。
「剣って言うな!!!!!」
シーン…
いきなり私が叫んだからか、周りはみんな黙ってしまった。
目は鋭くナイフみたいな瞳になり、顔が引きつった。
「剣のこともよく知らないくせに呼び捨てにしやがって、ふざけんな!!!!剣の何を知ってるって言うの???!!!いきなり横から入って来た子に剣のことを呼び捨てになんかされたくない!!!!!」
私は怒鳴りちらした。
私は気づいたら泣いていた。
頬を伝う感触が鼻をツーンと何かをさす。
何でかな?
こんなに言えるなんて。
「は…は?あ、あんたなんかに私のこの気持ちがわかる?私はあったときから大好きなの。あなたの想いと全然違うの。それに、私と剣はいいなずけなんだから!!!!!」
明日香も怒鳴ってきた。
私の頭に残った言葉が…
「いい…なず…け?」
私はこの言葉で頭が真っ白になった。
初めて聞いた。
剣にいいなずけがいたなんて。
ねぇ、何で剣は言ってくれなかったの?
「明日香!!!!お前バカだろ????!!!!!」
いきなり剣が弓道場に入ってきて、明日香の口をふさいだ。
剣があんなに焦ってる。
嘘じゃないんだ。
「剣?」
私は剣のほうを見上げた。
まるで嘘じゃない?と目で尋ねているように。
剣の心に尋ねるように。
「杏。ごめん。隠すつもりじゃなかったんだ。」
剣は苦しそうな顔して言い放った。
ああ、何か胸が痛い。
息苦しい。
「え?な…なんのこと?」
私は泣きながら苦笑いをした。
お願い。
嘘って言って。
聞かなかったことにして。
「バカやろ。お前、言ってることとやってることが違うんだよ。」
剣はそうつぶやきながら私のことを強く、抱きしめてくれた。
あたたかくて大きくて私をすっぽり包むよう。
今は剣の匂いが涙をもっと倍増させる。
「バーカ。俺がお前のためにかってやらー。」
剣はそう力強く言っていきなり走り出した。
そして、一分もたたないうちにもどってきた。
早くすぎない?
「袴?」
私は首を傾げながら尋ねた。
剣が袴姿になっている。
「久しぶりに着たわ。この服。めっちゃ懐かしい。」
剣はジャンプをしながら言い放った。
身軽だな。
「何で?」
明日香は驚いた顔で戸惑っていた。
だって、袴姿って。
「決まってんだろう?俺が杏のかわりに相手してやらー。トータル戦な。俺が勝ったら、俺のいいなずけってことを無しにする。お前が勝ったら、俺があんたのことを好きになる。いいな?」
剣は怖い目で言い放った。
何かを決意している力強い目をしていた。
「いいわよ。対決を開始するわよ。」
そうして、対決は始まった。
どんな展開よこの光景。
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バンッ!!
「トータル11!!」
審査員の声が響く。
すごい。
バンッ!!
「トータル11!!」
明日香も剣もどっちも譲らなかった。
剣って弓道できたんだ。
私は始めて気づいた。
「何であんなに集中力がもつんだよ。」
一人の男子が驚きながらつぶやいた。
確かに。
こんなのきっと弓道部でも中々見ない光景らしい。
バンッ!!
「トータル12!!」
バンッ!!
「トータル12!!」
カスッ
明日香の撃った矢は的を射ていなかった。
え?
「勝者千里 剣!!!!!」
いきなりで、時間が止まったように思えた。
私はいつのまにか泣いていた。
開いている口を両手で隠しながら涙が頬を伝う。
嬉しすぎて。
怖いくらい夢みたい。
「言ったろ?俺がお前を守るって。」
剣はそう言って太陽みたいに笑った。
私は走って、剣の胸に飛び込んだ。
「剣。大好き。」
私は抱きしめながら、誰にも聞こえないくらい小声で言った。
ねぇ、剣。
聞こえた?
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
やっと、勝負がついた。
この次に起ころうとしている事件はどんなものでも、もう止まらない。
私が剣を好きでいる限り。
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次に続く…