『承』(しいたけ担当)
※新たに使用したワード
無し
※スペシャルワード
『色(淡いブルー)』
帆船は島のある程度近くまで近付くと、錨を下ろした。周辺の海域の情報が無いために海底の岩や水位の変化で座礁の恐れがあるからだ。船乗りなら当然の心構えを、この時でも忘れはしない。
「ボートを降ろしな! アタシと後二人で行くよ!!」
「俺が行く!!」
「俺だ!!」
「いーや! 俺だ!!」
しかし彼女の呼び声に全員が我先にと争いを始め、収集がつかなくなる。
―――ガァァァン!!
鶴の一声ならぬ彼女の銃声に、船員は直ぐさま大人しくなった。
「やかましい!!!!」
そして腕を組みじっと船員達を見渡す。腕っぷしは誰もが同じくらいだが多少の得手不得手がある為、適材適所で人選を始めた。
「ビックス!」
「は、はい!」
「ウェッジ!」
「ウスッ!」
「決まりだ。後は留守を頼んだよ!!」
「「ハッ!! お気を付けて!!」」
船員達に見送られ三人を乗せたボートは【巨人の落とした指輪】へと進んでいく。
ボートを漕ぐ度にスカイブルーの穏やかな海が揺れ、透き通る水面は空との境界すら分からなくなるほどの清々しさを放っていた。
「綺麗な花には棘があるもんだ……」
ボートは浜辺へ辿り着き、砂浜へボートを上げると三人は周囲の安全を確かめ始めた。動植物、鉱物、気象学、その全てに照らし合わせ『未知』を探り始める。『未知』とは新しい発見であると同時に、とても危険な事であるからだ。彼女等は過去の経験からそれをよく知っていた……。
「……人の気配は……無いようだね」
「小型の動物は居るみてぇです」
「船長。植物も全て既知の物だ」
―――バッ バッ!
彼女は腰に備え付けた手旗信号で船へ信号を送った。
「船長なんだって?」
「一先ずは安全だとよ。これから内部に行くそうだ。二日戻らなかったら来いってよ」
手旗信号を受け取った船員が『了解』の信号旗を上げると、彼女はニヤリと笑い島の内部へと足を踏み入れた。
島の内部は高い木々で覆われており、人の手が加わっていない自然のままだった。
「人が来た気配すら残ってねぇですね」
「なんだい、アタシらが初めてかい……?」
とぼやきながらナーデニーは腰の銃を引き抜いた。
「船長?」
「シッ! 死ぬなよ!!」
―――ガァァァン!!
―――キンッ!
銃声が島に響き、多くの鳥がバサバサと羽ばたき去って行く!
その中で微かに聞こえた金属音。ナーデニーはその音先へと視線をやると、茂みの奥から身長二メートルを超える大男がソロリソロリと現れた。
「ココを抜けるのは、アタシ等が初めてになるね」
大男の顔は頭部から皮膚がめくれた様にベロリと垂れ下がり、顔の右半分は金属のような肌が見え、右目は蒼い光を放っていた。
「な! なんだアイツは!?」
「せ、せせせ船長!?」
「どうやらココの守人の様だね」
大男は表情を一つも変えること無く右手に光る斧で三人を狙い澄ます。ビックスとウエッジも慌てて腰のマスケット銃を引き抜き大男に狙いを定めた。
―――ドンッ!
―――ドンッ!
マスケット銃から金属片が大男に向かって放たれる!
「あ、あわわわ……!!」
「コイツ……化け物だ!!」
金属片が大男に当たり、被弾箇所の皮が捲れる。中から無機質な冷たい鉄の肌が見え、彼が人間では無いことを三人に知らしめた!
「ケケ、どうやら大当たりだな! こりゃあ帰ったら情報屋にも一発キツいのを喰らわせないと……な!!」
―――ガァァァン!!
―――ガァァァン!!
大男の両膝がガクリと折れ曲がり、大男はおもわず姿勢を崩した。大男の膝に当たった銃弾は潰れ、膝にベッタリと張り付いている。
「チッ! お手上げだなこりゃ! 野郎ども先へ逃げるぞ!!」
大男が姿勢を戻す前に三人は走り始めた!!
道なき道を走り、島の内部へと突き進む!
それは『未知』の最中枢であり『危険』の海を目印無しで泳ぐような愚かな行為。しかし彼女等はそれが生業であり生き様そのものなのだ。
木々の隙間をかき分け、足を止めた先に見えたのは紛れもなく大きな湖。それはそれは大きな巨人の落とした指輪の穴だった―――!!
しいたけさん
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