〜申請するモノ〜
一番近い冒険者集会所があるのは魔境の森から数キロ先にある、ハーチラス王国だそうで
「なぁ、アリス、まさかとは思うけどさ…」
「やっぱり、ばれちゃいましたか…そうですね、ハーチラス王国は私のお爺様が王を務めている国です」
アリスの歩幅に合わせながら、ルウンは耳を傾ける。ルウンの持つ『五感強化』のおかげで、周囲の音を超広範囲まで拾うことができるのだが、その副作用としてなのか、会話などは注意して聞かないと、周りの雑音と同じように聞こえてしまうのだ。
「ってことは、アリスは次期王の娘に当たるんだよな?それがなんで護衛もつけずにこんなところに?」
草木を踏みしめてまっすぐ進む。ルウンにはどの方角に向かっているかもわからないが、アリスは地図も開かずに進んで行く。アリスの足取りは軽いモノで、そう着している装備なんかも動きやすさを重視しているのか、鎧のようなごついものではなく、軽量の布製の装備ということもあって、森を抜けるまで一度も休憩を取ることはなかった。
森を抜けるとすぐに簡易的な関所があり、そこからさらに1キロ歩くとハーチラス王国があるのだが、その関所からでも王国の城壁がはっきりと見え、てっぺんが霞むくらい高かった。関所では、アリスの冒険者証明書を見せると、少し待機していてほしいと言われ、奥にある応接の間に通され、二人とも木製の椅子に腰掛けている。椅子の作りは簡素なモノで正直数時間と座っていれば腰を痛めてしまうだろう。
「一応私は、冒険者の一人という扱いをされています。それにまだ私は王の孫という立場のためにそこまで権力は持たないし、お爺様の性格からして、人質にもならないから」
森を抜ける直前にした質問に対しての返答が今の言葉だったらしく、アリスの表情は少し暗いモノへと変わっていた。現代の日本人の家庭とは比べ物にならない厄介ごとが貴族や王の家庭にはあるのだろう…まぁどちらの世代も子供が抱えるストレスというのは大きい物で
「なるほどな、だからアリスは冒険者としてあの魔境の森とやらに行ってたんだな。ってことは依頼か任務かだったんじゃないのか?」
ルウンが無理やりに話を終わらせて、話題を変えると、アリスはスカートのポケットらしいところから5つの赤い球体を取り出す。甘酸っぱそうな香り…見たことがある。
「そ、それってなんなの?」
興味本位で聴いてみる。正直なところ強力な毒物か何かでその調査のためとか言われないか内心ヒヤヒヤだったのだ。
「これは、アププの実と呼ばれまして、その味の良さもさることながら、最大の魅力は魔力を保持した唯一無二の実と言えるところです。価値としましては、一粒銀貨3枚ほどでしょうか。これが1房になりますと、金貨1、2枚は固いですね。」
未だ、銀貨や金貨の価値は知らないが、相当の価値があるという言い方をしており。あの森の中で相当数のアププの実をたべてしまったルウンは、命が助かったとはいえものすごい勿体無い気持ちに見舞われていた。
「お待たせしました、冒険者アリス様、並びに従者ルウン様、通行の許可が出ましたので、どうぞお通りください。アリス様は冒険者証明書をルウン様は仮通行手形をお持ち頂ければ、王国内には自由に出入りすることが可能です。」
「ありがとう」
兵士の説明に笑顔で返すアリスに便乗して、ルウンは会釈してその場を去った。
「ごめんね、従者ってことにしておかないと色々大変なことになってしまうの」
「なんとなくわかってたから大丈夫だ、俺たち友達だもんな」
申し訳なさそうな表情を浮かべていたアリスが、友達という単語を聞いた途端パァっと輝かしい微笑みに変わる。その笑顔を保ったままのアリスとその笑顔を見て眼福、眼福といった表情をしているルウンの二人は、人混みというほど込み合っていないが、そこそこ人がいる道を数分歩いた先にある冒険者集会所へと入っていった。
「アリス=ハーチラスです。アププの実収集の依頼品です。」
「はい、依頼主ハーチラス王国、収集品アププの実、収集個数無制限、引取り価格1個あたり銀貨2枚の依頼に対し、アププの実5つですね。」
アリスが真っ先に受付カウンターに向かい、依頼の達成を告げると、受付にいた、いかにも仕事ができそうな黒ぶちのメガネをかけており、スーツといものがないのが悔やまれるが、それでも布で作られたにしては割としっかりとした服装だと言える…あ、よく見たらスカート的な物が異常に短くて、少しでもローアングルになればスカートの中身が見えてしまいそうであった。やはりこういうのは、集団の長の趣味が前面に出るのだろうか…会ったら一言、言っておこうGJと
「あの…それで、彼を冒険者登録したいのですが」
銀貨10枚をポケットにしまった、アリスがルウンのことを受付の女性に説明すると、すぐさま棚から1枚の紙を取り出し
「それでは、こちらの用紙に名前と年齢を記入してください。」
メガネを光で反射させ、どんな目をしているか認識できないが、言葉の脈絡のなさから、あまり感情を持たない事務的な感じで接しているのだろうとわかった。用紙を受け取ると、名前と年齢と武器の有無というたった3項目だけ記入して渡し、また少し時間がたったら、今度は受付の奥にある扉から兵士のような男が出てきて
「ルウン=ローレンというのはどいつだ?全申請書に偽りを書きおって、牢獄送りにされたいのか?」
周囲の目が一気にその兵士に集まる、その中でルウンはすっと立ち上がって兵士に近ずく、必然的にルウンに視線が集まりざわつきが起こる
「ルウン=ローレンは俺だが、記入したことに間違いはない。俺は巨大蜘蛛の妙なロー
…液体を掛けられたらこの姿になってた」
巨大蜘蛛の名を聞き、ざわめきが一層大きくなる。兵士も驚きを表情に表したがやるべきことを全うするべく声の大きさを変えずに
「なんらかの薬、魔法で成長した体を得た事例は過去にもある、今回も前例にならって冒険者の試練を受けさせてやるが、生まれて間もない者が簡単に受かると思うなよ。ついてこい」
兵士は目線でルウンに合図を送り、ついて来いと促す。ルウンは
「行ってくる」
とアリスにだけ聞こえるような声のトーンで言葉を発し、アリスは頷いて返事した。
事故起こして1日休載…時間が空けば2話公開する予定をここで宣言しておきます!




