〜ルウン=ローレンの名を持つモノ〜
おそらく魔王であるしつは、これまたフードで顔をほとんど隠した小さな人だった。エネルギーが測れないほうが強い可能性があったルウンの持論を崩すかのような尋常じゃないエネルギーを周囲に撒き散らしておりしかも、それは圧倒的で、今までにみた最高のエネルギー量を持っていたハーブの100倍はあろうかというモノだった。いくら魔王だからってインフレしすぎだろーが!!とルウンが叫びそうになるのをぐっとこらえる。全身黒づくめのそいつは、すっと手のひらをこちらにむけると、無茶苦茶で不規則だったエネルギーの波が一点に収束しパッと光った
音は全く聞こえない、だが目の前いっぱいに真っ白な光がある。圧倒的なまでのエネルギー攻撃だった。とっさに全員にイメージで指示を出す。ガインの持つ”収集家”と”青天井”を発動させろと。そしてあっという間に全身に激痛が走った。
「ほう…残ったか」
視界が元に戻り、周囲を見渡すと立っていたのは、ガインとバイラ、そしてディータだけでアリスとアネルは倒れていた。さらに確認すると、城の外にいたベルすら吹き飛んでいた。ゼディウスの姿は跡形もなく消え去っていた。そして何より驚いたのが…
スキルが無くなっていたのだ
「ど、どういうことだ!!スキルが消えるなんて!!」
ガインが叫ぶ、ルウンは自分の唯一のスキル『OFAAFO』が消えており、それを確認して声が出ずにいる。
「これぞ神の力!貴様らの希望は我が全て摘んでくれる!」
おいおいちょっと待てよ。神の力っつても魂の中に存在するスキルにまで干渉するとか、マジで神様みたいなもんじゃん、そんなの魔王だからってさすがにずるすぎるだろ!どうなってんだよクソチビ!!
ルウンが初めて死んだ後にあった神を自称する低身長の金髪を思い出しながら悪態をつく。そういえばあと2回くらい呼びかけとかいうのがが残っていたはずだから、これにも答えが返ってくるのだろうか?と思考を逃避させようとすると
「それは問題ないんだよ、なにせこの私が神様だからな!クソバカが!!」
現実の音声となって頭に響いた。
「え!?どういうことだよ」
ばっと顔を上げて、神を名乗った魔王を見る。その者が自分のフードを脱がすと、それに習って服がするりと落ちていく。そして顔どころかすべてをさらけ出した其の者は一瞬ルウンが考えた、神、キイラスその人だった。そして神様を象った像でよくある全裸体と同じく完璧すぎる比率で作られたもので、性的な感情は芽生えないそもそもロリは性的対象外、ただ単に美しいと思うだけだった。
「まさかここまで1回しか呼びかけしてこないとは思わなかったんだよ、あれは自分に課した制約のようなもので、必ず答えなければならないって決めてたからな。本当は正体を明かすつもりはなかったんだ。いや、正確にはお前が死ぬ寸前に教えてやろうと思っていたんだよ。そのほうが絶望するだろ?」
ルウンの顔が驚愕と不安を全面に表す。
「な、ならどうして俺をわざわざ呼んだんだよ、自分が作って自分で壊す世界に…」
「当然だろ?我は強い、だが少しでも面白くしたい。お前がいた世界にあったゲームだって同じだったろう?強いキャラクターにはそれ相応の敵キャラがいないと盛り上がらないだろう?だからお前を呼んだんだ、自殺したてで精神が不安定なところに、異世界転生なんてロマンの塊のようなものをぶつければ多少の違和感は流されて、我のいうことも聞き入れてもらいやすくなる。そしてチーとスキルとして『脳筋』をあたえて、うまくいってレベル99くらいになれば我と多少遊べてかもしれないのに、女を助けるために力を捨てただと?ふざけるのもいい加減にしろよ!我がどれだけ楽しみに待っていたと思っている!」
「んなこと知るかよ、それならもっと待ってればよかっただろ?こんなに早くお前が登場したから「時間がなかったんだ」は?お前言ってることが」
「お前が異世界人ばかり近くに集めるから、もっとゆっくり進むはずだった技術の進歩が一気に早まって、100年後を予定していた機械がもう作られてしまった。まだこの世界は大量の機械を導入することがでないんだ。技術の進歩は人間の手で行うのではない。神が作った星の許容量が増えるから、人間の脳が考えられることが増えて技術が進歩するんだ。」
つまり、新しいパソコンであれば動かせるソフトも、古いパソコンに最新のソフトを入れてもバグや容量の大きさに誤作動を起こすようなものなのだろう。
「だが、それが目的と言ったじゃないか!」
「そうだな、でももう少しゆっくりだと思っていたけど失敗した。だからとっとと終わらせて次の世界をまた作り直そう。むしろいいサンプルができたと思えばいいだろう…」
「か、勝手なこといいやがって。それに楽しみたいならスキルを消す必要はないだろうが!!」
「いや、もうわかった、さっきのゼディウス程度に苦戦するなら我が戦うまでもない。もう全部消そう。」
「…ふざ…けるな!!!!」
地面を無造作にけり、吹き飛ぶようにキイラスに迫る。空中にいキイラスに殴り掛かる。
「『脳筋』をしっかり保持していれば、ここまで無駄な2度目の人生ではなかっただろうに」
キイラスが上げた手を空を切るように振り下ろす、それすらも認識できたのは、地面に叩きつけられたあとだった。
「くそ…なんのために…俺は…無駄…無駄無駄ムダムダムダムダムダムダムダムダ……自殺…この世界に来た時から死ねばよかった、そもそも俺は自殺したんだった…あれ?そういえば…俺って…誰だ!?」
俺の頭に一つの疑問が生じる。ルウンはルウンだ、それはわかっている。しかしそれはこの世界で与えられた名前だ、なら前世での名前、俺の本来の名前ってなんだ?
ルウンは、自分の本来の名前を思い出そうとしていた、こんな状況だがこれについて考えなくてはならない気がしていた。必死に探すが、ルウンの記憶の中には、答えが存在しなかった。
「名前…俺の名前…俺以外知っているわけない…あ!!」
そうだ、ルウンであってルウンじゃない、ルウンの中にいる、過去の自分の魂がいるはずだ!
『おい!俺の名前を答えてくれ!』
『ん?久々に声かけたかと思えば、どうした?俺の名前?下月 蓮だ』
カチリと何かがはまったような感覚が起こる。
いままでぐちゃぐちゃに詰め込んでいたおもちゃ箱を一回ひっくり返して、すべてを埋め尽くすようにしまい込んだそんな気持ちになる。
「どうした?急に立ち止ま…な!!何をした…何を…しているんだ!!」
《ルウン=ローレンと下月 蓮の魂が完全に一体になりました。ルウン=蓮に統合されます。》
《ルウン=蓮の魂に、悪魔、天使、亜神のすべてが統合されます。》
《統合結果、ルウン=蓮を神として再構築します》
!!?神?俺が?だが、この自分勝手な神を倒せるなら、その力なら喜んで受け取ろう
《どうか、キイラスを止めてください》
その言葉が頭に響き、キイラスが止めようとするが、それよりも早く再構築が始まった。




