〜檻を壊すモノ〜
「はぁああ!!」
気合の声をあげ、アリスはゼディウスに斬りかかる、一瞬頭に血が上りかけたが、すぐに冷静さを取りもどし神速と言える速さの剣撃を全て寸分違わず打ち合ってみせる。アリスの剣が錫杖に当たるたびにシャランと心地の良い金属音が響く。受け止められるがその時生まれる反動を利用して次の攻撃に移るアリスに対し、ゼディウスは、一撃ごとに殺しきれない反動でわずかずつだが、反応が遅れてしまう。あまりのラッシュに打ち返す余裕もないゼディウスは135合目にしてついに一撃、掠る程度であったが右腕を切った。そのダメージは小さいがこのペースならば負けてしまうのも時間の問題だと考えたゼディウスは、一旦距離を取る。
「ははは、まさかここまで強いとは思わなかったよ、でも今度は僕の番だ!」
ゼディウスは両手で錫杖を構え、周囲に漂うエネルギーを集める。
「我が想いを力と変え、闇の力を秘めて我が敵を貫け”闇牙”」
一つ3メートルぐらいの真っ黒な氷柱のような、黒曜石を荒く砕いたような物体が、とんでもないスピードで無数に飛んできた。大きなモノはなんとか砕き躱すことができたが、小なものはアリスの攻撃をかいくぐってアリスの体を血に染めていった。
「ははは!僕みたいな高貴な存在はね、腕力なんて野蛮な力は持っていないんだよ!だからこの魔法で全部葬ってあげるよ!”闇牙”」
再び発動された、凶悪な魔法はダメージを受けて集中力を削られたアリスにとってそれは致命となる技。
「悪いがこっちは一人じゃないんでな、俺も混ぜろよ」
気づけばルウンがアリスの前に立っており、いつの間にか刀身が倍ほどになった刀を構えて、重さを感じさせないような速度で振り抜き全ての闇牙を打ち落とした。そして切られたものはすべて、ルウンの刀に吸収された。
「ちょ、ちょっと待ってよ、それなんだよ!僕の魔法が通じないなんて…」
「説明してやる義理はない!ただこの刀は魔法の類をなんでも食っちまうってだけさ」
それを言われたゼディウスは、ルウンの刀が、最初っから常識的な刀より大きくなっていたことに疑問を覚え周囲を見回すと、所々闇で覆っていたこの隔離空間の一部に外部の光が入りこんでいて、少なからずゼディウスの能力を低下させていた。虚無の竜ゼディウスは闇に生きる存在である。そのため、闇の中でなら他の竜を2体相手にしても圧勝できる自信があるが、光に包まれた状態であればそうはいかない寧ろ他の竜よりも劣る存在になってしまう。今は二体の天使を取り込んでいるため、そこまでの能力低下は起きていないが、拮抗しているこの場であれば致命的とも言える。
「そっか、それなら僕も手加減なんてしてられないね」
ゼディウスの体から闇の煙が立ち込め、ルウンが削った分の魔法を補充し、今度は簡単に吸収されないように構造を複雑に構成した。そして錫杖を二本に増やし、それぞれがぐにゃりと変形し、形が定まった時、アネルの細剣よりも少し太めだが長さが刀身だけで2メートルを超える長剣が両手に握られていた。
「よいしょぉっ!!」
そんな掛け声で振り下ろした二本の剣をルウンは頭よりも上の位置で受け止める、が力を相殺しきれずに、片膝をつく。そしてルウンを抑え込みつつ詠唱を唱えることでアリスに無数の闇牙を飛ばす。
「おいおい、腕力は野蛮なんじゃなかったけ?」
「ん?そうだっけ?でもねいくらなんでも負けたくないし、勝つためならプライドなんて捨てちゃうもん!」
「あ、やべ…せっかく溜め込んだ力使い切っちまう」
「もっといくよ!!」
拮抗していたかのように思われた鍔迫り合いのようなものが、一瞬にしてゼディウスの優位に代わり押しつぶされる。
「君は確かに特殊だしもっと力を上乗せできそうだけど君
自身はとっても非力だね。その程度ならここに来るべきじゃなかったと思うよ」
地に伏し身動きが取れないほどのダメージを受けたルウンは、激痛に意識を持っていかれながらもゼディウスの言葉だけははっきり聞こえていた。
「くそ…動けよ!動けよ」
顔はくやしさと痛みに歪んで降り、自分の無力さを痛感し涙が流れる、落ちた涙は闇の中にシミを作ることなく消えさる。体のエネルギーを総動員しても回復ができないほどにダメージを受けていた、一瞬で。勝てると考えていた、しかしそれは甘かった。ゼディウスの力を込めた一撃はどうあがいても勝てないと宣告されたようだった。当然、アリスも負ける、そう考えていた。
「はぁああああ!!」
しかしアリスに諦めるという言葉はないようで、無数に向かってくる闇牙を剣で撃ち落とす、その速度はどんどん早くなり、ついには残像を残し複数人のアリスで剣を振るっているように見えた。途中で隙をみては斬撃を飛ばしてゼディウスを狙うが、当然威力の落ちる斬撃が直撃するわけもなく、あっさりと長剣で防がれてしまう。
「そろそろ、殺しちゃおっか、魂を誰かに取られても面白くないし、僕が食べてもいいんだけど、魂の力だけで反発されるってもしもがあり得るからね、それだけ大天使はイレギュラーってことだけど」
そう喋りながらゼディウスは長剣をアリスに向け構えるそして先端に電撃がほとばしる玉が出現する。一目でわかるあれはやばいと。
「誰か!ゼディウスを止めてくれ!じゃないとアリスが!」
そう言って目だけを動かして周囲を確認するが、全員がすでに闇牙で倒れており、いままで耐えていたはずのゲイルもすでに疲労困憊、満身創痍の状態だった。
「これで終わりだ”神殺しの閃雷”」
けたたましい騒音と共に、アリスに向かう光速の一撃、見てからでは当然避けようもない。そんな刹那の間でルウンは確かにアリスの声が聞こえた気がした。
「大丈夫、私が死んでも、君の中に入るから。離れることはないから悲しまないで、初めての友達になってくれてありがと。大好きだったよルウン」
ルウンの心にだけ響いたアリスの声、それに背中を押されるようにボロボロの体は動き始め、乏しい足は当然ゼディウスの攻撃を止められない。やっと辿りついた時には、アリスの胸が雷撃で穴を開けられたあとだった。そして口からは小さな光りが煙のように出てきた。
「おやおや?精神を殺す一撃をくらってまだ魂が残るとはねぇ、大天使のイレギュラーさはよっぽどというべきかな、っておや?」
ルウンはとっさにアリスの唇に自分の唇を重ね、魂をくらった
「もう意思なんて残ってない魂を喰らうなんて、よっぽど大事だったの?それとも力が欲しかったのかな?」
ゼディウスの言葉はルウンには届かない。ルウンはアリスの唇から話そうとしない、涙も止まらない。
「アリス!!頼む!俺からも俺からも想いを伝えさせてくれよ!!もう一回アリスの笑顔を見せてくれよ!頼む!神でもなんでもいい!アリスを救える力をくれよ!!」
《蘇生魔法を獲得しまし《称号『脳筋』の効果により強制的に破棄されました》》
蘇生魔法?そんなのあんのかよ!ならくれよ、いまそれが有効だって誰かが判断したんだろ?
《蘇生魔法を獲得し《称号『脳筋』の効果により強制的に破棄されました》》
なんだよ邪魔するなよ!!俺にアリスを救える力をくれ!!戦う力なんてもういらない!!
《蘇生まほ《称号『脳筋』の効果により強制的に破棄されました》》《蘇生《称号『脳筋』の効果により強制的に破棄されました》》
うるせえ!!
《蘇生…《称号『脳筋』の効果により強制的に破棄されました》》
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《個体名ルウン=ローレンから称号『脳筋』を完全削除しました》




