〜裏切りの天使というモノ〜
「それでは、私の能力でここにいる全員を天界に送ります。いきなり中心地に送って着いた途端襲撃される可能性も否定できませんので、外れの方に送ります。準備はいいですか?」
アネルの言葉に全員が頷く。ルウンが帰ってきてからもアネルが全体の指揮をとってさらなる特訓をしたため、一層全体の能力が上がっていた。そして、アネルが全員の意思を確認し、移動を始めようとした時
「ちょ、ちょっと待ってください!」
声が聞こえ、そちらを振り向くと、学ランのような上下真っ黒な服に身を包んだ、バイラがそこにいた。ここにいるメンバーよりも劣っているが、以前よりも相当特訓したのか、エネルギー量が上がっており、身につけている武器も国宝クラスの両刃の劍と伝説クラスの防具だった。装備だけでいえば誰よりも金をかけているだろう。
「魔王のところにいくんですよね!?僕も連れて行ってください!夢だったんです魔王と戦うのが」
「夢?存在すらも疑われていた魔王を倒すのが夢?」
バイラの発言に対してガインが質問をする。
「ここで誤魔化してもいみないですもんね、じつは僕異世界人であるガインさんたちから見れば一眼でわかるとおもいますが、つい数週間前まで中学生をやってました。そこで退屈してた僕は毎日妄想ばかりしてました、そしたらその妄想に近い世界に迷いこんだんです!これはもう導きだろうと思ってとにかくひたすら思うがままに行動してた、いつの間にかユニークスキルを手にして、隊を率いるようになっていました。それにも満足できなかった僕は魔王の話を聞いてそれを目標にしていました。そしたらなんとあなた方が魔王を倒しに行くといっているではありませんか!妙な空間にいたせいで声をかけることもできませんでしたので直前まで一緒に鍛えさせていただいておりました!」
「あ、あたしの空間の音が外に漏れていたのかい?あた…わたしの腕も鈍ったものですね」
アネルが兵士の前だったということを思い出して、口調を元にもどすが、おそらくすでに手遅れだろう。そう結論づけているルウンは
「なぁバイラ、お前が特化してるのは目だけじゃないんだろう?耳…いや?五感すべてが人間どころか全生物よりもいいんじゃないのか?」
「さすがルウンさんですね、これも隠すことじゃないですし。僕の本当のスキルは『究極超五感』文字通り五感すべてが異常発達しています。しかし、よくわかりましたね、このスキルは以前お教えした『見定める者』が進化したスキルでしたので、ずっと目だけしか言っていなかったはずですが」
「それはあれだ、俺がディータの盗聴器で俺だけがあの幹部どもの話を聞いていたのに、お前があたかも聞こえているのが当然のように返答していたからな、その時から気になってた」
「盗聴器なんてものがこの世界にもあったなんて、不意を突かれましたね。ですが、この能力はきっと役に立ちます。それに他の能力が低いというのであればルウンさんのスキルの対象に指定していただけませんか?きっと僕の能力をみなさんに共有できれば!」
「確かにその能力があれば、突然の不意打ちにも対応できるだろうな、よし、ここまできたら連れて行くぞ、問題ないよな?」
「ひとりふたり増えても問題ありませんが、互いをかばって足を引っ張り合うことのないように、各々が全力を尽くし魔王をたおしましょう」
アネルの言葉と同時に発動された魔法は、前にルウンを飛ばした魔法陣と構造は似ていたが、天界という特殊な場所に行くための特別な魔法らしく、発動するまでにわずかに長い時間を要し、移動にもちょっとばかり時間がかかった。
真っ白い光に包まれる。おそらくとんでもないスピードで飛んでいく光の粒子が、バイラの能力の影響か一粒一粒はっきりと見えていた。そしてさらに驚くべきことに、まだ転移が完了していないのにもかかわらず、到着後の映像まで見ることができ、これはおそらくだが、ディータ博士の持つ分析系統のスキルとバイラのスキルとの複合効果で推測的未来予知が行われているのだとルウンは考えた。そしてそれは全員に共有しているわけで、全員が一斉に同じく斜め右上あたりを見ていた。擬似未来予知によれば、そこからなにか飛来物が飛んでくる、となっていたためである。
光がぱっと晴れ、天界に到着すると同時に予知していたポイイントからとんでもないスピードの何かが落ちてきて、それを全員が避けたことにより、それは地面に突き刺さった。
「あれれ〜おっかしいなぁ〜いまので3人くらいは殺しちゃうよていだったんだけどなぁ〜」
間延びした声の中に潜む圧倒的な殺気、しかしそれには一切動揺をいみせない一行は慎重に穴を見ていた。
「その、おかしな喋り方…その独特の微振動音…まさか!!!」
全員が穴の中を覗くと、そこにはバリバリのDQNのような革ジャンに赤の下地に白いドクロが描かれたシャツとダメージジーンズのようなズボンを履いている金髪の女性がそこにいた。そしてか細い腕に似合わず、その手には、背丈と同じくらいあるチェーンソーが不気味な音を立てながら握られていた。
「あははは〜そこにいるのは人間に恋して落ちたアネルおねぇ様じゃないですか〜」
「お久しぶりね、カノン。あなたあいかわず下品な武器を使ってるのね」
「あらぁ〜人間とイチャコラするために〜天界をさったアネルおねぇ様には言われたくありませんわね〜」
アネルとカノンの間に火花が散る。
「それよりもさ、さっき俺たちを殺すとかどうとか言ってたよな?つまりお前は敵だよな?」
ルウンがカノンに対して確認をとる、さっきの行動を見ても敵であるということは確定しているのだが、どうして敵なのか知りたかったのだ。この空間に入ったから敵なのかそれとも…
「もちろんだよ〜だって〜君たち〜魔王様を殺しに来たんでしょ〜?」
「ど、どういうことカノン!!?まさか…あなた魔王の側についたというの!!?」
アネルが取り乱し声を荒げ叫ぶ。相手がおねぇ様と呼んでいるだけあって、アネルにとって妹のような存在なのだろう、そんなカノンが魔王の味方だと言ったのだ。それを聞いて困惑したのはアネルだけだったが、それは他のものがカノンのことを知らなかった、ただそれだけなのだろう。
「当然じゃない〜人間だって同じことするでしょう〜?強いものに着く、これがうまい生き方だってさ〜それにこんな素晴らしい力をくれたんだからさ〜!!!」
カノンがチェーンソーを振り上げ振り下ろす、その間にアネル以外が飛び退き躱す。アネルは避けれなかったのではなく、受け止めに行ったのだ。左手の平に右手の握りこぶしを近づけ、発光したかと思うと、そこから白く輝く細剣が握られていた。かなり長めで飾り気は柄の部分に草木が描かれている程度で、これといって特色するべきところはないが、その細剣の内包するエネルギー量がとんでもなく現在のルウンと同じくらいであった。つまりあの武器を手放せば、アネルは相当な弱体化を強いられることとなるがそんなヘマはしないだろう。
「みんな!このカノンはあたしがなんとかする!おそらくこの調子だと他の天使もいるだろうけど、こいつ以上の力を持った天使はおそらく一人だけのはずだからさきにいって!!」
アネルは言葉を言い切るのと同時に細剣を振り払い、カノンを吹き飛ばした
「行きたい人は勝手にどうぞ〜多分一番強いアネルおねぇ様を足止めできれば〜私の仕事はまっとうされたって言えるからさぁ〜どう頑張っても君たちじゃ〜他のおねぇ様方には勝てないからさ〜」
カノンがすぐさまは立ち上がり、アネルに攻撃を加える。それを聞いた後アリスは少しためらったが、アネルが視線を送ったことで再度覚悟を決めてみんなと一緒に走り出した。




