〜特訓の始まりというモノ〜
「まったくいつまで待たせるのかと思えば、捕まえられるし、かといって暴れるわけにもいかねぇから捕まってたが、ここの飯めっちゃうまいな!!」
ゲイルが言う師匠という者がハーチラス城の地下にある牢獄に捕まっているという、バガスという男に会いに全員で来た途端、飯にがっつきこちらを見ずに話す大柄の無精髭を生やしたちょっと不潔そうな…そしてルウンにとって見覚えのある男が居た。
「あ、お前何時ぞやの盗賊じゃねぇか!!?」
ルウンがそう声を上げると、ゲイルがルウンの胸ぐらを掴み
「おまえ、俺の師匠を盗賊呼ばわりすんじゃねぇよ、それにな師匠は俺よりも強いんだぜ、おまえなんか瞬殺よ」
お前も野盗扱いしてなかったっけ?とか思ったルウンだったが、それよりも牢屋越しにルウンに向かって土下座をしているバガスに気になってしまい
「あの…バガスさんって言ったっけ?何してんるんですか?」
「い、いや。つい条件反射てきに…あの時は申し訳ありませんでした!!」
勢いよく頭を下げ、強固な筈の石床を砕く頭突きを放つバガスをなだめるのに5分くらい要した後、バガスは語り始める
「俺はルウンさんに逃がしていただいた後「なんか聞きづらいから普段通りに話してくれないか?」あ、ああ。で俺が逃げた後、君に言われたことが気になって初めて刀を抜いたんだ」
あ、あの時差してた刀抜いたことなかったんだな。と思ったが口には出さず、続きを聞いた。
「そしたら、実はこの刀、意思を宿してたんだ。」
そして、バガスは立ち上がり、構え、刀を引き抜くと、今まで一般兵士程度だったエネルギーが、爆発的に増え勇者であるゲイルを追い越した。そしてさっきまでだらしなかった表情をしていたバガスの顔と雰囲気が凛としたものとなり、格好と無精髭がなければなかなかにいい男なのではないかという錯覚が起きそうだった。
「全く、なんでこんな奴が持ち主になったかな…偶然か必然かわかんねぇが、この世界は不思議であふれてっからまぁ仕方ねぇで済ませるのが一番なんだろうな!それじゃあとりあえず、俺の名は聖魔混合破創刀だ。」
その発言の瞬間異世界人である、ルウン、ガイン、ディータは気づく。あ、こいつ異世界人だ!と
「お前、出身は?」
「生まれた場所なんか知る…ってあぁ、お前らも異世界人か」
ルウンの質問に対して刀である自分に対する質問かと思った聖魔混合破創刀だったが、そうではないとすぐに気づき
「俺は地球っていう星のアメリカ在住の日本人だった。まぁ戦争の時刀に切られて死んじまったんだが、その刀の美しさに惚れちまってな、で気づいたら俺自身が刀になってたってわけだ。」
その理論でいくと、万が一にでもルウンが電車に見惚れていたら、電車に生まれ変わるなんていう摩訶不思議なことが起きてたのか?とか考えていたが、それはないだろと思考を捨て去り、質問を続けた。
「ゲイルについてきたってことは、なんか目的があるのか?」
「ん?いや、特にはないな。ただまだ俺が完全に覚醒してなかった時に、ゲイルって勇者にあって、最初は野盗っぽいからって理由で討伐されかけたが、一方的にぶちのめしたら、弟子志願してきやがったから、昔の記憶を頼りに刀の使い方を教え込んで鍛えていくうちにその魔王に興味を持って、ついてきたってわけだ。…おいおい、あっさりと説明しすぎだろ、割と色々なことやったんだがな…それは全部俺の能力のおかげだろ?まぁおこぼれ的なかんじでバガスも強くなっちまったからな、強さ的に言えば…あぁ多分そいつくらいだ」
と二重人格のような話し方をして、その状態でもバガスの意識はしっかりあるんだなと思いつつ、バガスもとい聖魔混合破創刀が示した方向を見ると、そこにはハーチラス王国(世間的に)最強の戦士ガイン=ハーチラスがいた。
「え!?嘘だろ!?だってさっきのエネルギー量」
ショックを受けたガインは、驚きのあまり挙動不審になっている、ただでさえ、周囲にはガインよりも強いやつが数人いるうえに奥さんどころか娘にすら負けている最強戦士が、まさか野盗みたいなやつに負けるというのは、もう完全にプライドがボロボロだろう。叫んだまま、牢屋を出て、となりの牢屋に入り体育座りで顔を埋めてしまった。心配そうにアリスが行こうとするが、それをルウンが止める。いまは行かないほうが彼のためだ…そんな意味を込めて。
「確かにバガスのエネルギー量は多くないが、それは俺のせいだ。俺が常にこいつのエネルギーを食ってるから、いつも低いが、それのせいか元々の才能か知らないが、『超回復』のスキルを獲得してどんどん、減少と回復を繰り返してたら、なんかめっちゃ強くなってた。」
「まぁ、筋トレと同じかんじで最大値が増え続けたら、それに影響を受けて現在値と関係なく身体能力も強くなるだろうな。」
ルウンのつぶやきに賛成なのかバガスもディータ博士も頷いた。
「で?いつ魔王のところに行くんだ?」
「え?そりゃ十分準備を整えなきゃだから少なくとも1ヶ月くらいじゃないのか?」
と答えたゲイルだったが、ルウンがアネルを見ながらたずねる
「いや、おそらくそんな時間がないだろう?」
「そうですね、魔王はすでに手がつけられない力を有しています。やつが行動を起こす前に先手を打たなければ、確実に敗北してしまいます。よってハーチラス王国の王女であるわたくし、アネル=ハーチラスの名において命令します、いまから1週間後この場にいる全員でもって魔王に挑みます。おそらく強者は他の国にもいるでしょうが、正直間に合わないと考えます。よってわたくし直々に全員を指導致します!!」
直後、アネル王女のつけていた、腕輪が砕け散り、アネル王女…いや大天使アネルと呼ぶべきだろう彼女のエネルギー量が他を圧倒し、この場にいる全員のエネルギーを掛け合わせても足りないほどになった。正直、アネルが魔王でも勝てる気はしないが、彼女によれば現在の自分よりも強いだろうということだった。
「っていうか、大丈夫なのか?天使からの制約なんだろ?」
「問題ありません、1週間くらいなら、あたしの空間隔絶でごまかせる。だが万が一ってのもあるからアリスはそれをつけたままにしときな。なぁに、それをつけてても鍛えられないなんてことにはならんからな。」
口調が素になっているがそれに突っ込めるような状況じゃないのはわかっており、アネルの力によって周囲にあった牢が幻想だったように消え、だだっ広い草原になった。おそらく空間内の事象の書き換えだろうから、場所が移動したわけではないとルウンは判断し、これから何を行うのかをアネルに尋ねることにした。
この場にいるのは、アネル、ルウン、アリス、ゲイル、リリナにディオス、ディータとガイン、バガスにその刀の意思、聖魔混合破創刀、の9人(10人)彼らにこの世界の命運がかかっている。しかし、彼らはまだ知らない。魔王が静かに動いていることを…
ルウンの脳裏に一つの疑問が浮かぶ。なぜ魔王はグガルディンをけしかけ力を与えただけで、自分からは何もしてこないのだろうかと。
その疑問の答えを知るのは、この空間が消え去ってからで、今このときにその答えがわかったとしてもすでに手遅れだったのだ。
この世界は確実に終わりに向かっている。
ちょっとパソコンの調子が悪くて、更新が遅くなりました




