〜勇者の師匠的なモノ〜
「悪いなゲイル、俺、アリスと結婚するんだ」
「ごめんね、あなたが私のことを好きでいてくれてたのは知っていたけど、ルウンのことが大好きなの。だから結婚するわ!当然、祝ってくれるわよね」
純白のタキシードを着たルウンと同じく白い華やかなドレスを身にまとい、薄く透き通るベールの先には、美人というものが霞むほどの絶世という言葉が似合うほどの顔がゲイルを見ていた。周囲はお祝いの拍手や声が響き、教会の鐘が鳴り響く、その音がゲイルの頭にこだまする
「うわぁああああぁぁああああ!!」
ハーチラス城にある数百の客間のうちの最も豪華な部屋に寝かされていた、ゲイルが叫び声をあげると、ステータス補正によって謎の破壊力を持ち、震度4程度の揺れが発生した。が、それはとっさに反応した、アネル女王の空間遮断によって被害を抑えた。
「急に眠ったと思ったら、今度は何でしょう?ゲイル=アゲイン」
そう言いつつ、もアネル女王はゲイルの方をみずに、とある方向を少し心配そうな表情で見つめていた。ゲイルもその視線の先を見つめると。アリスの左手の薬指にルウンが白く輝き、金の窪んだラインがありそのラインの所々に緑色に発光する鉱石が埋め込まれている指輪をつけているところだった。
「る、ルウンさん?こ、これは…まさか結婚式!!?」
「ルウンさん?おはようゲイル、結婚式?何言ってんだそんなのまだできるわけがないだろ?これはディータ博士に作ってもらった、いわゆる制限装置の簡易版ってところだ。」
ゲイルは、制限装置という言葉に引っかかりを覚え、アリスに近づく、うん、確かにアリスの持つエネルギー量は圧倒的に多いが…人間の中で突出した程度だろうと思う。
「これは、どれぐらい力を抑えてることになってるんだ?」
ゲイルはアリスのつけている指輪を見つめながら、質問を口にする。
「俺の計算上だと、アネル女王がつけている制限装置の半分くらいの効力を持っているはずなので恐らく50分の1ほどの力になっているよ。」
「50分の1!!?それでこのエネルギー量だと!!?しかしそれだと、敵に装着すれば弱体化も図れるんじゃ…」
「そうはいかないんだよな、俺もそう思ってディータに頼んでみたが、アネル女王のつけているものは絶対的な強制力があるみたいなんだけど、このアリスにつけてるやつは、装着者が拒否した段階で破壊されてしまうらしいんだ、試しに俺もつけてみるが…」
とディータ博士から幾つかの腕輪やら指輪やら形の違う試作品をもらって装着するが、いざ力を入れると簡単に砕け、下がっていたエネルギー量がすぐに元に戻ってしまった。
「これに関してはこの世界の法則なのか、いくら改造をしてもこのシステムだけはどうにもならなかった。だから、アネル女王のつけているものがどうして壊れないのか、もっと研究してみたいんだけどね」
「そんなことをしている暇がないのはわかっているだろ?それにどう見繕っても魔王の強さは異常だろう、それはこいつから聞いたことだが、ゲイル貴様の数百倍のエネルギーを有しているらしい、インフレどころの話ではないな」
ガインはそうグガルディンを親指で指し示しながら言うと、再び視線を移動させグガルディンを見つめたゲイルは、一瞬固まった
「え?こいつ…このエネルギーの質感…もしかしなくても世界に存在する3竜が1柱、魔界の最高戦力と呼ばれる破壊竜グガルディン?」
「そう呼ばれるのはなかなか久しいな、だが安心するがいい人間の勇者よ。俺はすでにルウンに敗れた身。これ以上敵対する気もないし、いざとなれば協力をするつもりだ。」
「え?敗れた?ルウン、お前竜に勝ったのか?」
「そうですよ、ルウンは私とグガルディン2体の竜を倒したのよ」
とドヤ顔で言う、ベルを見たゲイルは、ため息をつく
「いやいや、お嬢さん嘘はいけない、グガルディンは一目でわかるほどのエネルギーを有しているし、その質からはっきりわかるが、君のはどこかぼやっとしてるし、総量も確かに多いが伝説言われる竜には遠く及んでいないよ」
「そ、それはルウンに渡し過ぎてしまっただけで…」
「いじめてやるな、ベルは正真正銘、創造の竜ディベルバンだよ。」
「いや…まぁいい、んなことよりも…だ、聞き捨てならないことが幾つかあったんだが、ルウンお前、グガルディンに勝って、ディベルバンから力をもらったのか?」
「ん?時系列が逆だし、グガルディンっていうよりは、魔王に力を借りた、神壊竜ギュラディノスだったけどな。」
「そ、それにしては、お前のエネルギー量が少なすぎねぇか?」
ゲイルは取り乱しながら、ルウンを問い詰める。ゲイルの目ではバイラには及ばないものの敵の力量をほぼ的確に計ることができたが、その目を通してみたルウンのステータスは、明らかに一般よりは上回っているものの、とてもじゃないが竜に勝てるものではない。それを判断して言うが、すでに疑ってはいなかった。
「それは俺の能力の主体だったスキルが消失したからだろうな。俺の筋力ステータスをバカみたいにあげてたユニークスキルを含めて全てなくなって、レベルも1に戻されてしまったからな」
「つまり、スキルなしでレベルアップでのステータスの上昇もなしでそれってことか…」
ぼそぼそと呟くように言っていたゲイルの言葉は聴覚強化を失ったルウンには聞こえなかった
「にしてもディータすげぇな、たった三日でこれを完成させちまうんだもんな」
「いやいや、それほどでもあるけどね」
「え?あぁ、俺が来る三日前から依頼してたんだな。」
「いや?依頼したのはアネル女王だが、お前が来た日に頼んだんだ」
「ってことは俺が寝てたのは3日間ってことか?」
「あぁ…なんかアリスの名前を呼びながら呻いてたぞ?」
それも大変まずいことだが、ゲイルの脳裏にはもう一つ重要な案件が浮かんでいた
「あの…この辺に腰に刀を差した、野盗のような男を見かけませんでしたか?」
と汗をダラダラ流しながら、問いたゲイルに、思い出したかのような素振りで
「あぁたしかに、バガスと名乗るそんな出で立ちの男が、城の近くを徘徊してたな」
「あ…すいません、その方は俺の師匠です」




