〜勇者帰還!名はゲイルといったモノ〜
「え?」
ルウンが驚きに声を上げる、推測はできていたはずだ、ルウンはいままであった出来事を思い出しながら思案する。明らかにおかしかったのは最初にグガルディンに会った時のあの一撃だ、見た感じでしかないがあの当時の俺の全力の10分の1はあったと思う、少なく感じるかもしれないが、たやすく地を砕く力だ。それにまとっていた時のあのエネルギーの色、明らかに金色が混じっていた。ここもルウンの推測でしかないが、金色のオーラは神の力なのではないかと考えている。故に天使はいわゆる神の使いだから、使えてもおかしくはない。
「知らなかったが、勘付いていたって顔してますね」
「それなりにヒントはありましたからね」
「そうか、やはりアリスは覚醒してたんだね」
「お母様が天使だということは知っておりましたが、私まで…」
アリスが自分の胸に手を当てて、心配そうな表情でアネル女王を見つめた。
「実際にはあたしとガインの子だから天人と呼ばれる種族になるんだけどね。ずっと覚醒はなかったから、あたしの力は継がなかったかもと思ったんだけど、しっかりついでしまったんだね。」
静まり返る部屋の中、正直何を言っていいのかわからない
「何かまずいのか?」
「非常にまずいね、あたしは天使であってすでに天使じゃない。天使として持つ能力の99%を制限するという制約を掛けられ人間界に来ることができました。本来天使と人間が交わることなどあり得ないことだったので、他の天使たちもあたしが結婚することを特に気にはしなかった。」
アネルは腕より長い袖をまくり、右手首につけられた、謎の装置を見せた。大きさは男性用の腕時計ほどだが、特に装飾もない白色をベースに金色の溝がある、そしてその金色の溝に発行する黄緑色の宝石が幾つも埋め込まれていた。
「そして、この場にディータ=アゲインを呼んだ理由でもある」
「なるほど、女王様のご依頼とあらばぁああ!!」
突然、アネルがディータを蹴り飛ばした。
「その呼び方はやめろっていってんだろーが!」
あれ?おかしいな99%制限されてるんだよね?それでこれ?俺ですら反応できなかったんだけど。とルウンが思いながら、ガインを見ると少し涙を流していた。っていうかディータあれ、死んでねぇ?
壁に埋まってぴくりぴくりとするディータ博士を心配していたルウンだったが、自分専用の回復役を持っていたことを思い出して、視線をアネル女王に戻そうとしたが、すでにアネルはルウンと対面する席に座っていた。
「まぁ、あのバカにはあとでこれの複製が可能か依頼してみるよ、それで、あたしは君に聞きたいことがあるんだよ、ルウンくん」
唐突に名前が呼ばれたことと、真剣になった眼差しに一瞬固まってしまったルウンの背後にまわったアネル女王が緩く首を抱きしめる形で腕を回した。速すぎる
「アリスのことをどう思っているんだい?アリスの様子を見ていれば、君に惚れていることは一目瞭然だ」
「え?そ、そんなにわかりやすい?」
アリスは、顔を赤くして手で顔を覆っている。ルウンは前に直接本人から聞いているため、新事実!のような驚きはないのだが、答えた覚えはない。
「ルウン様はわたしの…」
リリナの首筋に手刀を当てるアネルの表情は冷たい
「たかが亜神があたしの娘に勝てるとでも?正室はアリスであなたは側室ぐらいなら許可してあげるわ」
圧倒的な戦力差にリリナは黙る、しかしその目には闘志が燃えていた。しかし、それ以上に発展することはなかった。
「俺は、アリスが好きだ。それは心から思ってる。だから、だから俺と結婚してほしい!」
「え?え?え?!!?」
「ルウン君、まさかそこまで…いや俺の判断は無意味だからな」
当然の混乱を見せるアリスに即座に言葉を発したガインが、アネル女王を見て黙る。そのアネル女王は一瞬驚きの表情を見せたが、すぐ優しい顔で微笑んだ。
「そうかい、これで少しでも渋るようなそぶりを見せたら、ブッこ…じゃなかった、しばくところだったよ。ならすぐにでも結婚式をっておもうんだけど、今はそれどころじゃないからね」
「やはり気づいていたんですね?魔王のことを」
アネルの物騒な言葉を聞き流し、ルウンは魔王のことを確認する。
「当然だよ、さっきから、あたしの動きをみて驚いているようだけど、天使の戦闘力は悪魔の100倍で今のあたしは、高位悪魔1体分とほぼ同等なのよ」
「凄まじいインフレだな、天使の軍勢とかいたらそれこそ世界が終わりそうだ」
「それは無理だな、天使はあたしが天使だった頃で7人しか居なかった、つまり今は多くとも6人しかいない。まぁそれでも悪魔600体相当の戦闘力だから驚異ではあるだろう」
なるほど、だからアリスの力が天使にばれてしまうと、アリスが天使に連れてかれるか最悪殺されるかってことか。
「まぁ、あたしの感知で知った魔王の情報は、天使よりも数倍強いエネルギーを常時まとっていることと、天界に居るということだ。つまり、あの天使を全て殺して天界を陣取っているということだろう。あの気高き天使どもが魔王につくことは考え難いからね」
今度はゆっくりと歩き、椅子に腰掛けアネルは扉の方を向くと、左手の人差し指を扉に向けて軽く動かすと、すぅっと扉が開いた。その途端に周囲の音が聞こえたことから、先ほどの魔法かどうかは、わからないがアネル女王のかけた物は空間の音を遮断するもの…いや、ルウンの感知ですら周囲を知りえなかったのだから、隔絶された空間だったのかもしれないな。とルウンは考えた。
「お待たせいたしました!アネル=ハーチラス女王様!ゲイル=ロビングただいま戻りました!」
久しぶりに見たその姿は、筋骨隆々のたくましい体をさらに磨き上げており、身長は1メートル90ほどになっていた。前に使っていた短剣ではなく腰には一本の刀を差していた。そして服装もルウンには和装に見えており白い羽織を黒い帯でしめており、紺色の袴を履いたその姿は、なんとなく、刀よりも弓矢が似合いそうだと思った。しかしそれ以上に驚いたのは、そのエネルギー量だどうみてもギュラディノスとタイマンできるレベルの力をつけてきている。今なら確実に負ける自信がある。
「よく来てくれましたね、ゲイルよ。その様子ですと、しっかり修行を積んできたようですね。…レベルはカンストしているようですね」
レベルカンスト!?あのベルから力をもらっても50とかまでしか上がらなかったルウンにとって、その数字は程遠いとしか思えない。だがこいつは成し遂げたのだと思っていながら、みているルウンの視線に気づき、ゲイルは睨み返した。
「ようやくこの日が来た!アリス様をかけて勝負「先ほど、アリスとルウンくんの結婚が決まったぞ?」……なん…だと」
おそらく、ルウンがあった中で最強だと思われる存在が、たった一言で倒れた。




