〜美しきモノ〜
ルウンの前方には、巨大なウサギ型のモンスターが2体ルウンに向かって身構えていた。背後にいる女性の顔は見えないが、ルウンは腰ぐらいのロングヘアーを華麗になびかせ、童顔の顔に不安と希望を込めて、上目遣いに助けを請い、少し潤ませた瞳で自分を見つめているという想像をして、テンションを上げていた。
しかし、目の前に居るのは巨大なウサギ。
ウサギとは言いつつも顔つきは凶悪で、アルビノなのか瞳は不気味に赤く光っており、四肢の先に生えるするどい爪は蜘蛛の前足が金属に変化した時のように怪しく光っていた。
よく観察し、動きを見てみるとごく自然に2匹のウサギは俺に突進してきた。
「お!思ったよりも早いな、でも全然だな」
愚直に真っ直ぐな軌道は、引きこもってプレイしていた弾幕げーに比べれば、レベル1よりも簡単で、接触する直前でカウンター気味にすくい上げるように、腹部にアッパーを食らわせた。
「ライビットに打撃は効果ないわ!衝撃は全部あの…ふわふわの…毛に…?あれ?」
後ろの女性が、今しがた殴り飛ばしたウサギ型の名称はライビットというらしいモンスターの解説をしようとしたが、空を覆う木々にあたり落ちてきたライビットを見て、疑問の声を上げた。彼女の話によれば、あの毛皮はすべての衝撃を逃すとされているらしいが、目の前に倒れる1匹のライビットは、口から大量の血を吐き、殴り飛ばした腹部には、ベッコリとコブシの跡が残っていた。
「うーん、見た目よりも弱いんだな…こいつ」
すでに息絶えているライビットが空を舞うのを見ていた、もう一匹のライビットを睨みながら呟いた。しかし、同族を殺されたことによる怒りからなのか、今度はするどい爪で草木を切り裂くように駆け出し、グワァっと開かれた口からは、これまたするどい牙が顔を覗かせており、俺を食いちぎらんといする勢いで突っ込んでくる。刹那の間で俺の体はライビットの口の中に入った…が、その段階で2匹目のライビットは絶命していた。
死因とすれば、食いつく瞬間に足元に落ちていた少し長めの木の枝を力任せに口の中に突っ込んだからだ。鮮血を吹き出し、輝いていた赤い瞳は、ものの数秒で輝きを失わせた。
「あぁ…しまったな、血みどろになってしまった…この辺に水場とかねぇかな…あ!」
からだがライビットの血にまみれてしまったのに気を取られ、背後にいる女性の存在を思い出すのにわずかな時間を消費してしまった。
「大丈夫だ…っ……たか?」
驚きのあまり言葉を失った。文字通り唖然とし、自分が助けた女性に目を奪われてしまった。
紺色の髪の毛は、しっかりと手入れされているようで、光が少ない森の中でも艶めく光の輪のを生み出しており、つるんとした髪は腰まであり、白人のような透明感あふれる素肌に、大きく鈴のような瞳は、深い藍色に染まっておりその深さは、まるで宇宙の果てを覗いているようで、さらにどうしても中学生男子として目がいってしまうのは、胸当てを着けているにもかかわらずはっきりとわかる双丘と、わざとなのかわからないが、短すぎるスカートと、この世界にもあるのかと感心してしまう、ニーハイのソックスの間に見える所謂絶対領域が抜群の破壊力を持ってそこに君臨していた。
つまるところ、俺の想像の遥か上をいく、美少女だった!!
もう一度言おう、女神だ!
心の中での叫びは、誰にも聞かれないはずなのに、俺の頭には、金髪の超ロングヘアーのちびっ子が拗ねながら、俺に文句を言っている風景がリアリティを持って浮かんでいた。
そのあと、絶世の美少女に伺って近場にあった水辺で顔や体についた血を洗い流し、服は脱ぎ捨てた。一瞬、美少女は顔を逸らしたが、俺は巨大蜘蛛から得た複数のスキルの中にある、『蜘蛛糸』を用いて、服を作り出した。さっきまで来ていた服もこのスキルで作り出したのだが、Tシャツ、短パンという簡易的な服ではなく、もっと動きやすい、上下真紅のジャージに身を包んだ。
正直世界観と合わないかもと、思ったのだが、異世界人である俺が気にかけることではないと思い至った。
「お若いのに、裁縫系スキルまでお持ちなんて、本当すごいですね…どこかの国の兵隊長様とかでしょうか?」
上品に語る目の前の美少女は着替えて、近くの岩場に座り込んでいた俺と対面になるように、同じような岩場に腰掛けた。正直真正面に座るものだから足の間から見えてしまう、純白のアレに時々視線が奪われてしまうが、それを悟られないように
「いや、これはモンスターを倒して手に入れんたんだ、それに若いっていっても俺はまだ生まれてから1日も経過していないんだがな」
「まさか…そんなご冗談ですよね?あれほどの力を生まれながらに有しているなんて…それに見た目からは10歳前後とお見受けしますが…」
俺の体を上から下へみた美少女は、少し訝しげな目を一瞬だけみせて、すぐに上品な微笑みにもどした。
「まぁいいじゃないか、その辺の話は、俺自身も理解していないんだ。ところでさ、名前なんていうの?」
「あ!そうでしたね、助けていただいたのに名前を名乗らいのは失礼ですよね。私の名前はアリス=ハーチラス 冒険者でランクはBです。よろしくおねがします。」
よろしくと言うのと同時に小首を傾げ、にこりと笑う動作は、正直下手な兵器より破壊力があり、本当の意味で戦争さえも終わらせることも可能なのではないかと思うほど、神々しく美しく、可愛らしかった。
「そ、そうか、アリスさんかよろしく。俺の名はルウン=ローレン。生後1日も経過していないのだから役職も属してる部隊などもない」
そういって右腕を差し出すと、アリスはどうすればわからないようで、ジェスチャーで促すと、理解したようでそれに答えた。




