〜データというモノ〜
「俺は…何がしたいんだ」
お前は殺したいんだろ、壊したいんだろ?
「違う…と思う」
力が欲しいと願ったじゃないか。だから俺がお前に力を与えた
「そう…だな。俺は力が欲しいと願った、そして力を与えられた」
願いは叶ったじゃないか、あとはそれを使って思うがままにするだけだ
「…あぁ」
なら目の前にいる敵を全て殺してしまえ、それでお前の強さは確実に証明される。前のお前のように蔑む者もいなくなる
「前のお前?お前は俺の前を知っているのか?」
当然だ、俺はお前なんだから。全てが敵、見える者全てが敵なのだ。だから全て殺せば、問題はない。お前は独りだ
「そう…俺は独りだ」
「ま、まさかさらに奥の手を持っていたとは…」
ルウンの腕にめり込んでいたギュラディノスはいつの間にか離れた場所にいて、体の修復を行っていた。しかしあまりにもダメージが大きすぎるようで、全く追いついていなかった。
「ガァッ!!!」
当然回復を待ってやるなんてことはせず、ルウンの体はギュラディノスに攻撃を加える、初撃のようにまともに喰らうことはなく、超絶的な反応速度でギュラディノスはルウンの攻撃をなんとかガードしてみせる。これはルウンの思考力低下による、攻撃の単調化も原因の一つとなっているだろう。しかしそれでも無限とも言える攻撃は確実にギュラディノスの体を蝕み、たった30秒も持たずに、体はボロ雑巾のようになっていた。しかしそれでもトドメを刺せなかったのは。ギュラディノスの命を削りきる前に、ルウンの体に限界がきてしまったからだ。
「ウガァ!!くがっ!!!!ギィイイィイイイアアァアア!!!!!」
激痛のからだを動かそうとして、苦しみの声をあげる。その声の異常さに敵であるギュラディノスですら近づけずにいた。
「コロ…ス」
かすれるような声でルウンがつぶやく。しかしからだは動かない、動かそうとしても、骨が砕け肉が裂けており動かせない。
俺が力を得て、自爆…結局死ぬのか
体に襲う痛みが、ルウン自身に死を告げる。
ようやく、恐怖の金縛りから放たれたギュラディノスが、ゆっくりとルウンに歩み寄る、今度は本当にゆっくりとだ、ギュラディノスもダメージの処理ができておらず、文字通り満身創痍だ。
死ぬのが怖いか
ルウンの頭に言葉が響く
「怖いさ」
一度は自分で死んだくせにな
「そうだな、だが今は死にたくないな」
どうしてだ?別に変わらないだろ、今だって辛いはずだ、もっとも痛覚なんてほとんど機能していないがな
「いや、これもなかなか辛いけど。あのときよりはマシだ…俺自身の意思はほとんど出してなかったけど、いろんな人と関われてすごく楽しかった。異世界だって関係なかった。俺は独りじゃないって思えたんだ」
お前は独りじゃんないのか?
「あぁ…まだ自信を持って仲間とは言えないが、俺にとって大切なものがたくさんできた」
…
「だから死にたくない、それに俺の大切なものを傷つけられるわけにはいかない」
大切なもの…俺にはないな
「そうか?お前は俺なんだろ?ならお前は俺にとって大切なものだ。」
!!?…お前バカだろ…それを言ったら俺もバカになるのか…ははは…
《スキル『狂戦士』を破棄します。パラメータが変動します。思考能力を正常に戻します。》
《スキル『脳筋』との魂の接続が分離状態から完全接合型に変更されました。》
《スキル『脳筋』が有していた思考回路は全て、ルウン=ローレンの魂にコピーされました。元データを廃棄します。》
「っつ!!!」
急激に戻った痛覚に言葉にならない言葉を発する。体内にあったエネルギーの90%以上を消費して体を治すことに専念してみたが、それでもかろうじて動かせるといったくらいだろう。それでも右腕一本にありったけのエネルギーを込めて構える
「悪かったな、まとも戦ってやれなくて、だがこれで血決着をつけてやるよ」
「くくく…くはははは!!そんなボロボロで何ができるというんだ!」
「お前も人のこと言えるのかよ」
「だな…もうあの方から貸してもらった力も使いきってしまった。もうギュラディノスとは名乗れない、ただのグガルディンだ。だが…晴れ晴れとした気分だな。俺もこの一撃で決めさせてもらおう!」
ルウンは右手にライトグレーの透明感あるエネルギーを収束させる。力強さは無いが、確実に今までの攻撃よりも強さを感じるグガルディンも、同じく右手にエネルギーを収束させていたが、透明感は一切なく、右腕が見えなくなるほどに濃い青色をしていた。
「「うおおおおおおおおおお!!!!」」
クロスカウンターのようになった二人だったが、お互いに威力を0に等しくしており、二人ともエネルギーを消費し尽くして倒れてしまう。




