〜人外のモノ〜
ルウンが地を蹴り地面を砕く、その反動のままにギュラディノスに接近する、その速度は人間どころか多くの生物にすら捉えることができない速度であったが、ギュラディノスはルウンの拳を腕を掴むことで止めてみせる。相当な勢いが出ていたために急停止した瞬間に発生した衝撃は相当だが、それに対してダメージもふらつきも発生しない。視線をそらすことさえしない。衝撃波が発生しそれが消える前にギュラディオスは腕を振るい地面に叩きつけようとルウンを持ち上げる、力任せに振るわれるために体がガクンとなり、肩に負荷がかかる。しかし、ルウンは体を捻り叩きつけられる前に体勢を立て直し両足から着地すると同時に、腕も捻りギュラディノスの拘束から放たれる。
「さすが俺を一度倒した男だ、これだけ自分が進化を遂げたと実感しているのに、まだ対等ですらないと…」
ギュラディノスの手はボロボロになっており、もはや原型を留めていなかった。しかし、エネルギーを手に軽く収束すると手は粘土細工のようになってすぐに元どおりになった。
「だが、勝つのは我だ!!」
ルウンとは対照的に無音で瞬間的にルウンに接近する、そして繰り出される攻撃は、力ではなく手数を優先しており秒間100発のパンチやキックがルウンに襲う、しかし響くのは黒装魔壊て当たって止められた時に発生する乾いた音だけだった。しかし、それでもギュラディノスは攻撃の手を止めず、わずかに受ける衝撃から、徐々にルウンの体は後退していく。周りにはルウンのせいで何もないとは言っても、地面のわずかな凸凹までは当然無くせておらず、後退していく、足元には大きめの石が転がっている。普段ならば、一般人ですら障害物に感じない程度の石にもかかわらず、ルウンの動きを制限する壁としてそこかしこに転がっていた。
ガッと石を踏んでしまい、それが砕けほんのわずかにルウンの体が芯からずれ、ふらつきとは言えないほどほんのごく僅かに動いた。
それを見逃す道理はなく、速度を一瞬だけ更に早めたギュラディノスの拳がルウンの体を捉え、その衝撃に更にぐらついた体に数百発の攻撃が豪雨のように降り注いだ。
叫び声も呻き声もあげる暇がない、それだけ続く衝撃のなか、ルウンは苦し紛れに拳を振るった、それは幸運にもギュラディノスの肩を掠め、連打を止めるきっかけとなった。膝をつき荒く息をするルウンと肩を押さえ、先ほど同様に打撃を受けて変形した部分を粘土のようにぐにゃぐにゃと動き、治す。
ギン!と鋭くギュラディノスをにらみつけると、あまりの殺気に動きが鈍る、さっきのお返しだと言わんばかりに連打を加えようとするが、蓄積したダメージが大きく思うように動かない。そのため、数撃当てるだけにとどまり、当たったものもそこまで力の入っていないものばかりだった。
くそ!!くそ!!どうしてだ!どうしてこうなった!どうしてこんな奴に負けるんだ!!俺の力はこんなもんなのか!!?
力が…もっと力が欲しい!!
これ以上の力を求か
突然頭のなかに声が響く、暴走していた頭が冷めつつあったが、ダメージによりまともの考えられないでいた、思考に割り込むように語りかける声。
力が欲しいか!!!
痛みの信号が脳に伝わり、苦痛に顔を歪める、それを好機と思ったグラディノスの足が動く、ゆっくり、ゆっくりと動く、先ほどは瞬間的に近づいてきたグラディノスの動きが今ははっきり見える。これは別にグラディノスが動きを鈍らせたわけではない。
死を前にしたルウンの脳が現状で生き残るために、加速したのだ。
力を!!!力を!!!
求めよ!!!
俺に力をヨコセェェェェエエエエエエ!!!!!
ルウンをまとっていたエネルギーが消え去った。しかし、まだグラディノスは攻撃のモーションにすら入っていない、接近してきて攻撃に移そうと考えたのは圧倒的にグラディノスの方が早い。
しかし、後出しのはずのルウンが放った拳を、全く衝撃波を出さずに全ての力をグラディノスの腹部に与えた。
《スキル『狂戦士』を獲得。強制発動しました。全てのパラメーターの上昇を思考と引き換えにします》
吹き飛ぶこともなく拳にくっつくようにグラディノスの体はぐにゃりと曲がっていた。
「ウグァアアアァァ!!」
その叫びは決して人のものではなかった




