〜一撃モノ〜
「なんだよ、あの雑魚と同等かよ」
ルウンが呟くと、黒い人型の魔物…この場では黒人形と呼ぼう。ダークドールは明らかにルウンの発言に対して苛立ちを見せている。どうやら言葉を理解し感情を表す程度の知能を有しているようだ。魔物には知能はあるだろうがどの程度なのかは言葉がわからないので知りようがない。
「ワレ…ラガアルジ…ヲ…愚弄するな!」
波うつようだった体表がピチリと固まると、突然流暢に語り出す。それと同時に不安定だったエネルギーも安定しだし、強さの度合いがはっきりわかる。先ほどはグガルディンと同等かと思ったが、僅かに下回るほどだろう。しかしそれでも軍団長1万が相手でも1分とかからずに殲滅してしまうだろう。
「じゃぁ、とりあえず!!」
音速を超えるダッシュで距離を詰め、殴りかかる。ルウンにとっては軽くのつもりだが、相手にしてみればミサイルのごとき速さで迫る物体であり、ダッシュとは名ばかりの破壊行動は、周りにいた魔物の命を容易く刈り取る。その勢いのまま繰り出される拳は万物を破壊する!!
しかし、そん攻撃をダークドールは両手を使いはしたものの腰を完全に落とした状態で完全に止めて見せた!さらに、動きを止めたルウンに向かって放つ蹴りの応酬。力の差はあれど一瞬にして全力を注がれて掴まれた拳を振りほどくのに用いた一瞬の間で、ダークドルの蹴撃を数度食らう。空いた左手で防御をするが、
メキメキメキィ!!
ルウンの腹部にダークドールの蹴りがめり込む、
「う…ぐぁあああ!!」
久々に感じる激痛と口に広がる胃酸の酸っぱさが、ルウンの思考を真っ白に染めていく。
「うあああああ!!!」
突如動き出したルウンの速度は初速にもかかわらず、空気の波が生まれるほどで、ダークドールの戦闘力がいかに高くとも反応できるものではなく、ただ無防備にルウンの生まれて初めて放つ相手を殺すことを目的とした
全力の一撃を放った!!
スゥ
その場にいた者は、皆同様にこの戦場が無音になったことを感じた。力のある者は察した 死 を。そして脳が支持を出す前に一斉に逃げ出す。が間に合わない。ディオスは逃げ遅れかけたが、ベルの判断により九死に一生を得た・・・
ゴガガッガガッッガアアアアガッガアアッガガガガ
不気味に響く重低音とともに広がっていく空気の膜。その膜に触れた途端シュレッダーにかけられたように粉々になっていく周囲の生物植物地面関係無しに、全てが粉々になっていく。
破壊の一撃
まさにそう呼ぶにふさわしい一撃により、ルウンを中心とした半径100メートルの物質は消滅し、深さ20メートルのクレーターが出現していた。さらに半径1キロの魔物が死亡。まだ軍が到着する前でよかった、でなければ、ルウンは大量殺人者になっていただろうから。あまりに遠かった場所にいた魔物に生存者はいたものの、操られた身でありながら恐怖心により、ルウンに敵対を示す者は居なくなった。
ただ一人を除いて
「いやぁ、まさか俺様が直々に力を与えた魔物の軍勢がたかがパンチの波動にやられるとは思いもしなかった」
暴走状態のルウンの目の前に現れたのは、以前あった鋭い犬歯と左目の下にあった渦巻き状の文様はそのままに皮膚が褐色とは言えないほど黒い肌に、充血したような赤い目にそれらに似合わない金色の瞳を有していた。全身を真っ黒の包帯のようなものに巻かれた、グガルディンだった。
内包するエネルギー量は以前の10倍以上、溢れ出るエネルギーは方々に散られていく雑なものではなく、一本の剣のようにピンと張り詰め、軽そうな口調とは裏腹に存在感は厚く重たくなっていた。
「自己紹介をしようか、俺様の名はグガルディン、神の力を有する者となり、進化を遂げた。その我の名は 神 壊 龍 。ルウン=ローレン、貴様に終わりを告げる者だ!!」
しかし、思考を止めたルウンに会話はない、ただ行動を起こさなかったのは、理性によるストップではなく、相手の力量を見極め確実に殺すための算段を立てていたからだ。
そして、ルウンが構えると同時に完全なる臨戦態勢に入る、衝撃波だけで全てを滅する力を持つルウンと全てを破壊するギュラディノス、二人のエネルギーのぶつかる。




