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自殺転生〜死そして生へ〜  作者: 月山
転生そして異世界へ
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〜迫害されるモノ〜

ドッドッドッ

草木の生えない乾いた土を力任せに踏みしめ、その反動で生まれる力を 推進力にルウンは広大な大地を駆けていた。


「くそっ…くそ…どいつも、こいつも一緒かよ、俺をあんな目で見やがってぇ!!」


叫び声とともに一層踏み込みを強くする、その足跡が産み出した巨大な地割れによって、この地域で様々な環境の変化を起こしたのをルウンが知ることになるのは、少しあとのことだった。


「はぁ…はぁ」


ようやく体力が限界に近づき、立ち止まって立ったまま膝に手を置き、息を整えていた。その視線の先には、先ほどまであった乾燥し固まった土は無く、(くるぶし)位の高さの草が一面を埋め、空を見上げると、てっぺんに輝く日を遮るように背の高い木々が生い茂っていた。


「随分広い森だな…」


視界の先は全て森で、昼間だというのに奥の方はほとんど光が入ってこず、薄暗く不気味な雰囲気を醸し出していた。背の高い草木も所々生えているようで、人が侵入するのを拒む、天然のバリケードとなっていた。


「…まぁいくところもないし、森の中なら果物とかあんだろ」


誰に聞かせるわけでもない呟きは、木々が風によって起こるざわめきの中へと消えていった。しかし、空腹による腹の音は、それさえも上回り盛大に鳴り響かせ、満たすモノを求めるため、森の中へと足を踏み入れた。


草木は足を絡ませ、木々は道を塞ぎ行く手を阻もうとするが、ルウンの前では紙切れ同然であり、蜘蛛糸を引きちぎった時の倍近く筋力ステータスが高くなっているルウンが大木に手を触れれば、棒倒しの最後の一押しをしてしまったように、あっさりと爽快に豪快になぎ倒された。


簡単に進むことができる獣道だが、目当ての果物は無く、いるのは虫やネズミなどで元日本人であるルウンにはそれらを食べるという発想がないのは至極当然なことで、いくらこちらの住人であっても手を出すのは最終手段といえるものだ。しかし実は、ルウンの頭上には、所狭しと果物が実っていたのだが、果物といえば色鮮やかなものである、という先入観があるルウンには、生存率の低い異界の森の捕食される側の植物たちが、知恵を振り絞って自己品種の改良を務めた結果、果実の下方が迷彩となっているので、それを見つけ出すのはとても困難といえるだろう。


結論だけでいえば、1時間近く探し回ったルウンに腹の中には、未だ何も入っておらず、腹の音も諦めたのかもう鳴ら無くなっていた。


「くそっ!」


苛立ちから、一本の木に八つ当たりの蹴りを食らわせると、先ほどまでの木々とは違い、へし折れることは無かったが、ルウンは空腹で力が入らなかったのだろうと無理やり結論付け、興味の矛先を落ちてきた、りんごのように赤い球体が葡萄みたいにたくさん実ったものへと向けていた。


「これ食えんのかな?」


そう呟きながら、鼻に近づけるととレモンのような酸っぱそうな匂いと、完熟した桃に近い甘い匂いを醸し出していた。空腹でなければもっと吟味してから、食すことを選んだだろうが、状況が状況なだけにルウンは、即座に果物を口の中に放り込んだ。


なん…だこれ。確かに香りはレモンのそれに近かったが、常温なのにひんやりとした口どけ、桃とりんごの中間のような酸味と甘みが絶妙にかみ合っており、飲み込んだ後にも食堂から戻るような強い香りは、後味さえも高級フルーツを口に含んでいるかのように濃厚に濃密に飲み込んだ果物を口内に再現していた


空腹により食欲が暴走したルウンは、毒が含まれていたらなどと考える思考回路を残すことはせず、ただ一心に果物を口の中に頬張り味を堪能しつつ、胃袋を満たしていった。そしてお腹が満たせれるのと同時に、ルウンの体に力がみなぎるのを感じた。


推測が正しいのか確認する術を持たないが、ルウンは、スキルの発動には体調の良し悪しが関係するのか、それともカロリーか何かを消費して維持しているのかなどと考えていた。


しかしその思考を止めたのは、自然の音に紛れた人間の悲鳴だった。


それも女子!


元々いじめられっ子だった、ルウンに彼女がいた経歴はなく、異世界ものとしては可愛い美少女が主人公の周りにいるものだ、というくだらない算段があったのは間違いないが、体がとっさに動いた理由の半分以上が男として、女性の悲鳴に向かわ無くてはならないという、男気があったとルウンは断言できる。


腹が満たされたルウンは、生まれた村を飛び出した時と同じかそれ以上の速度を持って、声の方へと走った、声が聞こえたのだから、さほど離れていなかったものの、ルウンの足は目測で600メートルはある距離を3秒もかからずたどり着き、悲鳴を上げた人物を自分の背後に来るように立ち入り、目の前の巨体を見据えた。


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