〜女というモノ〜
ハーチラス王国に戻るとルウンは一息つくために自分の領地に建てられた家の最も広い部屋であるリビングに倒れ込んだ。
「はぁ…つかれた」
誰もいないことは確認済みのため、この言葉は独り言となるのだが、正確に言えばルウンの中にいるデスラインへと語りかけていた。直後ルウンの顔の前あたりに血のように赤黒い雫状の生物…つまりスライムが現れた。
「別に口に出さなくても、俺に伝えようとすれば伝えわるんだけどな」
「…どうでもいいけど、なんかお前変わってない?」
そう、もともと赤かったデスラインの体は一層赤くなり、さらに黒さも増していた。色合いだけを見ればあのデスラよりも純度が高い色合いだったが、ルウンに取り込まれているという影響もあってか、内包するエネルギーは多くなかった。
「あの女のエネルギーのせいじゃねぇかな?結構な純度の高さで無理矢理突っ込まれたたからな、おこぼれって感じで俺にも渡ってきたんだろ」
「それじゃ、トラクアもか?」
「確認してみればいいんじゃねぇの?」
投げやりな言葉でルウンにトラクア具現化を促してみるが、言葉の中に妙な雰囲気を漂わせいた。
「トラクア、お前も出てこい」
よくよく考えたが、デスラインが具現化した時は、必ずトラクアも一緒に具現化してたよな…というルウンの思考の先にある答えと目の前に現れたトラクアはルウンの想像を超えていた。
「仰せのままにルウン様」
なぜか、ちっこい人間のような形になっており、ずっとしゃべらなかったのに今こいつは流暢に話した。その姿というのもどこか大人っぽく銀色の髪を長くして…と、小さい妖精のようだなと視線を下げていったルウンが見たモノは、サイズは小さいのに大きな二つのお山だった
「あれ?トラクア…いやトラクアさん?お前メスだったの?」
「メスというのは些か語弊がありそうですが、一応女ですよ。それに厳密に言えば私はトラクアではなくトラクアに与えられた亜神の力の源とも言える存在です。」
「ん?じゃあトラクアは一体どこに…そういえばあれはもう外殻しかないってデスラインも言ってたよな」
「そうですね、概ねその通りです。なのでどうか私のことはトラクアではなく別の名前をつけていただきたいのですが…」
そう、上目遣いに言ってくる銀髪の美少女はよくみると、口元にほくろがありたしか、セクシーほくろと言っていたな…などと何時ぞやのテレビを思い出しながら再び視線を全身に這わせる。小さいけれども、しっかりとルウンの本能を刺激する容姿。だが、さすがに気恥ずかしさがうわ周り、白いワンピースのような服をサイズに合わせて作り、上からガボッと着せる。
「じゃあお前の名前は、リリナだ!」
「命名有難う御座います、そしてこの純白のお召し物、一生大切にいたします」
そう言って微笑むリリナに、ルウンもつられて笑ってしまう。その光景を見ていたデスラインは
「…俺も名前と服欲しいな」
「え!?」
驚きに目を見開く。そして、赤黒いスライムは人の形になって、わずかに色黒の美男子がそこに現れた。ベルよりも一層赤が濃く黒い髪の毛はツンツンと尖っており、目は開いているのかわからないほど、つまり糸目だ。
「俺は、もう本体とのリンクは切れていて、すでにデスラインではないわけだ。にもかかわらず、お前はずっとその名で呼び続けるし…まぁそれでも良かったんだけどな。でもその蜘蛛女につけるんだったら…と思ってな」
つまるところ、羨ましくなったと。しかし、スライム姿もなかなか良かったが、人化した方も漫画のキャラっぽくてかっこいいな。
「よし!今日からディオスの名を使うがいい!そしてお前にはこれだ」
もはや衣服を作るだけなら、どうなって作っているのかも見られずに作成可能な速度に達していた。しかし、今回は着色もしていたため、完成まで10秒も有してしまったが、赤黒い半袖シャツに黒のジャケット、ジーパンの素材までは再現できなかったが、見た目はそれと同様にした。
「なんか。この素材しっくりくるな…それに割とセンスいいじゃねぇか」
そりゃな、ファッション雑誌を見て研究していたこともあるから…まぁ実践したことは一度もないんだがな。
「ところで、気になったんだが、リリナもディオスも大きさはそのままなのか?等身大くらいにはなれたりすんのか?」
その問いに関して、ディオスは首を傾げたが
「ルウン様の許諾と体内に蓄積されていますエネルギーの0.2%ほどいただければ可能ですし、もし何かあればすぐにルウン様の中に戻すことも可能です」
なるほど…それなら万が一ってこともなさそうだ。だが…もしこいつらのどちらかが俺を一撃で倒せる力を持っていたら…いや、それはないだろうし、俺のエネルギーを元にしてるんだから俺が死んだらこいつらも一緒に消えるんだろうな
「ものは試しだな!」
そう言って、イメージというか感覚だけで二人にエネルギーを送ると、揃って発光しだし影だけでしか判断できないが、ディオスの方は確実にルウンよりも身長が高かった。そして発光が収まると二人の姿をはっきり見ることができ、直前に渡していた服もルウンがイメージした通り、着用者に合わせた大きさに自動で変更されていた。これは、ルウンにも理解はできていないのだが、恐らくだがベルからもらったエネルギーの中に創造の力が紛れ込んでいたのではないかと、勝手に納得していた。
「おお!これは素晴らしい…というかお前、俺と初めて戦ったときより圧倒的に強くなってないか?」
そう、等身大になってわかるが、デスラインとしてルウンの前に姿を現した時よりも、内包するエネルギー(ルウンのを取り込んでいるせいもある)と体を纏うオーラの濃さが強さを物語っていた。
「そうか?それは知らんが、お前も明らかに強くなってるだろ」
そうか?と疑問に思って自分の手を見るそぶりをしていた
「ルウン様、私はどうでしょうか?」
リリナの方は、もともと美人だとわかっていたので、驚きはなかったが、大きいな、と思っていたそれは、等身大になって理解した。爆がつくくらいでかい。それとスタイルの良さが相まって非常に直視しにくい体をしている。
「いい、めっちゃいい!」
「も、もったいなきお言葉!ありがとうございます」
ほおを染めるリリナ、その姿を見て微笑むルウン、しかしその微笑みは不意に感じた、強烈な殺気により引き攣った笑みになる。同時に背筋に冷や汗が流れる。
「あ…」
ディオスが声を上げる。しかし、リリナはニヤリとした不気味な笑みを顔に浮かべていた。
「ルウン?その女の人誰でしょうか?随分親しそうですが…?私というものがありながらどういうおつもりでしょうか?」
アリスの声のはずだが、冷たすぎる…
「私よりも格下のあなたが、わたしのルウンのそばにいて良いと思っているんですか?」
ベルも強烈なオーラを交えて、リリナを威圧する。が、リリナも内包するエネルギーを外側にあふれださせ、二人の殺気に対抗する
「そ、そのエネルギーはルウンの…」
「その通りです、ルウン様のものはすでに私の中に巡っているのです。つまりルウン様とは一心同体なのです!」
「な、なにおおおお!」
アリスが飛びかかったのと同時に他の二人も戦闘態勢にはいり、ルウンの家の中で激しい争いが始まり。アリスとベルについていた、ガイン、ディータ博士そしてルウンとディオスはソファに座り、ディータが持ってきたコーヒーのような液体をカップに入れて飲んでいた。




