〜行為と好意を受け取ったモノ〜
「ま、まさかこれほどとは…」
「さぁ、俺が勝ったんだ、最初っから俺にはお前に敵対する意思なんてなかったからな」
「そ…そうですね」
ルウンはベルの方へと歩み寄る、ルウンが睨みつけるようすると、なぜかベルは視線を逸らした。その動作の真意に気がついたのは、遠くで見ていたアリスだけでだった。
「しかたありません、ですが、このまま私が去ったとしても何も進展しませんからね」
突然一人称を変えたベルが視線を上げると、近づいていたルウンと目が合う。先ほどまでまとっていたオーラも無くなり、金色に輝いていた瞳も今はルビーのように煌めいていた。ただでさえ美人というに相応しい顔立ちの目の前の美女にルウンは、言葉を失う。かすかに流れる風のせいで揺れる髪の毛から漂う柑橘系のような爽やかな甘酸っぱい香り。ベルの方が身長が高いせいで、ルウンからは身上げるような形になっていたが、ゆっくりとした動作で屈む、目線の高さが合いいくらこちらの世界に来て精神状態に大きな変化があったルウンであっても根本は男子中学生であるために、緊張で体が固まってしまう。そしてその隙をつかれベルに唇を奪われてしまう
「え!?」
突然のことに固まるルウン。別の理由で少し近づいていたアリスが固まる。
「ふふ…驚かせて申し訳ございません」
「な、なななな、何してんだよ」
怒鳴るつもりで声を発するが、気がぬけているのか声に張りはなく。手で自分の唇を抑えて困惑を隠すこともできなかった。
「人間の恋人同士がするような意味合いはもたせておりません、私の力を少しだけですがルウン、あなたにお渡ししただけです…少しだけ好意もありますが」
ベルが後に付け足した言葉はルウンの耳には届いておらず、その前の発言の衝撃が大きかった
「どういうことだよ、お前はその魔王を倒すために力を蓄えてたんんだろ?それを俺に渡していたら意味ないだろ!」
当然の疑問をベルに投げかけるルウンだが、それを見ていた第三者からすれば、その理油は明確でそれに気づかないルウンに多大なもどかしさを感じるところだ。
「確かに、私が力を蓄えることが、この世界を守り抜くために最も有効な手だと考えておりました。ですが、ルウンに賭けてみたいと思ったのです!」
《想像の竜のエネルギーを獲得しました。》
《一定の経験値を獲得しました。レベル15→レベル50》
《身体年齢が上昇します。11歳→16歳》
《スキル『竜力』を獲得しました。魔法が効きにくくなります。炎耐性が付きます。魔力を消費して口から炎を吐くことができます。》
頭の中に響く声が聞こえたのとほぼ同時に、ルウンの視線の高さは変わっており、転生前のと同じか、ほんのわずかに高いくらいになっていた。
「えぇ!!?おまっ!どんだけ俺に渡したんだよ!」
「うーんと、大体森3つ分のエネルギーですね。」
そもそもどれだけベルがエネルギーを蓄えていたか知らないが、少なくはないだろうと思った。
「ところで…そろそろ私のことはベルと呼んでいただけませんか?」
成長したにも関わらず、まだルウンより高いベルに少し潤んだ瞳で言われれば断る術など、ルウンに備わっておらず、よくよくベルのことを見ると、もともと開けていた胸元から、下着をつけていないせいもあり、豊満ではない胸のトップまで見えそうであったことに気づき、とっさに目を背けた
「わ、わかったよベル。」
「ありがとうございます!」
「ル!ルウン!!さっきから何をしているの!?めちゃくちゃ強いみたいだけど、この女だれよ」
アリスらしからぬ言葉遣いとテンションでルウンに詰め寄る。
「どうしたんだよアリス!落ち着けって」
そう言って落ち着くわけがないのは、どの世界の女子も同じらしく、ベルが作った簡単な椅子に腰をかけた頃には少し落ち着きを見せていたが、目に宿った殺気は確実にベルへと向けられていた。
「それで、そちらの美人さんはこれからどうしようっていうの?」
先ほど自己紹介させたはずなのにも関わらず、決してアリスは名前を言おうとしない
「ルウンがよろしければですが、これから一緒にいたいと思っております。理由としましては、私がルウンを気に入ったから…ですかね」
「そ、そんなの許すわけないでしょ!?ねぇ、ルウン!」
「アリス、なんかキャラ変わってないか?いや、俺は別にいいと思うけど…」
「やったぁ!ありがとうございます、ルウン、これから私はあなたの力になるべく精進いたします!」
どう考えてもキャラが変わりすぎている女子二人を見ながら、女心は秋の空って言葉があったような…などと思考を逸らしていた。
「で?ベル、目的はなんだ?俺に力を渡したって言っても、魔王を倒すことには変わりないんだろ?」
隣で、ワーワーと騒いでいるアリスをひとまず放置しておいて。まじめな雰囲気を作りながら話始める。体が成長したルウンは、やっと自分にシリアスが似合う見た目になったなという、非常にどうでもいい感動を覚えていた。
「私の最終目標である、魔王討伐…いえ殲滅には変更ありません。しかし、私の力の4分の1をあなたに渡してしまったので、とりあえず元の戦闘能力に戻るまでは、気楽に歩けないので、ルウンのそばにいさせていただきたいですね。自慢じゃないですが、生物最強をほしいままにする竜が弱体化したとなれば、近くの魔物が隊を組んで狙ってくる可能性もなくはないですし、もし私が死んでしまい、その魂を魔物が回収してしまえば、下手すれば魔王より達のわるい伝説級の魔物に成長してしまうことは確定的…です」
なるほど、つまりだ…ベルは失った力が戻るまで、俺の近くに避難するつもりか。
結果として、ベルを受け入れることを決めたのだが、アリスはまだ敵対しているようだった。
ハーチラス王国に戻るとルウンは一息つくために自分の領地に建てられた家の最も広い部屋であるリビングに倒れ込んだ。




