〜王子となるモノ〜
即死しないだけ十分な戦闘能力を持っていると言えるが、それは金剛ダイヤの隠蔽され続けたスキルも一役買っていると言える。そのスキルの名は|所持者自然治癒能力増幅加速能力、そのスキルが発動しているようで淡く発光しているが、それでも完全回復までは相当時間がかかりそうだ、だがそこは持ち前の頑丈さ故か、ふらふらと立ち上がり威勢のいい声を発する
「貴様…なにものだ…この俺を…いやそんなことはどうでもいい…貴様…終わったぞ、俺が国に戻ればお前を殺すための軍を組んでやる」
顔中を歪めせっかくのイケメンも台無しな顔をしていたプリンスから放たれた言葉と、邪悪な笑いを放ち、アリスと部下の大半が顔をしかめる
「それは無理な相談だな」
突然何もいなかった方向から、空間が歪むようにして妙な機材を構えるディータ博士が現れた
「ディータ?なぜこんなところに」
まず声をあげたのはガインだったが、現状を把握しきれていない戦士としてどうかと思うディータ博士は少し呆れたようにため息をつきながら
「いーや、新種のオーガそれもユニークが出現したって聞いたもんだから、戦闘時の行動やあわよくば核なんかを採取したかったんだけど、俺がこいつを起動した直後くらいにルウンがやってきて一方的にボッコボコ、それはもうおっそろしくて止めることもできなかったよ。で、とりあえずこいつで情報収集してたってわけ」
そいってディータ博士が見せてきたのは妙な四角い機械であった。そもそも機械というものがほとんどないこの世界において、ディータ博士が作っているものを理解できているものなどいないわけで、当然その正体もわからなかった。しかし、異世界人であるルウンとガインはそれがなんであるかすぐにい見抜いた
「まさか、それはビデオカメラか?」
「その通り、そしてね、これは当然音声も拾えるわけで、さっきのシーンを再生すると」
ディータ博士がビデオカメラと称するそれをいじると、少し洗いが先ほどのルウンとオーガの戦いというより蹂躙劇が流れる、ずっと爆音だけだった音声に、突然男の声が入る。言うまでもないプリンスの声だ。
『「約束しよう、もし俺がオーガ…いいや?この金剛ダイヤの装備をした俺様を倒せるものがいるならば、どんな生物にだって俺様の現在の地位、王位継承権を授けようじゃないか!当然その場合、俺様と君との婚約も破棄しよう」』
「な…なんだそれ?そんなものが証拠になるわけないだろ!!」
「いいえ、プリンス王子…いやプリンス。貴様はもう王子ですらない、貴様を倒したルウンに王位継承権と貴様の地位が渡ったのだからな」
「ば…馬鹿な!!!そんなこと、ここの全員を始末すれば!!炎の精霊よ、神に仇なすものに神の業火を与え賜え!!」
突如プリンスは発声式魔法、つまり現在主流として使われている、簡易式無声魔法ではなく、魔法が発見された当初に生み出された、国一つを容易く滅ぼす破壊力を持つ古式魔法、その中で最も攻撃力の高い”神の業火”を発動させた。本来神の業火は範囲無差別であったが、それにアレンジを加えているようでプリンスの攻撃は一点集中型の火球となっていた。
プリンスは手のひらを天に掲げ、そこに集中されていく魔力と周囲の自然エネルギーによって巨大化していき、ついには森に火がつくまでとなった、その圧倒的熱量にプリンスの部下だったもの数名が倒れ始め、ガインもディータ博士もさすがに辛そうな表情になっていた、唯一僅かに辛さを感じるもののしっかりと立っているアリスと、パタパタと手を仰ぐだけに留まっているルウンがいた。
「これで!おわりだああぁぁ!!!」
叫ぶプリンスの顔は、とても醜く、王子と呼ぶことを躊躇う形相であったが、放たれた魔法は一級品で、これが弾ければこの森は全て焼き払われてしまうのではないかというものだった。
「熱いっつーの!!」
と繰り出したルウンの拳とグローブの効果によって、一瞬にして消し飛んだ。
「ば…ば、か、な」
その言葉を最後にプリンスは地面に顔面ごと埋もれさせ、意識を失った。
「ルウン…」
「アリス…その悪かった。邪魔しちまってよ…ところでこの金髪誰だったんだ?」
誰だか知らずに殴ったんだ…とこの場にいた全員が思ったことだが、アリス以外に突っ込めるものなどいないわけで、そのアリスが何も言わないのなら誰も聞けないのだ。
「キングダム王国、プリンス王子でした。」
「でしたってのは、まさかさっきのディータのカメラに録音されてた内容…まじになるのか?」
「普通は無理だろうな、だが奴はキングダム王国の中でも厄介者扱いされててな、にもかかわらず力を持っちまってたから、誰も文句は言えなかったんだが、そんな奴よりも強い奴がいて、倒しちまった。さらにその直前に、プリンス自身が王位継承権と地位を譲るって言ったんだ。」
「だがこいつが目を覚ましたら、黙ってないだろ?」
「その前に全部終わらせるのさ、すぐにキングダム王国を目指すぞ!」
「その必要はない!」
ガインの言葉が終わるのと同時くらいに、兵士の一人が叫んだ。皆そろって同じ甲冑のような鎧、兜を装備しているため、顔の区別がつかないが、叫んだものが兜を脱いだ瞬間、周囲の兵士たちのざわめきと、アリスとガインが動揺したのがわかった
「あんた誰?」
明らかにルウンと同じか、少なくとも一つか二つしか変わらないであろう、その者は銀色に輝くサラサとして髪をなびかせ、アリスほどではないが美少女と表現するには十分すぎる美貌と、これはアリスには無い圧倒的なオーラを身にまとっていた。格好は兵士のそれと変わり無いが、身にまとう雰囲気だけで只者ではないと表現してみせるが、ルウンには通じず、なめきった声で尋ねる、直後ガインのチョップがルウンの頭を叩く
「お前!わからんのも無理はないが、相手は王女様だぞ、キングダム王国実質的ナンバー1!クイーン=テクレシア王女だ。」
「王女ぉ!?_若すぎんだろ、どう見たってアリスと同年代くらいだぞ」
ルウンが声を大きくしてガインと話していると、テクレシアはくすくすと笑い出した。その光景に唖然とし何も話さ無い兵士たち、ルウンもガインも一瞬美しすぎる笑みに見とれてしまうが、アリスの殺気ですぐに正気に戻る
「そろそろいいかしら、私は今あなたが説明した通り、キングダム王国クイーン王女です、しかしできればテクレシアと呼んでくれる方が好ましい」
「そうですか、それではテクレシアさん」
ルウンがやっと現状の把握に追いついたのか、テクレシア王女に向いて真剣に話しかける
「先ほどその必要はない、とおっしゃっていましたが、それは一体…」
「我が息子プリンスは、才能があるだけのクズだ、まともに育てられなかった私が言うのもおかしいが、このまま何もしなければ、本当に悪魔のような力を持ち悪の道に進むでしょう。そうなれば、我が国だけではなく、隣国にまで影響を及ぼすでしょう。よくぞプリンスを討ってくださいました」
テクレシア王女は深々と頭をさげる、それにつられるようにルウンが、ほかの全員が礼をする。そしてテクレシア王女が顔を上げると、指をパチンと鳴らして1枚の書類を出した。
「さきほどの件だが、あのバカの記録が残っているのなら、私はそれにのっかり、ルウン君…君にうちの王子になっていただきます。」
こんなにも名誉なことを、王女自身から受け取れて、喜ぶところだと思うのだが、実際面倒臭がり屋のルウンは、え?お前本気で言ってんの?といった表情を見せ、そんなルウンにアイコンタクトをガインが行えば、答えはただ一つ明確に、王子になれと言ってきた。




