〜俺様が弱いモノ〜
「さて、アリス様」
「なんでしょうかプリンス様。こんな木々おいしげ、高レベルモンスターがいるほぼ無人の”フォレスト森林”に連れてきて…部下の方々も率いて、お父様の同行を許していただいた、ということはいかがわしいことをしようとしているのではないのはわかりますが」
フォレスト森林、それはキングダム王国北方に少しいったところにある、所謂狩場と呼ばれるモンスタースポットだ。
「いかがわしいこと…とは何でしょうか?まさかアリス様はそういったことをお望みなんでしょうか?」
森の中を歩く集団とガインを率いるアリスは、金髪の髪をなびかせながら前を歩きつつもニヤニヤとした嫌らしい笑いを浮かべ切れ長の目だけで見てくるプリンスから目を背けた。
森には数多くのモンスターが存在する、魔境の森にいたライビットなどが可愛く見えるほど、このフォレスト森林には高レベルのモンスターが。そして今回プリンスが目的としているのは、最近Sクラス以上ではないかと噂されているオーガが発見されたとして、それを自分のアピールを兼ねて討伐しようという魂胆だ。あわよくばアリスを自分の虜にしてしまおうと考えているわけだ。
「さてそろそろ、報告があった場所だな。」
「噂のオーガのことですか?確か先ほどキングダム城のメイドさん方が噂されてましたので」
「おやおや、うちのメイド達は噂話が好きだな…だが既に各国へ討伐依頼が出ている頃だからな…まぁそのタイミングを見計らっての討伐なのだからな」
「どういうことですか?まさか…」
「そのまさかですよ、俺の名声を轟かせるためには、そのオークには有名になってもらわねば困るからな。そのために犠牲になった者達も俺のためにって思えば救われるってもんだろう。」
っく…とアリスもガインも、それにプリンスが率いていたうちの若い者の数人が口を歪め、揃って心の中でプリンスをクズ扱いしていた。
「それでは、その強いと噂されるオーガを倒すことも容易いと言いたいのですね?でしたら、ここは私と賭けを致しませんか、もしあなたが一人でそのオーガを討伐できたのならば、私はあなたのものになりましょう、しかしそれが叶わぬなら今回の話は一度保留にさせてください」
「なるほど…確かに俺の力であれば、君程度の存在などどうとでもしてやれるが、それも面白味がないそれに自らの意思で俺のもとに来るというのであれば、何も問題はないのだからな。約束しよう、もし俺がオーガ…いいや?この金剛ダイヤの装備をした俺様を倒せるものがいるならば、どんな生物にだって俺様の現在の地位、王位継承権を授けようじゃないか!当然その場合、俺様と君との婚約も破棄しよう」
そう言ってプリンスは、異次元収納魔法により何もない空間から金剛ダイヤで作られた、透明感のある水色の全身防具と全長1.5メートルの両刃片手剣を取り出し、即座に着用してみせる。
「それは随分な自信ですね」
「当然だ、なぜなら俺様は最強だ「ギュアァアアアアアァッァアァアアアア!!」な、なんだ!?」
突然聞こえた、獣の叫び声、よく聞きなれたような声より僅かに低いもののオーガの威嚇にプリンスを含めて、その場にいた全員が驚きの声を上げた。そして次の瞬間、全員が再び驚くことになる、噂のSランクオーガらしき巨体が、目にも留まらぬ速さで右から左へ吹き飛ばされ死亡していたのだから。
「ったく…こんなんじゃ憂さ晴らしにもなんねぇよ。雑魚のくせに…」
そしてそのオーガが飛んできた方向から場違いな幼い少年と、それに見合った若い声が聞こえた。そしてそれを認識しその存在の脅威を見誤ったプリンスが叫ぶ
「ちょっと待ってくれないかな?誰だか知らないが、オーガを倒すのは俺様だったのだが邪魔するなよ、たかがガキの分際で。」
「何言ってるかわかんねぇけど、金髪でいけすかねぇ澄まし顔したてめぇに喋ることねえよ」
「くっくっく、現実が見えないガキだな、まぁいい、この場でてめぇを始末してしまえば、オーガ討伐の手柄は俺様のもんよぉおお!!」
飛び出し斬りかかるプリンス、その剣が向かう先に見えたルウンの姿にアリスとガインが驚きの声を上げるが、プリンスの剣撃を片手で防いだときに生じた高音によってかき消されてしまう。
「うるせぇなぁ…人間を殺すのは気がひけるんだが、てめぇがその気なら…やむを得ないよな」
ためらいなく放たれる拳撃は、プリンスの剣で防がれるが金剛ダイヤの剣も防具も僅かな抵抗もなく砕かれた。さらにそのままプリンスの腹部にまで到達し、その殴られた体は、背中で全てをぶっ壊し地面へ十数メートル埋まった。
体への直撃時に僅かに体をひねって威力を逸らした、そこまでは良かったのだ、ルウンの拳はプリンスの回避行動を行うものよりも速く、初撃を受け流した時にはすでにルウンの拳はプリンスの全身に13発は喰らわせており、その結果が現状のプリンス生き埋めということになる。




