〜国王が恐れるモノ〜
「なぁアリス…」
「な…なに?ルウン?」
ルウンの耳にアリスの吐息がかかる、アリスが息遣いを荒くしながら、小さく声を出す。絡み合っているアリスの足から伝わる温度が、ルウンの思考を乱れさせる。頭の後ろに回された腕に力が込められアリスの胸に顔面を突っ込む体勢になり、呼吸困難と性的興奮が相まってルウンの頭が沸騰した。
「ちょ!!もう!起きろっつの!!」
理性を総動員しそう叫ぶと、半目だった目をぱっちりと開き、事態を認識したアリスが顔を真っ赤にして飛び起きた
ここは、ルウンが購入した2階建ての一軒家であり、決してアリスと二人暮らしをするための空間では無かったためにベッドは一つしかなく、アリスが強引にルウンをベッドに寝かせたために起こった現状である。
ガインとの勝負が終わって、修行を続けることができず、やることを失ったルウンに届いた1通の手紙
「ええっと…ルウン=ローレン殿 貴殿の功績を称え爵位と土地を授けよう デイダ=ハーチラス?これって…?アリスと同じ名字の…」
街の中にある以前ディータ博士などと一緒にいったカフェのような場所で、
アリスを介して受け取ったとても上品な手紙を受け取って、手紙を小さく声に出して読んだ。
「そう、私のお爺様である、国王陛下からの直々のお手紙です。どうか私と一緒にハーチラス城王の間まで来てください」
そう言われ断る理由も無かったルウンは、ただついていった。
ハーチラス城、その名の通ハーチラス家の者が住まう巨大な城。ハーチラ王国の中心に建てられ国内の10%を占めるほどに巨大、しかし実際の建物よりも庭や城壁、その周りの堀に用いている面積の方が大きい。不落城とまで呼ばれるそれは、攻撃力よりも防御力に重きを置いていると言ってもいい。
本来、一般人がこの城壁をくぐろうとすれば、申請に1ヶ月は掛かり、大抵は却下されてしまうのだが、今回は別だ。国王直々の手紙とともに、ハーチラス家の次期国王の娘、言うなれば現国王の孫娘が一緒となれば、申請など不要で城内に入ることができた。
城壁を越えた先はまるで、どこかの楽園かのように花々が咲き乱れ、鼻から空気を吸い込めば、自然の香りを存分に楽しむことができた、音も静かで、隣で歩くアリスルウン自身の足音以外は、草木が風で揺れ擦れる音、水が流れ落ちる音、鳥が 囀 り、全身がリラックスすることができた。
城内に入ってもまさに、といった具合で、総額いくらするか想像することもできないような豪華絢爛な内装に唖然とするほかなかった。王の間とは書かれていないものの、目の前に存在するほかの扉とは比べものにならないほどに細工が込まれ、思う存分鉱石が使われ光がなくとも輝くんじゃないかと思うほどの扉が、もはや国王の間であると自ら主張しているようだった。
その扉を前にすると、王直属護衛兵である二人の兵士が同時に観音開きの扉を開き、ルウンとアリスは王を目視することが出来た。
瞬間、国王デイダ=ハーチラスからルウンに向かって『重圧』がかけられた、がルウンはそれに抵抗することなく、ただ普通に歩いて見せた。理由は現段階でルウンはスキルを全て発動させており、その反則を越えた筋力ステータスを用いれば現在負荷されている100倍の重力どころか100万倍ですら耐えられる上普段の生活に不便など生じることも無い程だったためだ。
「ルウン=ローレンと言ったな。突然の攻撃許してくれたまえ、いくら国王とは言ってもやはり孫娘を心配する爺なんでな」
「ガインさんと同じことを言うんですね」
呆れたようなそれでいて笑いを込めたような声でデイダ国王に返答する。
「貴様!!国王陛下に向かってなんたる口の利き方!この場で即刻死罪にしてくれる!!!!」
「やめたまえ!!!」
ルウンに向かって数十人の兵士が槍を向けて突撃しようとするが、それをデイダ国王の一括で静止してみせる。
「君らが束になっても彼には敵うわけも無いだろう。」
「まさか…こんなガキが?」
「彼はガインを打ち負かしたのだ」
その一言で全員が槍を落とし土下座し
「「「「「「「すんませんでした!!!!」」」」」」」
おいおいそんなんでいいのか?と思わ無いでもあったルウンであったが、それだけガインの実力は兵士達に行き渡っており、それを上回るであろうルウンに敵対しては命など無いに等しいと察したのであろう。
「いや、いいんだ。俺はこんな成りだし、口の利き方もなっちゃいないガキだからな。」
ルウンの発言とクスクスと笑っているアリスの姿によって緊張感を緩めた兵士達はそれぞれの持ち場へと戻っていった。
「再度許しを請わなければならないな、すまない」
デイダ国王にたいして首を振るだけで返答するという失礼を体現したあからさまな行動だったのだが、今度は槍に囲まれることもなくそのまま事が進んだ。
「それで、要件だがルウン=ローレンに子爵とハーチラス王国から北部に小さな空き地があるんだが、その土地を授けよう」
「つまり…俺が貴族か?…だが何故なんですか?俺はそこまで功績を立てた事は無いはずですが…」
「いや、そんな事は無い。あのデスラ=インダンと名乗っていた悪魔を最小限の被害で倒して見せたのだ。寧ろもっと上の爵位を与えてもいいのではないかと思ったんだが、周りが…特に妻がな…」
あぁ…そこもガインと同じなのか…とルウンは思った。しかし、デイダ国王が”妻”と言った瞬間ルウンの背後からとてつもない殺気が放たれている事に気がついた。
殺気…甘い表現だな
ルウンはそう思った時、デイダ国王の表情は恐怖を前面に表していた。




