〜去りしモノ〜
「ガ、ガインさんが…転生者?」
吸収したエネルギーを体内にとどめておくことができず、ガインの体から溢れ出る。
ルウンはつい今しがた聞いた転生者という言葉に衝撃を受けていた。
「あぁ、そうだ。だが今はこれ以上の問答は無用だろう」
エネルギーのゆらめきが静かにそして鋭くなっていき、あちこちから上に向かっていたエネルギーがちょうどガインの頭部あたりで一点に集中していく
「そうみたいだな…ガインさん。」
ルウンの発言の直後、ガインが力任せに飛びルウンに斬りかかる、いつもの洗練された動きではなく素人のような剣の扱い方であった。
しかしルウンには防御できなかった。
あまりにも速過ぎたのだ、ガインの動作が一瞬ブレる。たしかにルウンの速度も音速を裕に超えるが、ガインの動きはそれすらも超えていた。
左肩から右の胸あたりまで浅く切られる。『脳筋』の反射による回避ですら切られたしまった事実に驚くルウンと、躱されたことに驚くガイン。しかしそれで動きが止まる両者ではなく、すぐに互いに攻撃に出た。
このスピードに長けた両者では、防御行動は寧ろ自らの敗北を招く一手としかならず、攻撃にして攻撃を防ぐしか手がなかった。
ガインの剣が剣先が見えないような速度でルウンに向かって5回切りつける、初手では出遅れたもののすでに動きを認識しつつあるルウンはその全てをグローブで防御してみせる。
その度に激しい火花と金属音、そして衝撃はが周りを襲う。正直この場で立っていることすら難しい状況でルウンとガインはもちろん、アリスもその戦いに集中していた。
ルウンの拳がガインへと迫る、間合いの長さが倍以上違う剣士と拳士しかし一度振るえば引かざるを得ない剣とは違い、拳は一呼吸のうちに何度も繰り出される。スピードで劣るルウンだが攻撃速度のみは上回る、
一瞬
ガインの防御が遅れ、これをチャンスとばかりにルウンは左の頬に剣を掠め拳がガインの左肩を捉える。しかしルウンの横腹にガインの拳がめり込んでいた。
「がはっ!!!」
「うぐぬっ!?」
同時に呻き声をあげる、ルウンが視線を自分の腹部を見ると、ガインは剣を手放して素手で殴っていた。
「ははは…やっぱり国内最強って言われるガインさんは強いな…最初に戦ったころと状況が変わってない。でも勝つのは俺です!」
ルウンは距離を取り、クラウチングスタートのような体勢になる。速度でも勝つための構えだ。
その構えから何をするか察したガインも剣をまるで抜刀するような構えを見せて互いに静止した。
一瞬の静寂
アリスは息を飲むのすら憚られる緊張感に包まれ、ただその場で二人の戦いを見守ることしかできない。
アリスの気持ちとしては、どちらにも負けて欲しくはないが、強いて言えばルウンへの思いの方が強かったりする。
そして外で吹いていた風も止み、完全に無音になった瞬間、ルウンは駆け出した。
蹴り出した地面はえぐれ、その衝撃は壁にまで至る、猛烈な爆風がルウンの後ろに生まれそれに応じるようにルウンの体は消えた。
しかし完全に消えたわけではなく、残像のようなものが見える。時々ステップを加え、さも実体がそこにあるよに見える…が、ガインはためらいなく何もないような空間を一閃した。
直後現れるルウンの姿
なんの抵抗もなく胴の部分で真っ二つになる
「お、お父様!!!?ルウンを…!?」
アリスがその光景を見て叫びだすが、逆にガインは舌打ちをして見せた。
そして何かの気配を察して振り向いたときには、ルウンの拳が寸前で止まり、その拳圧だけでガインを先ほどのルウンのダッシュで半壊した壁へと吹き飛ばし、壁に穴を空けた。
「お父様!!?」
ルウンを心配していたアリスだったが、ことの決着を見てすぐにガインが飛ばされた方へと駆け寄る。
「大丈夫だよ…」
砂埃が晴れた先にはボロボロになって剣を杖としてよろよろと立っていた。
「まじかよ…躱されただけじゃなく、立ち上がれんのかよ!?」
そう、ルウンはの最後の攻撃を寸止めしたわけではなかったのだ。あの…あの一撃は高速なんて言葉が甘いと言える程に速かった、にも関わらずガインはそれを躱して見せたのだ、ただルウンの一撃の余波はとてつもなく、結局のところ吹き飛ばされダメージを受けてしまったのだから。
「いてててて…いやぁ…まさかこれほどとはな…やっぱりスキルの差かな?でもなんかクッションがあって助かったよ…って…あれ?」
ガインが後ろを向き、間の抜けた声を出して口をあんぐりと開けていた。それに気づいたルウンもアリスも同じく口を開け、唖然という言葉が似合う姿となっていた。
そしてそこには最早生きているのか分からないくらいにグチャグチャになっているディータ博士がそこにいた。
「やべぇ…さすがに死ぬかと思った。」
喋りながらぷるぷると震えディータ博士はポケットから妙な形の瓶を取り出し開けた口に無造作に中身を流し込んだ。するとみるみるうちに体の傷を治していき瓶の中身がなくなった頃には、すべての怪我は完治していた。
「お…おお、良かったディータよ」
ホッとした表情を見せたガインと瓶の中身が気になって仕方がないといった表情をしているルウンを少しだけ睨みため息をついた
「まぁいいさ、どうやら黒装魔壊の魔法構築破壊属性付与がちゃんと機能していることを確認できたからな。あぁ、ちなみにこれは完 全 回 復 薬なんかじゃない、俺専用の修復薬だ、体の構築を機械で代用している俺だけのな」
そう言うと、ディータ博士はブツブツなにか言いながら訓練所から出ていった。おそらくまたしばらくしたらなにか妙なものを持ってくるんだろうなと思うルウンだった。
「妙な間があったが、俺ではもうルウン君の相手はできそうにないなぁ、あ、ルウン君がスキルを使ってなければ例が「すみませんガインさん俺、スキル一つも発動していないんですが…」え?ルウン君?まじで?」
再び呆気にとられたような表情を見せ、ガインはそのままぶっ倒れた。
それから1週間が経ったが訓練所にガインの姿が現れることは無かった。




