〜小さきモノ〜
「お前…デスラインだよな?」
冒険者集会所から少し離れ周囲に高い建物が無く月明かりが差し込む宿のなか、その光を遮る生物はルウン一人だけで、問いかけの声は他人には聞こえない。
答えはわかっているのだが、なんとなく確かめてしまう。
(あぁ、確かに俺はデスラインだ…だがな我輩は本体の残骸といったところだ、もう本体とのリンクもない我輩はもうデスライン本人とは言えないんだよ)
声に少し寂しそうなものを混ぜるデスラインだが、ルウンは微塵も共感も同情もしなかったが
「で?お前はこれからどうすんの?まさかこのままじゃねぇだろうな?」
それに対する答えは無言によるもので、それは図星であると暗に示唆していた。
(いやぁ、まぁそうなんだけど。本当はお前を乗っ取ろうとしたんだけど、お前脳みそほとんどねぇから乗っ取れなかった!くっくっく、まさかお前のような脳筋にやられるとはな)
「やっぱり乗っ取ろうとしてたんだな…助かった理由がだいぶ複雑だが無事だったのなら別にいい。それより…お前そんな性格だったっけ?」
(ん?あぁ…多分お前の魂の2%を食ったことと、本体方のリンクが切れたことで我輩の精神になんらかの影響があったんだろうな…)
月の傾きが先ほどよりも大きくなっていることに気づいたルウンは、時間の経過を認識したせいもあって心理的にわずかな眠気が襲ってきていた。
「ふわぁぁ…で?お前本当にこれからどうすんの?ほっとけば自然に消滅でもすんのか?」
(消滅はねぇし、お前の意思で我輩を消すことはできない。お前に我輩を上回る魔力があるなら話は別だが、お前は皆無だもんな。あ、あとちなみに消すことはできなくても具現化することは可能だぞ…あ?)
デスラインがそう頭のなかで話しかけていたのにも関わらず、ルウンはすでに夢のなかに入り込み、気持ち良さそうな寝息をたてていた。月明かりはまだ部屋のなかを照らしていた。
ガンガンっと扉が力任せに叩かれる音で、ルウンは目が覚めた。
「なんだよ…結構疲れてんだよ…」
と独り言を呟き、少しイライラを募らせながら扉を開けると、そのストレスは遠い彼方へと吹き飛んでいき、むしろ幸福感に満ち溢れた…のは一瞬だけだった
「おはよ、ルウン。大丈夫?少し疲れてるみたいだけど」
と声をかけてくれたのは、昨日素肌を露わにしてまでルウンを助けてくれた、絶対的美少女アリスであり、彼女の存在がルウンにとっての最大の癒し効果をもたらす存在であり、そんなうなぎのぼりに上がっていく
「おはよう、ルウン君。任務が成功したのであればすぐに来て欲しかったのだがね…それどころではなかったと見える…が、時にルウン君それはいったいなんだ?」
急上昇したルウンのテンションを下げに下げたのは、この世界でルウンに初めて敗北感を味あわせた挙句、その技術に見惚れさせ、結果的に師弟関係になりつつあるガイン=ハーチラスの姿であった。相変わらず鋭い眼光をルウンに向け、朝だというのに寝癖一つ無く綺麗な曲線を描くように後ろに流された銀髪混じりの茶色の髪はどことなく堂々とした獅子のようにも感じた。そのガインが指差し、ルウンに視線を向けるよううながした先はルウンの肩であり、そこにはどこかで見たことあるが、それには程遠い大きさのスライムと…蜘蛛がいた
「なんだこれ…え…まさか、デスラインと…トラクアか!?」
唯一解を得たルウンが驚き声を上げる、デスラインという名前に顔を一瞬引きつらせたアリスは、すぐにいつもの表情にもどし
「ルウン…これはいったい?それにこの蜘蛛は…」
「トラクア…といったな、たしかアルビオンの支配下の村の近くにそんな名前の神格化した蜘蛛がいると聞いていたが…」
ルウンもアリスもガインも揃って、2体の小型生物をまじまじと観察する。
「これって危なくなの?だって片方悪魔で片方は亜神なんでしょ?」
「問題ないと思うよ、だって彼らの力の99.9%はルウンに還元されてますし、それに何かあってもルウンになら余裕で対処できますよ」
ルウンが一泊していた宿屋に訪れた3人目の来客は、昨日腕と首を吹っ飛ばされのちに、見るものに恐怖を刻むタ◯ミネ◯タ◯の姿をしており、いまでは元どおりのバサボサヘアーにぼんやりとした目つき、雑に生えたヒゲ、服装も動きやすさというよりは着心地の良さを優先したようなだぼだぼのスウェットみたいなものを上下に包んでいた。それに昨日はつけていなかった、小さな丸いメガネを鼻に乗せるようにしてつけていた
「あ!ディータ博士!ご無事だったんですね!」
アリスが心底ホッとしたように少し声を大きくしてディータ博士に近寄る。そんあ光景を見ながら、ルウンは面白くなさそうな表情を全開にし、聞こえるかどうかわかりづらい舌打ちを一つだけして、ディータ博士に質問をした
「いまの話…どういうことだ?こいつらの力を還元したとか…まるで俺がこいつらの力を吸収したかのような言い方じゃないか?」
「うーん、吸収ね、その感覚で概ね間違いではないのだが。少し話が長くなりそうな感じがするから、これからみんなでご飯でもどうかな、ルウン君には報酬を渡さなければならないからね、あ!任務の方は俺が勝手に通しておいたから」
そういってディータ博士はあの4次元なんとかのような白衣のポケットから小さな布袋を取り出し、ルウンに放り投げた




