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自殺転生〜死そして生へ〜  作者: 月山
魔族そして戦いへ
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〜名前を知らぬモノ〜

さて、とルウンが呟きさっそく依頼を遂行するための地点へと向かおうとすると、アリスが少し驚いた顔をして止めに入る


「ちょっと待ってください!何も準備せずに行くのですか?」


「え?だって素材回収して帰ってくるだけでしょ?」


と、無知さを全開にだして、あたかもコンビニに行く感覚でルウンが言う。言わずもだがこの世界にコンビニなどない。


「このハーチラス王国の北門…つまり入ってきた門とは逆の門から出て約50キロ先にスライムの群生地である、粘着性軟体生物の森(スライムのもり)があるのです。そこには徒歩で2日から3日かけて行くような距離であって、その分の食料や素材を収納しておける魔術道具も買わなくては…」


アリスの発した言葉に聞き捨てならない単語が混じっていた…異世界の定番


「まぢゅちゅどうぐだと!!!?」


「……」

沈黙が与える攻撃力というのはとてつもない威力と永続性を持つことを実感した。


「魔術道具というのは、その名の通り職人さんが物を作るとき、どういった効果を付与したいかに合わせて構築した魔法陣に魔力を込めて作り上げた道具のことを指します。」


固まってしまったルウンを気にかけることなく、アリスは魔術道具について話し始める


「ちなみによく使われる魔術道具は、どんな水質の水でも飲み水に変える蛇口や、空気を送るだけで火をつける筒などですね。ちなみにこの二つは冒険者にとって必須なので買っておくといいですよ?」


と言って、ポーチから明らかに入らないであろうサイズの蛇口と筒を出して見せた。そのポーチも明らかに入っていれば、不恰好にスカートが膨らんでしまうはずのスカートのポケットに入っていた。


「素材回収の任務には、これも必須ですよ?異空間管理収納庫(インベトリ)搭載のバッグやリュックなどですね。」


異空間管理収納庫、通称インベトリと呼ばれるそれが搭載された物は、魔法の効果により入っている物を圧縮する、というよりは、構成さえている空間を数倍に広げ、そこへ保存するといった代物でポーチやポケットに搭載されている物よりも、リュックなど、そもそも容量が多く入るものの方がより多く収納できるのだ。ちなみに10Lの水が入れられるバッグに、インベントリが搭載されていれば、その10倍の100L分は収納できる上、所持者の負担はリュックの重さ分だけとなる。


「だが、俺は言っちゃなんだが無一文だぞ?」


「そうですね…でしたら今回は私がお金を…「いや、やめておく」え?」


アリスが、ルウンにお金を貸そうと、ポーチの中に手を突っ込みかけたところでルウンはそれを鋭い一言で制した。


「あ、いや、ごめん。お金を借りるのはちょっと嫌なんだ。むかし…いや前世の記憶でロクでもないことがあってな」


そううつむいていうと、アリスが慌てて


「ううん!大丈夫ですよ、それにここで私がお金を出してしまっては何のために任務を受けるんだ、っという話になってしまいますからね」


フォローの言葉を発すると、ルウンは顔を上げアリスに少しゆがんでしまった微笑みを浮かべた。その表情が何を物語っているのか理解できなかったアリスに少ししこりを残した。


無言のまま、近くにあった魔道具が売っている店に入り、本来ならテンションが上がるはずのルウンだったが、先ほどから流れる気まずい雰囲気に言葉を発せる度胸など持ち合わせていなかった。そしてそれはアリスも同様で、初めての対等な関係、対等なはずなのに気を使ってしまう矛盾を含んだ関係。それに関する答えを出すための経験値といった物がアリスにもルウンにも乏しくて、結果だけを述べるのであれば、彼らが沈黙している以上この関係が壊れてしまうことがあっても、修復されることはないのだ。


「これか…」


ルウンがボソッと言った直後、アリスの肩がびくりと震える。それに気づいたルウンは、それ以上の言葉を出せなくなった。


手元にあったのは、銀貨2枚だけで、これは『蜘蛛糸』のスキルで作った1メートル×50メートルくらいの純白の布を作り出し、この魔道具屋で売却して得たお金だ。無制限に作ることができる蜘蛛糸の布は、無限の富を築くことが出来るが、量産すればするほど価値が下がるのは当然のことで、そもそも『蜘蛛糸』はカロリーを消費して作り出すので、現在ルウンはかなりの空腹感を感じていた。


しかしそれで得た金額、銀貨2枚は、日本円と照らし合わせると5万くらいに相当し、それだけあればちょっとした物は買えるわけで、商品に貼り付けてある説明を見て、ルウンは一辺が2メートルの正方形の布を購入し、その後保存食なんかを買って再び外へ出た。


完全に日が落ちた街中に、人通りが少ない中、ぽつんぽつんと距離を開けて歩く二人の影を月明かりがさらに濃くしていた。しかし心に落ちた影は光もないのにただ純然と闇を体現していた。二人とも声をかけれずにいる。


「なぁ、アリス…」


「え?」


「その…悪かった」


決意の顔をしている。


ルウンの表情は影で見えないのに、アリスはなぜかわかった。先ほどの歪んだ笑みは見えていたのに理解できなかったのに…。


「いえ、私がルウンの踏み込んではならないものに触れてしまったからですよね」


「いや、違うんだ…いや、違わなくない。だが、昔の俺と今の俺は違うんだ。この世界で生まれて、急に成長してしまったが、この体を得てアリスに出会えた。俺の人生はこの世界で全てのはずなんだ、それなのに…隠し事してるから、ごまかすような話し方になってしまうんだよな」


そう切り出して、ルウンは転生前の話を転生後初めて話すことになる。

そして気づいたことがあった


ルウン=ローレン

それは現在の名前


昔 の 名 前 は な ん だ っ た か ?

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