94話
たまに思う存分理性崩壊させて暴れさせたい時がある。
しかし、なかなかいいタイミングがつかめない。
朝になり、ジャックは目を覚ますとすぐにベッドから起き上がって着替えた。
さすがに精神的な関係で離れたくなったからね。
女子に囲まれて寝るのって、他の男子たちにとってはうらやましい状況だろうけど、実際に味わうとかなりつらいぞこれ・・・・。
と、ジャックは朝から精神的疲労を覚えるのであった。
全員起床して、とりあえず持ってきた旅用の乾燥パンを朝食にして、これからの進路を相談しあうことにした。
「まずは、この廃村からどこへ向かうかが問題だよね」
「ずっとここにとどまっているわけにもいかないわよね」
「一応、この家も人の持ち物」
というか、まずここだと情報が集まってくることがないからである。
対魔勇団が撲滅されたら学園長が手紙で知らせてきてくれて、それで戻れるようだけどどのくらいかかるかってこともわからないからね。
当面の旅費は、一旦国から渡された金があり、これから先宿屋に泊まっても国が代わりに建て替えてくれるようだけど・・・。
「そういった経路から俺たちの居場所をその組織が突き止めてしまう可能性があるからな・・・」
権力者たちにすでにまとわりついている可能性があるから、こういった情報系統に関しても慎重にしなかえればいけない。
あちらがこちらの状況を正確につかめて、こちらが情報を得られないってのは結構危険だからね。
「情報が集まりそうなところというと・・・どこかの街か、村ですわね」
「それに加えて、あまり目立たぬように動けるようなところぜよ」
「この村がどこかわかればまだどこの場所に行くか決めやすいんだけどな・・・」
とにもかくにも、まずは適当に棒倒しでもして、その方向へ進むことに決めた。
「とは言っても、聖剣と魔剣で判断したほうが良いかもな」
「私たちでですか?」
「妾たちかのぅ?」
聖剣は人間、魔剣は魔族を探知できる。
どの種族の反応が大きいかによってどれだけの規模の町とかがわかるからね。
また、何かが接近してきてもこの2剣なら早めに気が付ける。またあの・・・・何とかこんとかってやつみたいな暗殺者とかが近づいても素早く気が付けるだろう。
「ペドラですよ」
「そういう名前だったかな?」
「ヒュドラじゃったような」
「それは蛇系モンスターの名前ですわ」
取りあえず、移動中はこの2剣の探知能力に頼ることにして、進路を決めることに。
適当な棒を探すのがこれがなかなか難しい。
「適当にこの家でも解体したほうが良いんじゃないかしら?どうせだれも住んでないし」
「流石にダメでしょ!!」
リンが適当な家をメイスで破壊しようとしたので止めた。メイスで全部壊せるとは思えないけど、日頃のロイスへの攻撃からして不可能とは思えない。
というか、どういうわけかリンはストレスが溜まっているようである。
「あのむかつく男を一日に3回ぐらいは叩いていたからね・・・・叩き足りないのよ」
そういえば、ロイスがいないのである。
大剣の専門家に会いに行って修行してくるとかどうとかで、どこかへ行ってしまったからな。
今頃何をどうしているのや・・・ん?
「蹄の音がするな・・・隠れよう」
パカラッパカラッパと馬がかける音が聞こえたので、ジャックたちは物陰にひそめた。
どうやら、誰かが馬に乗ってきたようである。
見た目的には、どことなく性格が悪そうな40代前半ごろのおっさんか。ヒゲがご立派に生えて、ちょっと小さな町の領主にみえなくもない。
「・・・っち、もう誰もいなくなったのかよ」
不満げに、懐から何やら煙草を出して吸った。
煙草・・・確か貴族用の嗜好品だったな。あまりにも匂いがひどく、体に悪いという研究結果も出ているようだが、一部貴族の間ではリッチな証としてわざと吸っている家もある。
つまり、あの男は何処かの貴族家から使わされてきたそれなりに位のあるおっさんという事か。
「アンバル村、全員夜逃げっと・・・。まったく、ゲッスル様の税収がまた減るとは、嘆かわしいぜ」
ゲッスル?
(確か、辺境の方を治めている貴族よ)
(公爵で珍しく領地を持っている貴族。現当主はマーレイ=ゲッスル)
その名前に聞き覚えがあったのか、リンとカレンが解説してくれた。
ゲッスル家は、王国の公爵家、つまり王族と関わりが深い貴族である。
公爵は普通領地を持たず、首都の方で集まって暮らしており、何も特にせず、税金からの収入で暮らしているらしい。国王からすれば、穀潰しみたいなものだから早めに切り捨てておきたいらしいが、国王と関わりがあるので他の貴族から賄賂を受けていて、中々切り離せないめんどくさい存在らしい。
そんな中で、ゲッスル家は大昔の戦争かなんかで活躍して、恩賞として領地をもらった公爵家としてたそこそこ有名だったらしい。勇敢な武人がかなりいた話もある。
(そう言えば、授業で習っていたっけ)
貴族とかあまり興味がなかったのでジャックは忘れていた。
とにもかくにも、ここがゲッスル家の領内だとすれば、大体首都から馬車で一ヶ月程の位置だと推測できる。恩賞でもらった土地というより、厄介払いのための土地みたいなものだ。当時の国王が、ゲッスル家の力に恐れて飛ばしたみたいな歴史裏話もあるからね。
厄介ものは外、親密なものは中にと昔から行われているそうだ。
しかし・・・この様子だと、昔の勇敢な武人がいた時に比べて、大分ゲッスル家は腐っているみたいである。あのおっさんの様子が物語っているからな。
「これで領村の半数は夜逃げっと。もうあんな肥えてブックブックの領主から抜けよーかな」
人徳のなさがものすごくうかがえる。ゲッスル家の使いみたいなものであのおっさんは来たのだろうが、忠誠心がカケラも見えない。
おそらく、そう遠くない未来にゲッスル家が潰れるだろうと、その場にいた全員がそうおもった。
まあ、とりあえずジャックたちは、おっさんが去った後、その方向とは逆に進路を定めたのであった。
おっさんと同じ方向だと、確実にゲッスル家の屋敷とかに着くだろうからね。
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「まーた村がなーくなったんでふか?」
「ええ、夜逃げですよ」
「なーんででふかねぇ?ちょーっとばかし増税、娘攫いをしーただけでふのに」
「なんでですかね?」
(原因明らかじゃねぇか豚野郎)
ゲッスル家の屋敷にて、この家の現当主マーレイ=ゲッスルに対し、ゲッスル家執事のヤプソンは心の中で悪態を吐く。
前当主、ハルカンドラ=ゲッスルは素晴らしい人物であったとヤプソンは思っていた。
領民と積極的に触れ合い、親しみ溢れていた前当主。しかし、亡き後に当主となったマーレイはとんだ愚息であった。
貴族だから偉いんだよと傲慢にふんぞり返り、屋敷に引きこもり食っちゃ寝食っちゃ寝と怠惰に過ごし、強欲で若い娘をさらわせ、色欲に溺れる。
なんであんな立派な人からこんな肥溜めが生まれたんだろうと、ヤプソンは疑問に思った。
マーレイは一応、正妻の子供だからなれたのだが、どっかの農民あたりにでも生まれていたら確実にこの世にすでにいなかっただろう。
ヤプソンがなぜこんな腐れ野郎に仕えているのか。それは、前当主からできるだけ頼む遺言を残されているからである。
だが、もはや我慢が限界に近い。たった一代で腐敗させたこの野郎をなんとかしてぶっ飛ばしたい。
しかし、相手は一応貴族。重罪にされる可能性があり、なかなか踏ん切りがつかなかった。
王国の城に現状を伝えて、いっそこの家を廃家にして貰おうとも考えたが、それでは前当主が築き上げたものも無駄になる。
何かいいきっかけがない物かと、ヤプソンは頭を悩ませるのであった。
取りあえず、各地を転々と移動することにして廃村から離れたジャックたち。
彼らがたどり着いたのは小さな町だった。
しかし、誰もが暗い表情をしていた・・・・・。
次回に続く!!
・・・町と街ってどう区別つけたらいいんですかね?(情報集まりました。ご協力ありがとうございます!)




